尋問タイム・後編(姫咲視点)

姫咲side


「よっす。ちょっと話したいことがあるんだけど良い?」


突然そう言いながら私の横に座る人が1人。名前は確か……中野さんだ。どうしたんだろうと思ってとりあえずそのまま話を聞く。


「話って言うのはさ、アイツ……小鳥遊のことなんだけど…」

「話すことはありません」


急に話しかけてきたと思ったら?小鳥遊さんの話?そんな事私に話す必要は無いはず。馴れ馴れしくしたつもりは無いですし……きっともう少し仲良くしてやってくれみたいな話でしょう。そういえば中野さんと言えばよく小鳥遊さんと一緒に居たはず……だから説得に来たわけだ。そうに違いない。


「まあ、そう言わず、話だけでも聞いてよ」

「……聞くだけ聞いてあげます」

「ありがと。じゃ早速、アイツとキスしたでしょ?それのこと怒ってる?」

「なっ…なんで知って……」

「いやー、アイツが私に言ってきてさ?なんかそれから距離を感じるとか言って説得してきてってさ。なんで私がこんなことしなきゃなのかね」


いや、なんで話してるの!?普通人にキスした話とか友達にする!?あーー!なんか顔熱くなってきた!


「そんで、とりあえず怒ってるかなって思ったけど……その様子なら大丈夫そうだね」

「はっ!?いや、怒ってますって!」

「はいはい、でここからが本題なんだけどさ」


なんかスルーされたし!?私の周りには話を聞かない人が多い気がしてきた…


「アイツのこと拒否ってるけどさ、正直嫌いじゃないでしょ?」

「はい?何を根拠にそんな事を…」

「姫咲さんはさ、もっと根本的な事を理由に拒否を続けてる」

「……」

「過去に……同性愛で何か、あったんでしょ?」

「ッ!!」


なんで……この人は、こんな的確に。バレてる?それならいっそ開き直るしか…第一話したこともないのにこんなづけづけと人の気にしてること言ってきて……なんかイライラしてきた。


「そうだね…だけどそれを貴方に言う必要無いよね?それとも何?私をバカにしにでも来たの?同性愛者なんて頭おかしいとでも言いたい訳?確かにそうだよ…でも変われなかった!しょうがないでしょ!?変わろうとしたの!恋愛なんて捨てて…もう好きとかそんな感情わかんなくなった!それでいいと思った。なのに…小鳥遊さんが私に構うようになって…やっぱり変わってなかったのがわかって。どれだけ蓋をしたっていつかは誰かを好きになるんだってわかっちゃったから…。普通でありたい!だから遠ざけてるのに!なんでこうも上手くいかないかなぁ…」


「過去に…何があったかは知らないけどさ。その考えは、間違ってるよ。同性を好きになる事は変な事じゃない。普通だよ。世の中色んな人がいて、たくさんの少数派が存在する。けどそれは特段おかしなことじゃないよ。姫咲さんは普通だよ」


普通……?そんなわけない、みんな、みんな離れていった。私がおかしいって言って……身近な人は誰一人私の事認めてくれなかった…なのに。


「普通なわけ…無いでしょ。貴方は他人でしょ?……そんな薄っぺらい言葉で絆すことが出来るとでも思ったわけ?身内から…親戚から、友達から……身近な人は誰一人として私を普通とは言わなかった……おかしいって、そう言って私から離れていくの。どうせ貴方も内心ではそう思ってるんでしょ?」


はぁ、なんで話したこともない人にこんな事言ってるんだろ……しかも周りにはクラスのみんなが居るのに。絶対聞いてるよね、めっちゃ静かだし。明日には広まってみんな離れていって……

転校しなきゃダメかもな。もうやだな。


「さっきから言わせておけば、何?悲劇のヒロインぶってる訳?確かに姫咲さんの周りにはそんな見る目のない奴しかいなかったかもしれないけどさ、ここは違う。みんなそんなこと気にしない。それにさ、「貴方も内心そう思ってるでしょ?」そんなわけないでしょ!私はね!百合が大好きなの!!」

「…え?」

「良い!?百合って言うのはね!とにかく尊いの!かわいい女の子達がイチャイチャしてたり楽しそうに笑いあってる姿は何よりも美しいし、この世で最も尊ばれるものなの!それをおかしいだぁ?……馬鹿なの?さっきは普通だって言ったけどね、撤回させてもらうよ。同性愛……百合はね。その辺の普通の恋愛よりも圧倒的に特別であり、最高なの。せっかく幼馴染が?百合に目覚めて、かわいい女の子に恋したってなれば、応援しない手は無いでしょ!近くで百合を眺められるんだから!さっさとくっ付いてよ!別に嫌いじゃないでしょ?顔もいいし性格も悪くない!そんでもって、あの子ああ見えて初恋だからね?貴方にしたのもファーストキスだからね?だいたいキスしたんならもうほとんど恋人じゃん。付き合っちゃえよ」


……いや、え?なんか情報量が多い。初恋?ファーストキス?……嘘でしょ。あんなキスしといて初めて?何それ…才能?


「い、いや、でも私小鳥遊さんのこと別に好きじゃないし…」

「嫌いでも無いんでしょ?ならこれから好きになればいいじゃん……はぁ、もう面倒臭いなぁ。

ねぇ!みんなぁ!未来と姫咲さんの百合!見たいよねー!」


え?ちょっと何して…


「「「見たぁーーーい!」」」


「ほらね?みんな変だとかそんなの思ってないの、もう障害は無いよね?」

「で、でも」

「はぁ、ならさ、コレ、みんなに見せて回るよ?嫌だよね?ならとりあえず付き合ってみよっか?」

「な、な、何その写真!?え?いつ撮ったの?消してよ!」

「それは無理なご相談かなぁ、まあ?アイツと付き合うってんなら消してあげても……良いけど?」


り、理不尽……だいたいなんで第三者が人の交際取り仕切ってる訳!?


「さあ、どうすんの?」

「ぐぬぬ…つ、付き合うから……消してください…」

「はい!よく言えました!じゃ消しとくねー、ちなみに分かってはいると思うけどコレ、アイツに送ってもらったやつだからもう1枚あるからね〜それは本人に言って消してもらってね」



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そんなこんなで……何故か小鳥遊さんとお付き合いすることに。もちろん(?)クラス…所か学校皆の公認で。


そして、今私は学校の屋上に呼び出されている。誰からかって?そんなの小鳥遊さんしか居ないだろう。

私も流石に覚悟決めるか……

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