#Another side コードネーム:ボス

「いやあ、しかし……火室桐裕かむろ きりゅう君、かあ……」


 桐裕を送り出した後、ボスはS⁶シックス本部の自室へと戻って来た。

 S⁶シックス本部は何の変哲もないオフィスビルだ。存在を秘匿する為一般的な会社に偽装されているので、部屋の表札には“社長室”と記されている。


 ボスは自室に戻るなり、棚から一冊の資料ファイルを手に取った。

 開いて、そこからあるページを見つけて手を止める。


「八年前、火室かむろ家で起こった火災。正確な出火元は不明。両親と二人の子が被害に遭ったが、内一名のみ奇跡的に生存を確認。名前を、火室桐裕君――」


 ページを捲る。


「火室桐裕、当時八歳。自宅で両親と妹が絶命する中、唯一火の海の中立ち尽くしていた所を発見。第六感症候群を発症している事を確認。S⁶シックスが保護し、第六感症候群患者専用特別保護区域に送られる。

 また、焼死した父親は第六感症候群先進研究機関“プラスエス”の職員であった事も確認されている。なお、事件との関連性は不明。担当エージェントは――」

 

 ぱたん、とファイルを閉じる。

 その表紙には、“超能力事件資料”とあった。


「全く、因果な物だねえ。また会う事になるとは」


 ボスは自嘲気味に微笑む。

 

 ――“担当エージェント、コードネーム:ボス”。

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