第34話「誘拐の噂」
エリルとリィドは自宅に戻ることにした。
「ちょっといいですか?」
「はい?」
「なんだ?」
振り返ると、警備局の人間が立っていた。
「っ。エリル元局長でしたか。すみません」
「構わない。職務なのだからな。それに私はもう辞した身だ」
「えっと局員さん、俺たちは怪しいものじゃないですよ」
「はい、すみません気づかなくて」
「それより、声かけをしてるということは何かあったのか?」
「まだ、うちのとこではないのですけどね……」
局員は懸念事項を話しだした。
「最近、王都や、国内の地方で子供の失踪事件が増えてきましてね。なんで声かけや、注意を呼びかけているところです」
「誘拐ですか?」
「恐らくは。証拠や目撃証言がないため、失踪扱いになっていますが迷子や魔獣に襲われたでは少し数が多いようで」
「……」
「……」
リィドとエリルは共通の原因に行きつく。
可能性がある連中を知っている。
あの遺跡で見た子供たち。
悪魔が実行犯ならば、捜査が難航して当然だ。
「誘拐だとしたら、悪魔が協力している可能性がある」
「エリル元……さん、心当たりあるんですか?」
「同一犯か分からないが、子供に非人道な行為をしている者たちに遭遇したことがある」
エリルはかいつまんで説明した。
「……なるほど、ご協力ありがとうございます。すぐに情報を共有し、警戒します」
警備局員は去っていった。
「エリル気分を害するかもしれないがいいか?」
「ああ」
「仮に失踪が例の魔術師達の仕業だったとする。依頼が出たとしても引き受けるつもりない。必要に迫られない限り関与しない。って言ったらどうする?」
「……今はミケがいる。ミケ一人に頼るのは不甲斐ないがどうだ?」
「悪魔があの一体なら可能性はあるかもしれない。子供を使った大規模な実験だ。他に仲間……協力者がいてもおかしくない」
「……あのレベルの悪魔が複数か……確かに無謀かもしれん」
エリルは拳を握りしめる。
「情けないな。守るべき子供を助けられないとは」
「納得してくれるか?」
「……ああ」
提案したのはリィドだが、エリルの返答には驚いた。
もう少し説得が必要かと思っていた。
「私だって無茶と無謀の違いくらいは理解しているつもりだ」
「そうか。ならよかった。エリルにもしものことがあるのは嫌だからな」
「な、そ、そうか」
エリルは頬を赤らめる。
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