第27話「捜索」

 リィド達は転移門を利用し、テイキド国に移動し、国境を抜け、元アイフォード王国の目的地に向かった。


「あの悪魔に騙されたんじゃないっすかね?」

「渓谷の中に作られているんじゃないか?」


 教えられた場所は建築物のない渓谷地帯。そして、昔は観光として訪れる人気のスポットであるサレザンの滝がある。

 一旦それぞれ手分けして痕跡を探すことにした。

 リィドはすぐさまに痕跡を見つけ、皆がリィドの元へ集まる。


「すぐ見つかったっすね」

「名前だけは聞いたことある滝だからな。とりあえず、近づいてみたら運よくな」


 滝の裏側に空間があり、洞窟となっていた。

 しかし、隙間の空間があるだけで入口などどこにもない。


「ほれ、こっちにこんか」


 ミケが手招きする。ただの土壁の方に。


「なるほどっすね」

「誰か説明してもらえるか?」


 セツナは理解したようだが、エリルまだ把握できていないようだ。


「簡易的な転移魔術がしこまれてるんだろそこに」


 リィドが説明する。


「なるほど。ずいぶん見られたくない場所なのだな」


 ミケが指を弾くと魔術式が起動し、四人はどこかの建物内に移動した。


「俺とミケが先頭、セツナとエリルは後方を頼んだ」


 珍しい陣形だ。


「これは人間の建てた物で、人間が誰もいなくなったから悪魔が使ってるんだろう。ここまで隠ぺいされた施設ならよそ者を排除してもおかしないだろう?」


 つまり、迎撃用の罠がしかけれている可能性がある。罠の探知はリィドの方が経験豊富である。

 何もないただの通路を進む。しばらくすると、三つに道が分かれている。


「こっちだな」 


 ミケは右の通路を選択する。


「まだまだ先じゃが、こっちから悪魔の気配がする」


 男の情報が正しかったのだ。


「待て」 


 リィドはミケに警告する。


「恐らくここから罠のオンパレードだ」

「ほう、根拠は?」

「そこの壁に壊れているが魔術式の残骸があるだろ」

「あるな」

「あれはたぶ身分の認証だろう。あれを使わないと罠が発動すると思う」

「なるほど。確かにそうじゃろな」


 リィドは鞄から矢を取りだし通路の目掛けて撃つ。


『バチバチ』


 通路の壁から突如雷が発生し、矢は床に落ちる。


「壁に魔術式が組まれてるぽいっすね」

「エリル、片側の破壊頼めるか?」

「分かった」


 リィドは再度矢を撃つ。今度は魔術式は起動しない。


「恐らくだが、拘束目的の罠だろうな」


 再度発動までに時間がある。エリルの攻撃で壁の一部が砕けた。

 リィドは再度矢を撃つ。同じく魔術式は起動しない。

 通路事に別の罠が設置されており、それを攻略してを繰り返し目的の部屋に着いた。


「あの部屋だな?」

「ああ。安心せい吾が最初に入ってやる」


 ミケはドアを開け部屋に入る。


「なんだお前?」


 中には初めて見る悪魔がいた。この間の悪魔の仲間だろか。しかし、部屋にフェイシスはいない。


「後ろのは人間か?」

「吾の贄じゃ。手出すなよ」

「お、おう。で、何の用だ?」


 ミケが悪魔であることで、仲間の悪魔であると認識させることができたらしい。


「ようやく得物を捕まえたと聞いてな、ならば鑑賞せねばとな来て見たらいいが、どこにもおらんのでな。どこにおるんじゃ?」

「間抜けだな。入れ違ったな。ゲルセイ様は例の精霊王の棲家に行ったぞ」

「ほう」


 具体的な場所を聞こうとした瞬間目の前の悪魔が燃えた。


「ぐぐぐぐが。なんだお前、くそ、ぎゃー」

「何が起きた」

「セツナ、魔術でどうにかできないのか?」


 エリルは消火を試みるも物理的な炎ではないため解決不可だった。


「恐らくじゃが、こいつは手下の悪魔だったのじゃろう。なんで裏切った時に始末するように仕組まれていた」


 悪魔が勝手に仲間と誤解して話したが、実際は敵に情報を提供し裏切りとみなされた。

 悪魔は跡形もなく消えた

「ミケ、精霊王の居場所は知っているか?」

「すまんな、知らん。相手が精霊だとちと伝もないな」

「……」


 振り出しに戻った。


「リィド、一度戻ろう。収穫はあったのだから、こういう時は焦るとよくない」

「……そうだな。すまない、エリル」


 精霊王の居所。確かに悪魔を探すより情報は集まりそうだ。

 リィド達は一度家に戻ることにした。

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