第15話 岐路
「この裏切り者~」
LHR《ロングホームルーム》の終わりを見計らって、詩織がガラガラと椅子を引きずって家路やら部活やらに向かうクラスメイトの間をすりながら抜け恨めしそうに近づいて来た。
多数決の結果は1票の差で演劇に決まっていた。
出し物の決定に時間を取りすぎたうちのクラスは、次回までに演目と必要な班の意見を各自で考えるということでその後すぐに解散となったんだった。
「ごめん!なんかフランクフルト他所の学年でもやるかもって聞いたからつい・・・」
「そうなの!?」
目を丸くしながら詩織は「それは仕方ないかぁ」とわたしの机の横で難しそうな顔をして腕を組みだした。
(まただ・・・また記憶と違う結果になってる・・・)
わたしはそんなことを考えながら身体の動くままに机の横にかけてあるかばんを取り上げ、机の中に入っているものをかばんに移し替えながらぼんやりと考えた。
わたしは過去をやり直しているんだろうか?
だとしたら、さっきのわたしのとった行動はどのように、何につながってゆくんだろう?
前回の球技大会の時には少し部屋の様子が変わっていただけで、勤めている会社も変わっていなかったし、持ち物も特別増えたり減ったりしているわけでもなさそうだった。
でももしわたしのちょっとした行動がこの後の未来を大きく変えてしまったら・・・
ふと怖くなってかばんを持っていた手が止まる。
(最悪私は元居た自分の世界に戻れなくなる?)
「彩どした?」
気が付くと隣で詩織が心配そうに顔をのぞき込んできた。
「ううん、大丈夫!ほら、部活行こ!」
そんなことはあり得ない。だってこれはあくまで夢のはず。
これまでだって朝には普通に起きてきたんだから、部屋の配置が違うのも球技大会の写真が違うのも思い込みかもしれない。
そう自分に言い聞かせながらなおも心配そうにしている詩織と共に教室を後にした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます