焔の印 ―4―
薔薇のように花ひらく焔が、国綱を襲う寸前の
「何度も連発はできない。次はないぞ」
「あぁ……けど、問題は――」
国綱の悪い予感は的中した。旭の使う焔の魔法の中でも一番の火力を誇る『
焼け焦げた身体は徐々に再生し、より強靭な肉体へと変質していく。赤褐色の身体はより赤黒い色に変わる。自身の傷の具合を確認した
「あいつをやるにはまだ火力が足りない」
「けど焔はまだ制御しきれないんだろう?」
「あぁ、だから……」
「僕が時間を稼ぐ。それでいいな」
「あ、待て馬鹿野郎!」
旭の言うこともろくに聴いていない国綱は
刀を振り抜き、聞こえてきたのは空を切る音。微かな手応えすら感じられない。
強靭さと鋭利さを兼ね備えた極東の刀。かつては、試し斬りにより、7人の罪人の胴を斬ったという逸話を持つ刀もあったと言う。『剣』や『ナイフ』とは比べ物にならない切れ味を持つ刀。
だが――
(斬れて……ない)
再生によってより強くなって生えてきた肥大化した左脚は国綱の刀をまるで通さない。薄皮一枚を切り裂き、その強靭な肉体に、国綱の一撃は通らなかった。
「くそっ! 手間かけさせやがって!」
あまりの衝撃に回避を忘れた国綱に、
「”
鈍い轟音が響き渡り、
ゆらゆらと揺れ、まるで夏に見る幻覚のように
「ただえさえ思うように魔法が使えねぇってのに、慣れねぇことさせるんじゃねぇよ! せめて右脚狙え!」
「仕方ないだろ! あんな巨体相手に誰が上手く立ち回れるって言うんだよ!」
ところ構わず、国綱と旭は言い合いを始める。目の前の相手が見えていないかのように大声で捲し立て、罵詈雑言が飛び交う。緊張さの欠けらもない戦場だ。
「だいたいお前が勝手に突っ込んだのが悪い!」
「あれ相手に策なんか通用するか! お前の一撃に賭けるしかないんだよ! 分かったら早く掴め!」
「俺が一番困惑してんだ無茶言うな!」
戦場で悠長にも口論を繰り広げる2人目掛けて
「国綱! 避けて!」
ヴェローニカが反対側でそう叫ぶ。だが2人は言い争いをやめる様子もなく、
「邪魔だ!」
「退け!」
言い争いによって、2人のボルテージは上がっている。
「”
旭の焔が
(刀は斬るだけの武器じゃない!)
その武器による攻撃は効かないと理解していた
「
国綱の刀による刺突が
「まだだ! そいつは立ってくるぞ!」
(分かっている! もう油断はしない!)
倒れ込む
だが、悪夢は今だ醒めず――
「……なぁ、今何回斬ったと思う?」
「知るか。でも、これが現実だろ」
国綱の連撃によって刻まれた傷は治りきらず、
「オレハ……『
「オーケー、『
その日、2人は互いに互いを認め合う。目の前の相手は、獲物ではなく、敵などでもない、宿敵なのだと。
「でも、お前の相手はまだ俺じゃない」
そして、
「5分で慣れてみせる。それまで頼む」
「へぇ、5分ね……」
国綱は二刀の刃を両手に持ち、
「関係ないね。5分も待たずに終わらせてやるよ」
300リミット。たったそれだけの時間に凝縮された激闘が今始まる。
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