#Another side 漂着
少し遡り、四月頭の事。
六専特区近くの海域で、二隻の船による抗争が起こった。
1つは“スキルホルダー解放戦線”、リーダーと数名の構成員が乗船していた。
もう1つは、“プラスエス”という過去に存在した、違法な人体実験を行っていた第六感症候群先進研究機関の残党。
彼らが争う理由はその組織の在り様もさることながら、今回は別にあるモノが絡んでいた。
それは、“天の結晶”と呼ばれる物体。
天の光現象によって降り注いだ光の雨と同質の物とされているエネルギーの集積した小さな結晶体だ。
白い靄に包まれていて、空間のある一点に、宙に浮くように存在している不思議な物体。
ある仮説によると、世界を漂っている天の光現象のエネルギーが一定の基準値以上その場に停滞すると、物体となって現れるのだとされている。
しかし、どの国のどんな機関も、その実態をまだ殆ど掴んでいない。
勿論、その存在自体一般に公けにはされてはいない。それを知るのは一握りの組織だけだろう。
例えば
スキルホルダー解放戦線側は、組織のナンバーツーがその情報を掴み、リーダーへと伝えた。
リーダーはその進言の元、スキルホルダーを中心とした構成員を集めて、自身が先導して船に乗り、天の結晶の回収に向かった。
プラスエス残党側は、どういった経緯でその場に現れたのか不明である。
そして、天の結晶を巡って、2つの組織は争った。
結果として、互いに被害を追って痛み分けという形となった。
解放戦線側の船は離島である六専特区に漂着し、リーダーと乗組員二名のみが生存し、上陸した。
プラスエス側は相手が本物のスキルホルダーだったという元々の戦力差も有り、生存は絶望的だっただろう。
解放戦線の生存者三名は特区に潜伏し、使われていない貸倉庫の1つを隠れ家とした。
特区の中には解放戦線の内通者が居る。コンタクトさえ取れれば、何とかなるだろうと考えての一先ずの対応策だった。
二名の構成員は多少の怪我は有れど五体満足で行動に支障は無かったが、しかしリーダーは抗争によるダメージによって気を失ったまま、しばらく目を覚まさなかった。
構成員はそんなリーダーを倉庫に寝かせたまま、食料の調達に出掛けた。
しかし、帰って来るとリーダーの姿は忽然と消えてしまっていた。
誰かが倉庫内に侵入した形跡も、ましてや誰かと争ったような形跡も無い。
まるで、リーダーが目を覚ましてひとりでにどこかへと行ってしまった様な状態だった。
しかし、行方を眩ませたリーダーを探そうにも、構成員たちは土地勘が無い上に、派手に動くと目について外部の人間だとバレてしまう。
よって、彼らは当初の予定通り、やはりひとまず特区内の内通者を当たった――。
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