fire-1 ミル夫妻宅怪事件 《第2章-取り調べ》

メイド達への取り調べを警察に行って貰っている間に我々は屋敷を徹底的に調べた。

間取りは屋敷というより、ホテルのようになっている。

1階には自分たちの部屋を置き、食事場などもある。

2階はメイドの部屋と物置、そして1つの客室。そのような質素でありつつも多機能な面はまさにホテルであろう。

そんなこんなしているうちに、警察からの結果が届いた。

守秘義務のため、ここではメイドをa.b.cで組み分けする。

aの部屋には鈍器、ナイフがある。この時点で疑いそうになるが、なんとb.cにも同様にある。

その中で無理やり調べるしかない。

aの鈍器は凹んでいて、ほぼ確定でaは黒、bは何も異常がなく、cはナイフが異常に拭かれている。

a.cと見るのが一般的であるが、ここで問題となるのが各メイドの部屋、玄関から遠い順でa.b.cと並んでいて、仮にa.cだった場合bはなぜ気付かないのかという疑問点がある。

ここで1番大きい説が、abc全員の犯行であるという説。その説がなぜ押せるのか、bは事件当時部屋で書類を書いていたとの供述。 それにもかかわらず叫び声にすら気付かないのはおかしい。a.cの供述は共に寝ていた、とされている。かなりの声量で叫んでいるのでどちらも起きないと言うことはない。何故ならば、この家のメイドはしっかりとした時間に寝れて、どう考えても睡眠不足にはならないからだ。


a.b.c全員共通して私はやってませんの一点張り。これはかなり骨が折れる事件であることがわかった。


困った我々はフールズ本人の友人である、刑事のアーニーさんに話を伺うことになった。

「そもそも、犯人をa.b.cにのみ絞っていることが間違いです。a.b.cの部屋に等しく鈍器、刃物があるので犯人によるカモフラージュである可能性を考慮しましょう。」

確かにそれは正しい。我々は視点が抜け落ちていたのかもしれない。


a.b.c以外に屋敷にいたのは2人、つまりa.b.c.d.eまで視点をひろげられた。

ここで整理すると、

・最有力候補であるメイドたちはa.b.c.d.eまで

・屋敷は相当広く、端にある主人の部屋から玄関に到達するのに数十秒かかる点。

・階段に1番近いのはc.dの部屋で、妻を刺したのはその二人である可能性が高い

・夫は"鈍器"による犯行で生かされている点


現在、夫妻が共同経営していた会社は夫妻の子供である。そのため夫を自分が操作し、夫が子を操作するようにして会社を乗っ取ろうとしていた線が1番ある。

その場合、各メイド全員が貧困から雇われているということで当てはまる。犯人はメイド達の誰かで間違いないだろう。

ここでふと、自分が無視していた可能性を見つけた。それは、"Bの書類"だ。Bの書類を見れば、手がかりが掴めるかもしれない。

その真実は実に不気味なもので、書類と血塗られた手紙だった。

血が滲みインクが掠れているものの、文章が推測できる。

「母へ 私はついに計画を実行できそうです。他の汚い女どもを操って、夫妻を殺させました。養子縁組に申請したので、次に跡取りと関係が深いのは私です。やっと、会社を乗っ取れそうです。」

書類は養子縁組のものだった。


事件は思わぬ形で決着がついた。

母親、a.b.cはもれなく逮捕された。

ただ、我々は重要な答えを見逃しているのかもしれない。


a.b.c以外のd.eは事件当時何をしていたのか、その解くべき謎はまだ解かれていない。


メイドの動機も何も分からずじまい。

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フールズ探偵事件簿 @sazana_mi

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