第23話 謎

「わたしはこの世界で何をすればいいんだろう?」


口からこぼれた言葉が、寒々とした部屋を吐息と共にのぼって消えていった。

ベッドに横になりながら、ただただ白いだけの天井に答えを探すでもなく、そこに斜めに差し込む朝の光を眺める。


大学から一人暮らしをはじめて5年、見慣れていたはずのこの部屋の景色が変わったのはいつからだっただろう?

はじめはただ昔の自分の記憶をなぞるだけの、そんな夢だったはずだ。

ただ「今」の所在が分からなくなるくらいに「リアル」な夢。

でもある時、この部屋で目覚めた時から、何かが今まで自分の過ごしてきたこの空間の意味を変えてしまったと思う。

それはまるで、さっきまでもう一人の自分がこの部屋に過ごしていたような、そんな違和感。


思い出すまでもない。


それは、わたしが・・・


わたしが思い出を思い出でなくした時からだ。


あの球技大会。文化祭の出し物を決めたHR。

わたしが変えた行動の結果が今のこの部屋だ。


でも、じゃあこの部屋で過ごしていた「わたし」はどこへ行ったんだろう?


数日前見つけた、あの折りたたまれた小さな紙と、胸の痛みがよみがえってくる。


今私が見ている夢はもはやただの思い出じゃない。

わたしの知らない、わたしの今いるこの世界の過去なんだ。

そしてたぶん、その過去の世界でわたしの取った行動がこの世界を作ってる。


会社のデスクマットの間に大切そうに折りたたまれて挟まっていた紙と、そしてその紙を今まで大切に持っていたもう一人のわたし。


わたしはわたしの行動と選択の先に、いったい何を望むんだろう?


そこまで考えると、思考をさえぎるように枕元のアラームが鳴った。

この世界のはじまりの音。

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