第200話 自称勇者様シリーズ拝見。
祝☆本編200話☆(通し番号だと219話なのは秘密)
まあ、まだまだ続くのですが(今中盤入ったとこあたりでーす)
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ラーメンでびっくりの後は、神殿内部の見学会だそうだ。
神殿の前殿部分には、国内秘宝館と称した、ご神宝のレプリカの展示施設があったりするんですよ。建物の入り口に据えられた、微妙に派手な看板をサーシャちゃんがげっそりした顔で見てたけど、なんかあるのかしら?
あ、そういえば前にカル君が言っていた自称勇者様シリーズって、ここにあるんだっけ?
はい、入ってまず最初に展示されているのがそうでした。うん。防犯対策要らないアイテムだからね……最初に持ってくるよね……
ハーフプレートタイプの鎧やら剣の一式はまあある意味、そう、いかにも想定通りという意味で、普通だった。この世界でも今は時代がかった、と称されるサーコートなんかもあるね。ちなみに現代のこの世界、金属の全身鎧自体が一般的じゃない。火魔法で炙られると大変なことになるし、一応銃も開発されているので……
うん。そこまでは、判る。百歩譲って、普段着のシャツやズボン、辺りもまあ、判らなくはない。
ランニングシャツやら靴下やら、挙句の果てにぱんつまで展示されているのは、何故だ。
しかもこれ全部レプリカでも、盗まれたとしても勝手に戻ってくるとか言う謎性能、と説明に明記されている。もちろん、ぱんつも、だ。うん、ちゃんと、神力を感じますね……ぱんつにも。
「なんで、ぱんつ……」
ワカバちゃんが呟きながら目を逸らしている。まあ気持ちは判る。彼氏もいない未婚の乙女にブリーフは、ちょっと視覚的にキツイです、ええ。
「ブリーフ派なのか……」
サーシャちゃんは目を逸らしたりはしてないけど、なんかジト目になってる。
ちなみにこの世界の下着は基本紐で縛る式なので、原則トランクス系か、脇で結ぶ紐パンか、の二択だ。メリヤス編みはあるので肌触りはそこそこいいのだけど、ゴムが存在しないのよね。多分これも熱帯エリアが魔の森だからだとは思う。温帯でも育つゴム系樹脂を持つ植物もあったとは思うんだけど、どうもこの世界には導入されていないっぽい?
なおこの世界、車両の車輪にはゴムっぽい質感の分厚くて弾力性バッチリ、なおかつ丈夫な物質が貼られているんだけど、この世界固有の動物の皮革だそうで。蛙の仲間だったかなあ。
「解放感ありすぎると、落ち着かない若人だったんだよ、ってあいた!境の姫、下着くらいでそんな怒らなくてもー」
流石に今は違うけど、と、ケンタロウ氏。現在は六尺、ってなんのこっちゃ?サーシャちゃんは知ってるらしくて、ジト目が更に悪化してたから、彼らの文化圏の何かだろうか。
で、境の姫、ってメリエン様の事か。またお仕置き神力を感じたし。
まあとにかく、カル君がこれしか思い出せない、なんて言ってた理由は、なんとなく判りましたね……ダンスィ、ぱんつに目が行って戻らなかったんだろなー、多分。
「それにしたって、毎度思うんですが、下着にまでこの帰還性能は必要なんですかねえ?」
今日は他の仕事もないから、と、あたしたちに付いてきていたレンビュールさんが首を傾げている。
「いや、流石に必要ないよ?ただ、気が付いたらこうなってただけ、だからね?」
まさかの:成り行きでこうなっただけ。
詳しく聞いたら、どうも神化した時までに身に着けていた品物で、破れて処分したもの以外が全部こうなったと。
そう言われてみれば、靴も鞄も複数個あるな……その辺はTPOに合わせて感あるんで違和感なかったんだけど。
つまり、世間にはレプリカと称しているけど、だいたい、実物なんだそうだ。剣だけは念のため刃を潰したレプリカだそうだけど。流石にこれらはもう使わないから、わざわざレプリカにする意味もないしね、とは本神談。料理の時の話だと、新規に作った物にも帰還性能、付くらしいけど……って待て、これら、着用済みってことですか?!うへえ。洗濯はされてるだろうけど、下着はしまっとこうよ……
「まあ僕が創ると何にでもリターン属性付くんだけどね……」
あのご神宝の方は先代作で、僕の作品じゃないから持って来てもらわないといけなかったけど、と、なんだかちょっと遠い目でそう告白するケンタロウ氏。作った神が滅びても、作品は残るんだ……あとまあ、なんだ、リターン属性は……駄目だ、かける言葉が地味に見つからない。
という事は、何かを作った形跡すらなかったランガンドはともかく、アースガイン氏の創った物ってどこかに残ってるんだろうか。まあライゼルの連中が盗んでそうではあるんだけど。
「そういえばレンビュール、旧アスガイアの神宝については何か知っているかい?」
同じ事を思ったらしく、ランディさんがそう孫弟子に尋ねている。
「ああ、ライゼルの連中が入り込んだと言われた時に代理で回収したんで、大体ここにありますよ。といっても、彼の作品はあの連中には何の役にも立たないものだろうけど。恐らく医療関連機器の、その雛形なんで」
しれっと返答するレンビュールさん。なんだって?
