閑話 私の親友

 モニカ・エストレイラは魔法バカだ。それは、モニカの知り合いなら誰もが知っていることだった。家族の次にモニカを知り尽くしているパーシーはこう語る。



「私の友達は、バカなんです。ほんとに。子どもみたいに真っ直ぐな目で前ばっかり見て、魔法使えないって、その子も分かってるはずなのに」



 しかし、その言葉に侮蔑の感情は含まれていない。自慢するように、パーシーは続ける。



「でも、あの子なりに信じてるんです。奇跡ってやつを。だから、誰も見ていなくても、ずっと努力するし、ずっと笑顔でいる。そんな親友を、私は心から尊敬してるんです」



 真っ直ぐ見つめる。迷いも曇りもない瞳で、パーシーはこうも言う。



「それに、あの子の努力は報われていないわけじゃない。ちゃんとあの子の力になってます。多分、知識だけなら、誰にも負けてませんよ」



 その言葉に、一切の嘘はなかった。パーシーは心の底からモニカを尊敬していたし、1人の人間としてモニカに憧れていた。そんなモニカに、ようやく報われる機会が訪れたのだ。親友として、これが嬉しくないわけがない。

 来る日も来る日も、魔法が使えないモニカは、繰り返し魔法書を読み漁っていた。家にある魔法書をすべて読み終えたら、次にはパーシーの家に入り浸り魔法書を読み尽くす。それが終わったらついには魔法書店に向かい本を買いまくる。そしてまた本の虫となる。魔法の探求。常人には理解できない、底知れない魔法への熱い。魔法書を読み、実践し、失敗。そしてまた魔法書を読む。そんな日々を送っていた。このようなことをしていたモニカの頭の中には、無数の知識が詰まっている。



「それでは、これで面接は終わりです」


「ありがとうございました」



 席を立ち、丁寧に礼をして、モニカは応接室を後にする。「あなたの友人について教えてください」なんて質問は予想していなかったパーシーだったが、その手の質問なら難しくなかった。なんなら、もっとモニカについて教えてやりたいくらいだ。



(さて、筆記は大丈夫だろうけど……モニカは上手くやってるかな)



 この時、モニカが「災い」に起きて大変な目にあっていることを、パーシーはまだ知らない。

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