第16話 朝の風景

目が、開けられない。


目を開けるのが怖い。


しばらく夢の感覚が身体から流れ出ていくのを待つように、ベッドの上で目を閉じたまま横になっていた。


わたしが目覚めるのは昨日までのわたしの部屋なんだろうか?


そうこうしているうちに枕元に置いているスマートフォンの、いつもと変わらぬの目覚ましアラームの音にハッとして目を開けた。


ここは・・・わたしの部屋だ。一人暮らしのわたしの部屋。

呆然としながら周りをゆっくり見渡してゆく。

本棚の配置も変わってない。

そして卒業アルバムも。


ふと気づいて、そっと卒業アルバムに手を伸ばしかけた時、スヌーズになっていたアラームがまた鳴り出したので、仕方なくベッドから抜け出して朝の準備を始めた。


変わらぬルーティン。


冷蔵庫の中に変わらずある牛乳パックや、朝出すようにと玄関にまとめたごみ袋、息が詰まるような満員電車さえも今日はなぜか自分の居場所が、変わらずにある証明に思えてその一つ一つに安堵してしまった。


「やっぱりただの夢だったんだ・・・」


そう呟きながら自分のデスクに就くとデスクマットの間に見慣れない紙片が挟まっているのに気づいた。


「なにこれ?」


二つに折られているそれを指でつまんで抜き出して広げてみると、そこには一つだけ文字が書かれていた・・・

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