第15話「夜這いはご勘弁」

 翌日、セツナとエリルの検査結果が出た。無事問題ないとのことだった。四人は急いで街に帰りギルドに報告した。 


「……盗賊王ゼロに憧れた自称遺跡ハンター?」

「そ、そいつはそう言ってました」

「…………該当は一切ない。今までバレずにいたか、成功したことがないか。恐らく後者でしょうけど、はぁ……」

「ティタ姉?」

「あ、失礼しました」

「盗賊王知ってるんですか?」

「名前だけは……私がギルドに所属した頃には既に行方知らずの状態で死亡説が出てたわ」

「そ、そうですよね」

「で、問題が盗賊王に憧れた輩が遺跡を荒らす、名前を騙る輩が出るは大変だったのよ」

「あーお疲れ様です」

「ごほん、それにしてもお疲れ様です。ゆっくり休んでください」


 リィド達はようやく家に辿り着き一息できた。

 その日の夜、違和感で目が覚めた。正確には目が覚めた。そして何か違和感を感じる。


「な、な何してるんですか!」


 夜襲やあの悪魔が口封じに強襲してきたのかと最大限に警戒した刹那、リィドの思考が限界量を超した。


「あまり騒ぐと誰かきちゃうっすよ?」


 セツナだ。自分のベッドにセツナが侵入していたのだ。

 部屋には鍵をかけていないので当然入ることは簡単だ。


「何してるんだよ」


 声を落として真意を訪ねる。

 寝ぼけたフェイシスではないのだ。目的があって来たに決まっている。


「ふふ、せっかくサービスしに来てあげたのにその態度は酷いじゃないっすかー」

「あのな」 


 しかし、リィドにさらに悲運が襲いかかる。ドアがノックされた。


「リィド入っていいか?」 


 突如エリルが訪ねてきた。


「隠れって……いいぞ」


 確実に誤解される。セツナに隠れるよう言おうとしたが、既にセツナの姿はなかった。


「夜にすまない」

「大丈夫だがどうしたんだ?」

「すまなかった」

「?」

「正直私は足手まといだった。リィドとフェイシスならば逃げることだってできただろう」

「あのな、知らない奴だったら置いて逃げるさ。でもな、さすがに仲間は見捨てないぞ」


 リィドは卑怯だが、卑劣ではない。


「ギルドメンバーとはそういうものなのか?」

「それは人によるだろうな。少なくとも俺は嫌だ」

「そうか……すまなかった。これからも精進を欠かさないことを誓おう」

「ほ、ほどほどにな」


 真面目が過ぎるのを知っている。


 エリルは去っていった。


「エリちゃんらしいっすね」

「……で。そっちは結局何の用だ」


 隠れていたセツナが現れた。


「だから言ったじゃないっすかサービスですって。これだから先輩は鈍いんすよ」

「に、鈍くて悪かったな」

「……うちは結構良いチームだと思ってますよ」

「……」

「邪魔者はそろそろ退散するっす。夜更かしは美容の敵っすしねー」

「?」


 帰ってくれるのはありがたいが、最初の言葉の意味が解らなかった。

 そして、即理解できた。


「フェイシスさん、こっち部屋じゃないです!」


 寝ぼけたフェイシスが部屋に乱入してきた。

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