葛藤(姫咲視点)
今日の朝は文句を言いつつもかなり幸せな朝であることは間違いないだろう。恥ずかしくて素直になれなかったりしているけど、未来の事はちゃんと好きだし、好きな人との行為が嫌な訳が無い。体が痛いなんて文句を言ってしまうけど、かまって欲しくて言っている節がある。……でも!動画を撮ったりするのは違うと思う!!こんな道のど真ん中で再生しようとしないでぇ!!
そんな浮ついた気持ちが一瞬にしてゲンナリとした気持ちになる。まあかぁ…なんて思いつつも下駄箱に入ってるソレをサッとカバンに入れる。未来からすれば気持ちのいいものじゃないだろうし、どうやったって断る未来が変わることは無いのだから、わざわざ見せる必要は無いだろう。そう判断して後で見ようと思い、話に耳を傾ける。
………教室内でそんな話しないで!!あと何!?可愛がるって!!嬉しいけど!嬉しいけどさ!
昼休みにトイレに行ったついでにソレ、所謂ラブレターを見る。今どきまだ下駄箱に入れるとか古風なことする人がいるんだなぁなんて考えながら手紙を読む。差出人は聞いたこともない名前の男の先輩だった。内容は今日の放課後校舎裏に来てくれと、シンプルなものだった。早く帰りたかったのに…
無視する選択肢もあるけどあまりいい結果にはならないだろうと思い仕方なく放課後に時間を割く事を渋々決定する。
放課後になり何やら2人で話し合ってる未来と中野さん。…やっぱり親友だし、距離が近いなぁ…。なんてほんのちょっと嫉妬しちゃって、わざと会話に割り込む形で用事があることを伝える。待っててくれると聞いて、たったそれだけの事で心が舞いあがる。…重症だなぁこれは。前までの私なら、もっと冷静でいられたはず。心を開いてからは身も心も堕ちきってしまったのかもしれない。
未来が待ってくれているから足早に校舎裏に向かう。
男という生き物は時に猿みたいな思考回路になり暴走することがあるため人気のない所に行く時は護身用のスタンガンをいつでも出せるようにしておく。過去に1度告白を断ると逆上してきた人も居るから護身アイテムを持つことを心掛けている。
指定の場所には既に人が居た。こちらに気づくと深呼吸をして、告げてくる。
「一目見た時からお前の事が好きだ。良かったら、俺と付き合わないか?」
「申し訳ないですが、お断りします」
ノータイムで告げる。いつもなら少し位は考えてる風に間を空けるんだけど、早く帰りたくて即答してしまった。
「そ、そうか。なにか理由があったりするのか?」
「既に恋人がいますので」
「それは…どこのどいつだ?」
この人、さっきから言葉遣いがものすごく気に食わない…。
「あなたにそれを教える必要がありますか?」
「教えてくれないと引き下がれないだろ」
「はぁ、同じクラスの小鳥遊未来さんです」
食い下がってくるので仕方なく教える。
「…は?小鳥遊って女だったよな?女同士で付き合ってんのか?おかしいだろ!」
「ッ!…貴方にそんなことを言われる筋合いは無いです。誰と付き合おうが私の勝手です」
「はっ!勝手にしてろよ気持ち悪ぃ。あーあ、俺はこんなキモイやつに告ったのかよ、マジで黒歴史だわ。だいたい生意気なんだよ、お前。少し顔がいいからってよ。女は媚び売って愛想ふりまくしか能が無いんだから大人しく俺の女になってニコニコしとけばいいものを」
「あ、貴方!さっきから言わせておけば…」
「お前もおかしいけど…小鳥遊のやつもだな。2人揃って面は良いのに意味わからん。あれか?頭おかしいヤツ同士気が合うってか?」
「訂正してください!!未来はおかしくなんか無いです!こんな私にも優しくしてくれて、私にはもったいないくらい良い人です!」
私だけならまだいい。私が耐えればいい話だから。いつだって、そうしてきた。でも未来のことを悪く言われるのは耐えられない。私のせいで未来までおかしい人だなんて言われたくない。
「ああ?愛しの彼女を悪く言わないで〜ってか?マジで気持ちわりぃな。女同士の愛なんてある訳ねぇだろ。まあ、安心しろや。俺が直々に、小鳥遊未来は女と付き合う異常者でーーすって皆に教えてきてやるからよ。そしたら、お前の彼女ちゃんは学校での居場所が無くなるかもな?精々楽しくやっとけよ」
どうしよう…私のせいで、私のせいで未来が皆から悪く言われる。私みたいに、お前はおかしいんだって、異常者なんだって。学校での居場所が無くなる…?私のせいで?付き合っちゃったから?近くにいるから?関わってしまったから?全部私のせい…私の、ワタシノセイ…
そこからどうやって教室まで戻ったのか覚えてない。あんなに楽しみにしてたのに今はちっとも楽しくない。未来と離れなきゃ…だよね。嫌だなぁ…せっかく好きになれて、両思いになれて。こんなに幸せなのに…。離れたくないよ……でも、一緒にいたら未来に迷惑がかかる。せめて、大好きな貴方に迷惑が掛からないようにしなきゃね…。異常者である私はやっぱり幸せにはなれないんだね。
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