第6話「王都へ」
「大きいねー」
「そうだな街の十倍くらいの大きさはあるからな」
リィド達はシェラザード王国の王都ルテアリアに来ていた。
目的は王都の病院でフェイシスを診てもらうこと。
リィドは王都に何度か訪れたことがある。しかし、フェイシスは初めてのようで、物珍しさに目を輝かせている。
宿に荷物をおいて即病院に向かった。
「予約はありますか?」
「えっとこちらを」
リィドはもらった紹介状を受付に渡す。
「かしこまりました。しばらくホールでお待ちください」
しばらくして、呼ばれたので診察室に向かう。
「君がフェイシスさんだね」
「そうです」
「えっと君は?」
「リィドです」
「リィドさんね。これから診察するけど、聞いてはいると思うけど大体一日かかります」
「分りました。フェイシス後で迎えに来るから」
「うん」
精密検査なのでかなりの時間がかかることを聞いていたので、リィドは計画を立てていた。
武器の調達だ。リィドの武器は自分自身で作れば事足りるし、矢は街でも簡単に調達できる。フェイシスは近接で剣だけでは心もとない時がある。普段素手で戦うので、手袋のような武器があれば買おうと思っていた。
「困ったなー」
なにやら女性の助けを求める声が聞こえた。リィドは紳士なのでもちろん助けるために声かける。
「どうしたんですか?」
「いえ、困ったってあ」
「げぇ」
「げぇって何っすか。こんなかわいこちゃんに声かけてときながら、その反応は酷くないっすか?」
声の主はセツナだった。
「いや、何でここに?」
「それはこっちのセリフっす。まさか、王都にナンパしに?」
「あのな」
フェイシスのために来たことを伝えた。
「なるほど。で、空いた時間にナンパっすか」
「違うっての」
あわよくばはもちろんあったが相手がセツナなので全力で否定する。
「でどうしたんだ?」
「宿泊していた宿で客同士トラブル起きたみたいで。偶然うちの部屋が隣で巻き込まれたみたいで」
「お気の毒にな」
「冷たっ!なんで女性に声かけるのにうちにはそんなに冷たいんすか!」
「女性っていうか……」
「先輩、それ以上は死ですが?」
「ご、ごめんなさい」
セツナの胸部に視線が移ったが本気の殺気により慌てて戻す。
「年下、後輩ポジションはその気になれないだけだ」
「ちぇ、だったらちょっと冷たい女上官キャラで行ってればうちもチャンスあったってことっすか?」
「だから、態度だけじゃないしな」
再び視線が。
「即効性と遅行性どちらの毒がいいっすかね?」
「すみません」
「じゃ、フェイちゃんはどうなんすか?」
「フェイシスは違うだろ」
癒し枠だ。穢れのないままでいてほしい。
「確かにそれはわかるっす」
「で、何で着いてきてるんだ?」
「え?だって今日は泊めてくれるんすよね?」
「……は?」
「あ、ちゃんとお金なら出しますんで」
「……今日だけだぞ」
「さすが先輩」
知らない仲ではない。それに、フェイシスも会いたがっていたのでいい機会だろうと許諾した。
「じゃ、お礼におすすめの店紹介するっす」
迷路のように入り込んだ道を通り、人気の少ない路地になっていく。
「こんなところに武器屋があるなんてな」
「表の店はいい意味で面白味がないっす。誰でも使える基本的な物しか置てない」
「ここは違うってわけか?」
店主もいかにも怖そうな感じだ。
リィドは要望を伝えると、即に返事が返ってきた。
「今うちには置いてないな。リカルドの店ならいくつ置いてある」
「どうもっす。そういえばおっちゃんが探してた例のあれ目撃情報出たっす」
「……いつものでいいか?」
「あざっす。じゃ、これで」
次の店に向かう。
「あの取引って違法なやつじゃないのか?」
「先輩が黙ってれば違法じゃないっす」
「な」
「冗談っす。別に違法でもなんでもないっす。おっちゃんの店で取り扱っている商品が盗難にあってそれの情報を掴んだんで教えて上げただけっす」
「そ、そうか」
真偽はさておき、詳しく聞かないほうがいいだろう。
「いらっしゃい。探し物は?」
リィドは同様に伝えた。
「今あるのはそこの棚にあるだけだな。一番人気はその発火グローブだな」
聞いたことのない代物だ。
「それはグローブの布地自体に魔術式が縫い付けてあって魔力を送れば自動発動するタイプだ」
「そんな便利なのがあるんだな。発火ってことは炎でも出せるのか?」
「おしい。こいつはグローブそのものが燃える」
「意味あるのか?」
そんなものを付けていたら怪我しかしないだろう。
「もちろん。証拠隠滅や部屋の爆破の火元になるだろ」
「ち、違うのをお願いします」
そんな物騒なものを求めていない。
「だったらこっちはどうだ?裏地にだけ防護魔術がかけれているから、表面にちょっと強烈な魔術や毒をかけて、触れるだけで相手になんてことができるぜ」
却下。
「そしたらこれしかないぞ?」
いたって普通の見た目だ。
「これは単純に強化魔術が縫い込まれているだけで耐久性はかなりあるが、面白味はないな」
「これください」
面白味がなくていい。探しもとめているのはこれなのだ。
「はいよ」
値段を聞くとリィドは驚いた。一般的な店で売られている安価な剣の五倍近くの値段だ。
もちろん払えない金額ではないが想像以上だった。
「なぁ、兄ちゃん?その腰につけている鞄をくれればこいつはただでやるぜ?それに、あと三つ四つ武器でもなんでも見繕ってやる」
「確かに先輩の鞄普通のじゃないですよね?」
「売る気はありません、貰い物なので」
「そいつぁ残念だ」
リィドは素直に金を渡し店を出た。
「先輩いじわるしないで、教えてくださいよー」
「鞄か?」
「そうっす。あのおっちゃんが欲しがるなんてけっこうレア物じゃないっすか」
「高価なものじゃないぞ?」
この鞄は魔術がかけれている。鞄の大きさ以上に物が収用できるというだけの代物だ。
鞄自体はどこにでもある普通の鞄に魔術をかけただけだ。
「なるほど。収納魔術じゃなくて、空間魔術の応用っすかね?」
「魔術詳しいのか?」
「めっちゃ詳しいっす。って信じてない顔っすね」
「別に疑ってはないさ。正直どっちでもいいからな」
「ひっどーい。これから苦楽を共にする仲間にそれはないんじゃないっすかね」
「それは悪かったな……ん?」
「?」
リィドは思わず立ち止まる。
「仲間?」
「そうっすよ。だって前にチームにいれてもらったじゃないっすか?」
「あの時は潜入捜査のためで、本当に入ったわけじゃないだろ?」
「先輩が犯人だったらそうでしたけど、違ったので」
「う……」
確かに一理あるが。
「あ、というか犯人はどうなったんだ?俺の冤罪は晴れたんだよな?」
「事件について無関係な先輩に言えることはないっす。つまりそういうことっす」
「なるほどな」
腕がいいのは当たり前、口が堅くなれければ信用はされない。
「じゃ、うちは野暮用があるんで一旦これで。後で先輩の宿に行きますね」
「ああ」
断るタイミングを完全に失ったようだ。
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