第9話 日常の中で

今日も一日中思考がまとまらなかった。


会社の朝礼の間、自分のデスクでメールチェックや、手元に回ってくる書類を読んでいる時もちっとも内容が頭に入ってこない。

なにが書いているかは分かるのに内容が理解できず、それはお昼休憩や少し席を離れて、気分転換にコーヒーを淹れに立った時ですらそんな感じで、まるで一日中首都高の真ん中で英和辞典を渡されてハリーポッターの原文を読まされているようだった。自分がなんとなくどこの部分を読んでいて、見慣れた単語から何とか意味をつなぐことができる、そんなような。


どうにか一日を終え家に帰りつくと身体はぐったりと疲れ、それ以上に頭がゼンマイの切れかけたオルゴールのように鈍くなってしまっていた。

肩にかけていたカバンを床に放り投げて頭からベッドに倒れこむ。


わたしは今本当に起きているんだろうか?


今朝は見た夢があまりにもリアルで戸惑っていたが、こうして日常の中にもまれていると何度も今の自分こそ高校生の自身が見ている夢なのかもしれないと思えてきて、ぞっとさせられた。


それにしてもなぜあの頃の夢なのか?

夢なら何か、あの夢の中で今の自分が考えて行動することで昔と違った場面が見えるのだろうか?


考えはまとまらないまま、目を閉じるとずるずると沈み込むように夢へと落ちていった。

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