第43話 愛情
膝から崩れ落ちた僕のことを見たルーナさんは、今までに無いほど声を荒げ、僕の背中に触れながら言った。
「アラン様!!どうかなされたのですか!?」
「いえ……ただ────ルーナさんのことを、僕が十年間も縛ってしまったんだと考えると、悲しくなって……」
もし、僕がその時ルーナさんの気持ちを見抜いて、ルーナさんに何か気の聞いたことを伝えられていれば、ルーナさんは十年もの間僕のことを神として信仰したりせずに、もっと自分のための人生を歩めていたはずだ……それなのに、僕は今まで……
僕がそんな思いを想いのままを伝えると、ルーナさんは僕のことを抱きしめて言った。
「私は、アラン様に縛られてなど居ません!アラン様に救っていただいたのです!!」
僕に、救われた……確かに、ルーンさんからしたらそうなのかもしれない。
「でも……神様でもない僕のことを、十年もの間神様として信仰して、愛しているって……僕は、ルーナさんのことを救ったなんて思ってないんです、ただ自分のしたいことが困っている人を助けるということで、その中でできることをしただけで……そんな僕のことを、ルーナさんは神様として、ずっと……」
「っ……!!」
僕がそう伝えると、ルーナさんは衝撃を受けたような声を上げた。
そして、しばらく間を空けてから言った。
「今のアラン様のお言葉を聞いて、気が付きました……どうやら、私は間違っていたようです」
「……ルーナさん?」
ルーナさんの言葉に困惑していた僕に対して、ルーナさんは言った。
「私は……今まで、信仰と愛情によってアラン様のことを大事に思っているのだと考えていました……私のことを救ってくださったアラン様のことを信仰し、愛しているのだと……ですが、私はきっと────神よりも何よりもお優しいアラン様に、惹かれてしまったのです」
「僕に、惹かれた……?」
「はい……率直にお伝えすると────」
ルーナさんは、僕のことを抱きしめる力を強めてその続きを口にした。
「私は、私のことを助けてくださったアラン様のことを、どのような神よりもお優しき心を持つアラン様のことを────一人の男性として、愛しているのです」
「っ……!?」
ルーナさんが、僕のことを一人の男性として……?
その言葉を聞いた途端、僕は少しの間だけ頭が回らなくなった────ルーナさんが、僕のことを、一人の、男性として……
僕がそのことに対してどんな感情を抱けばいいのかわからないでいると、ルーナさんは、僕のことを抱きしめていた片方の腕を離し、その手を自分の胸に当てて言った。
「やはり、そのようです……私はアラン様のことを、神でもなく王でもなく────一人の男性として、愛しているのです」
そして、再度ルーナさんからそう告げられた瞬間────
「ルーナ、さん」
僕は────さっきまでの悲しい感情や困惑が全て消えて、ルーナさんのことを抱きしめてしまっていた。
「アラン……様?」
……そうだ。
今までずっと、ルーナさんに抱いていた感情────どうして、僕がルーナさんのことを大事に思っているのか。
その答えが……今、ルーナさんに呼応する形で、僕は理解することができた。
「ルーナさん……僕も、ルーナさんのことを一人の女性として愛しています」
ルーナさんと一緒に生活する中で見るルーナさんの楽しそうな顔や、笑顔……そして、ルーナさんの優しさに触れるたびに────いつの間にか、僕はルーナさんのことを愛していたんだ。
「っ……!アラン、様……!」
ルーナさんは、自分の胸に手を当てていた手を自分から話すと、僕のことを抱きしめた。
────それからしばらくの間、僕たちは互いのことを大事に抱きしめ合い、互いの愛情と温かさを感じ合った。
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