第17話 知らない風景
「姫野さん1票!」
不意に自分の名前が呼ばれて、慌てて顔を挙げるとちょうど女子の文化祭実行委員の子が黒板に自分の名前を書いているところだった。
注意深く黒板に書いてある内容を見ると
”演目「竹取物語」 登場人物 かぐや姫 翁 嫗 帝・・・”
と書いてある。
どうやら文化祭の演目やキャストを決めているようだ。
自分の記憶にない風景に戸惑う。
それにしても自分の名前が呼ばれた理由が分からなかった。
戸惑いながら教室を教室を見回していると詩織と目が合った。
ニコニコしながらこちらに親指を立てている姿と、
”かぐや姫”
と書かれた下の何人かの女子の名前の中に、先ほど文化祭実行委員の子が自分の名前を書き加えていたことを思い出してようやく状況が飲み込めた。
また詩織の悪ふざけだ。
口だけで
「やめてよ!」
と言うと詩織は悪びれもせず笑いながら舌を出した。
ただ前に書かれている名前と得票数を見ると、茶道部の部長の女の子にほとんど決まりかけているようでほっと安堵の息をつく。
まったく、詩織はいつもいつも・・・
「姫野さん!」
不意にまた男子の文化祭実行委員の子が自分の名前を呼んだ。
黒板の自分の名前の下に棒が一本書き加えられるのを見て反射的に詩織に顔を向けると詩織も”おぉ”と驚く顔をしながら、その割に嬉しそうにこちらを見ていた。
詩織じゃない、っとすると・・・
改めて教室を見回すとなぜか香月君と目が合った。
それと同時に少し照れたように顔を逸らされてしまう。
視界の端に詩織のニヤニヤとした顔が映ったが、変に緊張して気付かないふりをしてしまった。
これは、わたしの知らない風景だ。
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