第14話 キャスティングボード
「はい、それでは意見の多かったフランクフルトの屋台か演劇で多数決を採りたいと思います!」
ざわめく教室に怒鳴るような文化祭実行委員の男子の声が響く。
もう一人の女子の文化祭実行委員の子に至っては、チョークを片手に「フランクフルト」「演劇」と書いた黒板の前で溜息交じりに立ち尽くしていた。
覚えてる。
これは高校2年の文化祭、クラスの出し物を決める
確かこの時は「部活の先輩がフランクフルトは準備も初期投資も少ないわりに儲かる!」と聞いてきた子達と「どうせほかのクラスもたこ焼きとかやるんだろうから優秀賞狙いで演劇がいい!」という子達でクラスを二分する大騒動になったんだ。
最終的には35名いたクラスメイトによる多数決の1名差でフランクフルトになったはず。
わたしも「儲かったお金でカラオケで派手に打ち上げしたい!」と鼻息を荒くする詩織に引っ張られ、フランクフルトに手を挙げたが、蓋を開けてみると同じ話を聞いたのか、各学年でひとクラスずつフランクフルトの屋台があり、場所取りのくじ引きで1年に負けたわたしたちのクラスのホットプレートは、ろくにHOTになることもなくほとんど“保温”状態のままだった。
当然クラスの打ち上げは教室にお菓子やらジュースを持ち込んだ愚痴大会になり、詩織も気の抜けたコーラーを両手で温めながら珍しく萎れていた。
そんな事を思い出しながらぼんやりしていると、とうとう多数決が始まった。
右斜め前の席の詩織を見ると「フランクフルト」が呼ばれる前からやる気なのが見て取れる。
彼女はやる気だ。
それから窓際にいる香月君を見る。
そういえば彼はどちらに挙げていたのだろう?
そうしている間にも多数決は進んでいく。
そしてわたしは、気付くと彼と同時にそっと手を上に挙げていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます