第12話 変わる空気
カーテンの隙間から差す白い光が眩しい。
顔が少し熱いのが分かる。
こんなにも夢の中にいることをはっきりと自覚したことはなかった。
そしてそのせいでこれまで以上に夢の中での出来事に現実味があって、心臓さえまだドキドキとして苦しい。
ベッドの上に起き上がるとゆっくりと目を閉じて胸に手を当ててみた。
こうしてしばらくじっとしてまたゆっくりと目を開く。
今日は土曜日で会社もない。休みで良かった。
もし今日が出勤日だとして、今から時間に追われて準備をして、満員電車に揺られる気力はとてもなかったと思う。
そろそろベッドから出ようと周囲を見回すと変な感じがした。
「あれ?」
なにとはわからないけれど、なにかが昨日と違う。
言ってみると、まだ子どもの頃、自分が小学校に行っている間に母親が自分の部屋を掃除していた時のような、物がなくなったとかそういうことではなく、微妙に物の配置が違うような・・・
「あ・・・」
部屋の隅にある本棚代わりに使っている3段のカラーボックス、その中に高校の卒業アルバムが入っている。
卒業アルバムは普通の本よりも大きいから目についたけど、よく見ると一緒に入っている本も微妙に昨日までとは違うことに気付いた。
こうしてみると明らかに物が動いているのに不思議と怖いとか、嫌な感じはなく、なんとなく卒業アルバムを手に取ってめくってみる。
校長先生の言葉や校舎の風景。
3年の時の担任の先生たちの顔や、クラスごとの集合写真。
部活毎の写真とかを懐かしく眺めていると一つのページで手が止まった。
自分たちの学年の1年の時からの行事の写真がコラージュのように張られている。そのページの2年の球技大会の優勝クラスが自分のいたクラスになっている・・・
あの時詩織がいた女子バスケが優勝したのは覚えてる。でも自分の参加したバレーは男女ともに予選敗退で、男子サッカーも準優勝だったはずなのに・・・
わたしの記憶違いだろうか?
なんとなくもやもやした気持ちで、写真の中、嬉しそうに優勝トロフィーを友だちと一緒に掲げて笑う香月澄の顔を指先でそっと撫でた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます