第40話「密会」
「協力とは?」
「私がちょっと騒ぎを起こすして注目を集めるから、その間に忍びこめるかなって」
「……どうする?」
「まぁ、うちはどっちでもいいっすよ」
「ユースさんお願いします」
「ええ。じゃ、ドア付近まで行ってくれる?」
リィドとセツナはドアに接近し待機する。
「うわ、なんだ!」
小規模だが、爆発音が聞こえた。
出火などは見られないが、店内はパニックになる。
二人はこっそりとドアを開けて侵入する。
食材の保管部屋のようだ。
棚が多数あり、箱などが置いてある。
そして、さらにドアがあり奥に入ると今度は酒の保存部屋だった。
「……この先は下水か?」
同様にドアがあり、そこを開けると部屋ではなく、下へと降りるいための階段があった。
「みたいっすね」
部屋に隠れる場所はない。つまり、怪しい男はこの先に行ったに違いない。
「セツナ、頼む」
「りょっす」
戦闘態勢に入る。セツナが前衛、リィドが後衛だ。
「一応確認すけど、なるべく確保でいいんすよね」
「ああ」
相対するかもしれないのは不審者であって犯罪者かどうかは不明だ。
なら、なるべく殺さない方が良い。
「!」
しばらく、道なりに進むとセツナが立ち止まる。
セツナは指を四本出す。
つまりはこの先に四人いる。
「おい、不良品掴ませるとはどういうことだ」
「……その可能性もあるから格安で売ってるんだが?」
「だが、目的は果たしんだろ?」
「なんとかな。この詐欺師のせいで失敗しそうになったたがな」
「じゃ、こうしよう。次は少し安くするってのはどうだい?」
盗み聞きした限り、違法な魔術具の取引だろう。
セツナとリィドは合図と同時に飛び出した。
「な」
「しゅ、襲撃だ」
リィド達が追っていた男ともう一人はリィド達に対し背を向けていた。
セツナのワイヤーで一人を拘束する。
リィドは矢を脚にめげて撃ち、命中する。
態勢を崩したところに後頭部に蹴りを入れ無力化する。
そのまま、リィドは飛び出して剣を構えた男に斬りかかる。
セツナは倒れた男を同様にワイヤーで拘束する。
「させないっすよ」
セツナは短剣をフリーの男に投げる。
男はどうやら魔術師のようだった。
「アブね」
男はなんとか短剣を避ける。
セツナはリィド達をすり抜け魔術師との距離を詰める。
「……」
「……」
リィドは一定距離を保ち男の攻撃を誘う。
リィドは男をあの魔術師の護衛役だと判断した。
男が魔術師を庇うように前に出て剣を構えたからだ。
リィドは素直に斬りかかる。
男はそれに合わせて剣を受け止め弾き返す。
「うっと」
リィドは弾き返されバランスを崩す。
男はリィドに斬りかかる。
リィドは倒れそうになり凶刃を防ぐ手段がない。
「なっ!」
男は剣を降り下ろした瞬間視界が歪んだ。
リィドを斬った際に出た血がかかったわけではない。
そもそも、まだ斬っていない。
「っつ!」
リィドはバランス崩したのではなく、崩したように見せただけだ。
本当の狙いは下水だ。
チャンスと判断し接近した男に横を流れる下水を足で蹴り顔にかけたのだ。
水が目に入り男は顔を抑える。
リィドは男の腕を斬りつける。
あくまで、無力化が目的なので斬り落としたりはしない。
男は剣を落とす。
その流れで足を斬りつけ、首を狙い気絶させる。
リィドは男から装備を剥ぎ取ってから鞄から出したワイヤーで拘束する。
「君たち役人?」
「そういうあんた達こそ何者っすか?」
「金なら持ってないよ」
「っと」
セツナは再び短剣を投げようとして止める。
魔術師が防御魔術を発動したからだ。
魔術による壁が展開され短剣ごときでは弾かれ傷一つつけれないだろう。
「時間稼ぎっすか?残念ながらお仲間はうちの仲間に捉えられてるころっすよ」
「うーん。別にあいつらは仲間じゃないね」
セツナは周囲にワイヤーを張り巡らせる。
「無駄だと思うよ。そんな罠」
「でも壁解いた瞬間効くっすよ?」
防御魔術とは自身の周囲に壁を作り身を守る魔術である。
