たこす

 恋というものはまるで毒みたいだと思うのは私だけなのだろうか。

 毒は私たちに害を与えることもあれば、薬のように救うことだってある。恋もそれに似ている。じわじわと私たちを苦しめる時もあれば、心の安寧として救ってくれることもある。恋に落ちたと気づいた時は毒が回ったことに気づく時と同じ。気づいた時には手遅れなのだ。どうしようもない感情を抱えて過ごす。先人達はこんな気持ちを抱えて、どうにかして生きてきたのかとも思う。そうやって繁栄して現在まで続いてきたと思うとなんだか感慨深いかもしれない。

回りくどい言い方だって?恋愛なんてしないと思ってた自分が恋をしてしまったことをさっさと認めろ?認めてはいるとも。落ちていることに気づいているのだから。ただ、遅すぎたんじゃあないかって思っているだけだ。毒が回るのが遅かっただけ。回りきってくれなかっただけ。私の毒は遅効性だったみたいだ。即効性のほうが良かったのに。そうしたら、そうしたら…。終わったことを今更言ってもしょうがないのはわかっているけれど、人間ってタラレバが大好きな生き物であるから、これくらいは許してほしい。私が普段こんなことを言わないというのは君がよく知っているところだろう?だからしょうがないんだ。私だって人間だ。ありもしない過去と未来をずっと考えてしまうこともしょうがないんだ。君もよく私にそういうことを言っているから気持ちはわかるだろう?

 恋ってものは厄介だ。毒と違って明確な解毒薬があるわけじゃない。どうにかするための対処法も医者もいない。毒よりも面倒なものではないか。今すぐどうにかできるならば、してほしいものだ。いっその事思い切って告白でもすればいいじゃないかって?それが出来たら良かったものだけども、この世界はそんなに上手くはできていないんだ。言っただたろう、終わったこととね。私に回った毒はもう薬にはなってくれないんだ。今更言っても無駄なんだ。……無駄ではないと君は言うのかい?そう。私が今どんな状況に置かれているか、君が一番わかっているのに随分酷なことを言うもんだ。全く酷い人だ。だが、たまには君の言う通りにしてみるのも良いのかもしれない。腹をくくって、言おうじゃないか。

 

 「ねぇ、」

 君がいるこの石の前で私は最初で最後の告白をする。

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たこす @tako_su

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