第2話 香月澄

香月澄は高校2年の時の同級生で、サッカー部の彼は、誰とでも気さくに話が出来、柔らかそうなふんわりとしたくせ毛が、優しげな二重の目とあわせて物腰の柔らかな彼の人柄を引き立てていた。

休憩時間の度に部活仲間だけでなく、友だちや女子にまで話掛けられてる姿は、美術部で休憩時間は詩織をはじめ友だちに話掛けられなければいつまでも本を読んだりしてる私とは対極的だと、いつも遠目に見ながら思っていた。


そんな彼は高校2年の9月、大病を患っていたとかで文化祭の翌日から入院、そこから1か月くらいして退院、そしてまた検査入院と、あまり姿を見ることもなく結局クラスが分かれた3年以降、会うこともなくお互い高校を卒業した。


その後一度だけ、成人式の後、会場の外の広場で高校時代の旧友に囲まれてる彼の姿を見たのを覚えてる。

その時も少し痩せたのかとは思ったが、その笑顔や笑い声は変わらず、元気になったんだ、良かったと思うくらいだった。


それなのに、なんであの時あんなに動揺したんだろう。

私は詩織との電話を切った後、自分のデスクに戻っても単純な書類仕事にすら頭が回らず、一人暮らしの部屋に帰ってきていた。

スーツのままベッドに倒れこみ、そのままゴロンと仰向けになると腕で目を覆った。

なにか、自分の中の一つの‘‘’未来’’みたいなものがなくなってしまったような、そんな感覚がしたんだ。


それから2年、もう忘れたと思っていたのに。こうして、こんな形でまた彼の事を思い出すとは考えてもみなかった。

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