第10話 球技大会

「姫野さん?大丈夫?」


呼ばれてハッとする。

目の前には香月君が居て、怪訝そうにわたしの顔をのぞき込んでいた。


これは夢だ。


高校2年の球技大会。

確か午前中の予選が終わって、午後からの上位クラスの試合の応援に、午前中にバレーの予選で敗退していた私はクラスの子達と向かっていたのだと思う。

昔から運動神経抜群だった詩織はクラスのバスケ部との混成チームで無事にバスケの決勝トーナメントに勝ち残っており、応援のためにちょうど体育館に向かってる途中、香月君をはじめとしたクラスの男子達と合流したんだった。

その時彼に何か話しかけられて・・・


「気分悪い?保健室行く?」


ああ、そうだ


「ううん、ごめん。大丈夫!ちょっとぼーっとしちゃって」


今は彼に一緒に応援に行こうと誘われた場面だったんだ。


まだ少し心配そうな彼にとにかく笑顔を見せて、先を行くクラスメイト達に追いつくために歩き始めた。

なんだろう。これは夢だとわかっているのに、わたしも本当はもう社会人にもなってるのに、どうしても彼を前にするとドキドキして顔が火照るのが分かる。

今も体育館に続く短い渡り廊下を彼と並んで歩くことに、こんなにも動揺して、顔もまともに見れない。


わたしは本当に社会人なんかになったんだろうか?

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