第8話 リアリティ

はっとして目を覚ますと、もう外は白み始めていた。


午前6時20分。


今のは何だったんだろう?


まだ動悸が収まらない。


もう何年も経っているのに、ましてただの思い出を夢に見たくらいでなんでわたしはこんなに動揺しているんだろう?


夢?


少しじめっとした梅雨の空気に、美術室の絵具とキャンバスの木の匂い。

紙の上を滑る鉛筆の乾いた音と感触。


あれが夢?


まるで自分の魂だけがあの頃の自分に宿ったかのような、そこには恐ろしいほどのリアリティがあった。


「わたし疲れてるのかな・・・」


ベッドの上、右腕で目を覆いため息をついた。


「なんで今になってあの頃の夢ばかり見てるんだろう・・・」


ついさっきまで見ていた夢の感触がまだ、胸の中で疼いていた。

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