周囲を覆っているため攻撃を防げる半面、自身も攻撃できないのが一般的だ。
「残念。僕は低能な魔術師とは違うんだよ」
「そっすか」
セツナ自身もひっそりと魔術でも攻撃できるように準備をする。
「こんな感じでね」
「なっ」
セツナはぎりぎり避けた。
セツナの立っていた場所に火柱が上がった。
「ちなみに僕は魔力の量には自身があるからまだまだ撃てるけど?」
魔術師はセツナに撤退を提案した。
「その魔術どこで教わったんすか?」
「君が知ってどうするんだい?」
「そっすね……」
「う、うわ何だ?」
突如水蒸気が周囲を覆いつくし、視界が悪くなる。
「視界の悪い時には壁を解いて、移動するべき。ただの的になるっす」
セツナはつぶやく。男には聞こえない。
「ごほ、ぐ……」
周囲に壁を張るといっても弱点も、限度もある。
光、音、空気を遮断はしない。普通の人間ならば、空気がなければ死ぬ。
なので、空気自体は遮断しないのが普通だ。
セツナと会話できる時点でそこは明白であった。
セツナは魔術で水蒸気を発生させそこに神経毒を混ぜた。
殺傷能力はなく、体が数時間痺れる程度のものである。
「ひ、ひきょ、う」
防御魔術が解け無防備になった男をワイヤーで拘束する。
「その魔術誰に教わったっすか?その術式は特殊で自己流じゃ無理なはずっす」
淡々と告げる。ワイヤーがどんどんと首絞める。
「せ、先生だ」
「特徴は?」
「さ、三十代くらいの男で、名前はレヴァイダ」
男は助かりたいがためにせっせと喋る。
「そ、そうだ。今先生は優秀な護衛を探してた。君が望むならぼ、僕が紹介しても」
「セツナそっちはどうだ?」
水蒸気が晴れ リィドがやってきた。
「あ、先輩」
「い……」
男を気絶させる。
「殺ってないよな?」
「はいっす。麻痺させて気絶させたっす。麻痺も数時間あれば消えるやつっす」
「そうか。ひとまず運ぶかー」
リィドは魔術師の男を運ぶ。
「これどうするっすか?」
気絶した男四人。一人ならともかく、さすがに二人で一度に四人を運ぶことはできない。
「リィド君、セツナさん無事?」
二人を呼ぶ声が聞こえる。
「ユースさん」
「な、お前ら何で。だ、誰だ」
やってきたのはユース一人ではなく見知らぬ男も一緒だ。
「これが証拠ですよ?」
よく見ると、男は手を後ろで縛られていた。
「こ、こんな勝手なことしてただで済むと思うなよ」
男は脅迫してみせるが、ユースには無意味なようだ。
「この四人を知らないふり、もしくは勝手に店に侵入したととぼけるべきでしたよ」
「んだと」
「店主さん、私はユースです。ギルドの依頼で動いてます。この意味、この国に住んでるならわかりますよね?」
「ゆ、ユースってまさかあの……」
男は途端に顔が青ざめ反抗的な態度が消えた。
「二人に協力してもらったのは正解でした。ここで相談ですが、店主人を探してるんですが、素直に情報提供してくれれば、多少口利きしてあげてもいいですよ?」
「ほ、本当か?」
勝手に約束していいのだろうか。リィドは思ったがせっかくのチャンスなので追っている五人について聞いてみた。
「そいつらなら一週間前にうちに来た」
「な」
「本当っすか?」
「ああ。あんたらを騙すメリットは俺にはない」
信じる信じないかは別として、続きを聞く。
「ここから東にある遺跡に行くとか言ってた」
「一応店主、この五人は指名手配されてるらしいんだけど?」
「し、知らなかた。俺はあくまで客として見ただけで、こいつらが手配されてるのを知ってたら素直に通報してたさ」
ユースは嘘だと思いつつも、ここで嘘か本当か詰めても意味がないので切り替える。
「二人はどうします?一応もう通報済みだから残らなくても大丈夫ですけど」
「それなら、俺たちは行きます」
「そうっすね。遺跡にいるうちに捕まえたいっすからね」
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