「いや、そういうのは、あの国に渡しちゃダメな奴です……回収で正解です」
思わず口を挟む。確かに奴らに使いこなせるかどうかは判らないけど、絶対奴か、乗っ取った神体の延命、そんなとこにしか使わない未来しか見えない。
「成程、巫女ちゃんって、そういえばあの国に召喚されたとかいう話だっけ。実情も、結構知ってる?」
ケンタロウ氏が軽い調子でそう聞いてくる。
「現地に踏み込んだことはないんで、そこまで詳しくはないですよ。他の方にあれこれ聞かされてはいますけど」
エラーで魔の森に飛ばされずにいたとしたら、あたし自身の命が今頃ないのですよ……
「じゃあ後でその辺も聞かせてもらおうかな。ついでだから遺物の方も見て行ってもらうか。巫女ちゃんも、我が身内の保護者君も、なんか色々知ってそうだし」
いや、あたしにはそんな風に買いかぶられる程の知識はないと思うんですよ。多分医療系の話だろうという流れだけどさ、魔法ありきで構築されているこの世界の医療と、魔法のまの字もないあたしの世界の医療って基礎理論はさておき、道具系の理屈は多分根本的にかけ離れてるだろうし。
「元の世界の医療オタクってだけで、あたし自身の知識なんて知れてますよ。魔法のある世界でもなかったですし。ケンタロウ様の方が詳しいのでは?医療の心得、おありでしょう?」
思い切って、以前から少し疑問に思っていたことをぶつけてみる。
「あー様付けはやめてー、なんかこそばゆい。僕は一介の医学生であって、本職の医者じゃなかったし、多分技術的には古い知識しかないからねえ」
苦笑しながらケンタロウ氏がそう言うけど、さん付けするのもなあ?一応神様だしなあ?
「あーそうだな、カナデ達の世代の爺ちゃん世代なら、戦後暫くは経ってたろうけど、CTがあるかどうかくらいの時代だろうし、俺やねーちゃんの知識の方が新し気ではある、か」
サーシャちゃんがケンタロウ氏の発言を肯定する。あ、そうか、出自がサーシャちゃん達と同世界人だというなら、確かに基本の医療知識は、ケンタロウ氏のそれも、魔法のない世界のものなんだっけ。
「そうそう。断層撮影だっけ?海外で理論が出たのしか知らない」
なるほど?……だめだ、多分これ、話が合わない。あたしがいたのはVRゲームの為にフルスキャンをご家庭でできる時代なのよね……外側だけ計測してると思わせといて、体脂肪率とか地味に算出してくるのよねえ、あれ……
《むしろケンタロウ様はそういう、御自分の時代になかった、外の世界の新しい、後の世の知識をお求めなのではないですか?》
……あ、そうね。確かにシエラの言う通りだわ。全然おかしなことではないわね、そう考えたら。むしろ話が合わない方を、求められてるのか。
まああたしの世界、彼らとは別だから、またちょっと違う感想になるかもしれないんだけどね。
……ナノマシンの基礎実験で三回死にかけた話とか、していいと思う?
《……何の苦行ですか、それ……?》
シエラが呆れた声。いや、流石に一回目は死にそうにまでなるとは思ってなかったのよ?三回目は確かにちょっと心理的に抵抗はあったけど、前のよりはマシって言うからさ……ぜんぜんだめだったけど……
《ええと、ああこれですね……うーん、これは流石にこの世界にフィードバックするのは難しい概念な気がしますね……サーシャさんは理解しておられたようですので、話のタネにはなるのでしょうけど……》
そうねえ、時間が余ったらとか、間が持たないとかなったら、にしましょうかね。
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流石に褌の種類までは御存じない主人公。そしてうちの子に野郎のぱんつなんぞ見せるな、と怒られる自称勇者様。
そして自称勇者様シリーズの名称が出て来てから回収まで、ほぼ百話()
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