第199話 風変わりなお昼御飯。
一部ちょっとアレな表現があるのにごはん回だという。
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顔合わせからの情報交換やらに雪崩れ込みかけたものの、時間は既にお昼時をちょっと過ぎている、という事で、まずはお食事会から、ということになりました。流石に食事する場所に鶏たちは連れ込めないので、庭園の一角で、サイレンティ君とネヴァーモアさんが全部の用事が終わるまで面倒を見てくれることになりました。
テーブルに着いたところで、どどーん、と各人の前に置かれたのは、大き目の、口が広い丼。ほかほかと湯気を立てる茶色の澄んだスープの中には、細くて黄色っぽい、ちょっと縮れのあるつややかな麺、その上には半熟より少し固い感じの茹で卵を半分に切ったものがふた切れ、あとは薄切りの、丸く成形された感のあるお肉数枚と、細い、筍に似た風合いの短冊状の植物素材、えーと筍じゃなくて……メンマ、だっけ?それから多分、もやしとネギ。この香りは魚介出汁、かな?
うん、ラーメンですねこれ!食べた事がないわけではないけど、何年前だったかな!自分どころか親の入院前だからえっとー?……いや、数えるのは止めておこう、うん。
「わあ、ラーメンあるんだ?」
「うぉ、香りも本格的」
「まさかここでラーメンが出るとは思いませんでした」
三人組がお目目キラキラで丼を見つめています。微笑ましい光景ですね。
「はっはっは!ここ数年でようやっと満足のいく出来になってね!」
ケンタロウ氏、もしや料理もするのかしら?
「君本人が作っているわけじゃないだろう?」
ランディさんのツッコミ、成程彼は食べ専?
そして、ランディさんにツッコまれたケンタロウ氏は、何故か、しぶしぶのしおしおな顔になった。
「いやリターン属性付いてて、食わせても戻ってくる料理とか、誰が食うんだよ誰が。後始末えげつないことになるんだぞ?」
つまり、実行したことはあるんだ。で、壊れた扱いになって戻ってこないようにとか、できないんだ?というか、神宝作るとかじゃないのに、属性が付くの?
《そうなんですよ……神々には、それぞれに必ず付く基礎属性というものがあって、それはどんな場合でも必ず自動で付いてしまうのだとか》
そして、神力を使わない制作物でも、基礎属性は付いてしまう、らしい。なんたる。神様意外と不便なとこあるね?そういえば、料理を司る神とか、いるんだろうか。
《流石にいませんね……流行りと料理は、神ならざるものが作るもの、だそうです。古い神託記録書にあった文言ですが》
あー、この世界の神は、そもそも消耗品を作るタイプの存在ではないってことか。何となく、趣旨は判る。
「食べたら原型を留めないと思うのですが、所謂破損判定でも消えないんですか、そのリターン属性って」
そう聞いたら、しょんぼりした顔で頷くケンタロウ氏。そっか、だめか。
「制御が未熟な頃に作ったせいもあるんだろうけど、破損判定になったのに咀嚼された状態で戻ってきちゃってさ……それ以来厨房に入るの自体が禁止されてる」
……うわぁ、実質ゲ〇が戻ってた。そりゃ台所出禁にもなるわね……
「あのぅ、お二方……食事の席でするタイプの話じゃないと思うんですよね……」
よもやのワカバちゃんに叱られました。すまぬ、まさかマジでそんなオチだとまでは思ってなかったのよ……
酷い会話をしながら食べたラーメンですが、あっさり醤油味で美味しかったです。あー、これ、いい感じにカロリーが取れますね?
《気持ち塩分量が多いように感じますけども……》
ハルマナート国でなら、年中ちょっと運動すれば汗かくから、丁度いいんじゃないかな?
「うおー、ほんとにラーメンだーラーメンの味だー……」
「なんか、昔ながらのラーメン、って味がする!」
サーシャちゃんとカナデ君がなんか感動の面持ちでスープを啜っている。ワカバちゃんはそこまで激しく感動している様子ではないけど、しっかり完食している。
ちなみにラーメンだけじゃなく、ブルグルの入ったサラダもついてた。コメがないからチャーハンセットが作れねえんだよなあ、とケンタロウ氏がぼやいてた。またコメの話か!ってそうだ、カレーもコメもないなんての元祖だったわこの人!
「ねーちゃん結構よく食べるけど、ほっそいよなあ」
綺麗に完食したあたしの食器を見て、サーシャちゃんがそんなことを言い出した。
「いや多分これで標準体型だと思うんだけど……体質的に太りにくいのは確かね。あと魔力の回復、ベース分は基礎代謝から捻出してる感じだから、魔力を使い過ぎると体重がごっそり減るのよ……」
とはいえ、普段の生活で体重が減る程魔力を使う事は、流石にそうそうない。身体強化的な何かにも無意識で魔力を使うみたいで、きつめの運動すると魔力の少ない人より多い人の方が、おなかが空くの、早いそうだけど。
「代謝ベースなのは確かだけど、そもそも君たち異世界人補正がついてる上に、真龍級以上の魔力量だと、上乗せ分の回復量の方がえぐいから、そう簡単に体重が減るほどの魔力消費はしない気がするけどなあ?」
ケンタロウ氏が首を傾げる。まあ元魔王級魔力保持者だから、その辺の基本は知ってるんだろうけど。
「堕神戦で魔力半分切りましたからね……一時はこのまま体重が戻らないんじゃないかと思うレベルで減りましたから……」
そう答えたら、あー!という顔になるケンタロウ氏。
「あの時は本人がまだあまりその辺りを把握していないようだったから、ある程度消費するまで様子見していたんだが、今思うともう少し手前で止めても良かったかもしれないな。本人の体質という要素を忘れていたんだ」
ランディさんがそう補足説明という名の言い訳などしている。まあでもあの時ランディさんが止めてくれなかったら、回復にもっと時間がかかってたろうし、もっと早い段階で止められていたら、ここまで明確にダメなラインだと覚えることはできなかったと思う。
「あれはあれで丁度いいタイミングだったと思いますよ。あれより手前だと多分実感しきれなかった気がします」
これは本気でそう思う。あれより手前だと、いつもよりちょっと回復が時間かかるな、くらいしか思わなかった気がするのよね。そして、あれより後だと、多分魔力切れの前に、体力側の限界で倒れたと思う。回復能力は高いに越したことはないけど、それが高すぎるのも問題がないわけじゃ、ないのだ……
「えーと、つまり俺らもそういう感じ、ってことでいいの?」
サーシャちゃんが恐る恐る、という感じで聞いてくる。
「食べる量は増えたけど、体型はそう言えば全然変わらないですね……」
ワカバちゃんは少なくとも体重が増えたりはしていないらしい。
「うーん、僕はもとが病気であんま食べられない方だったから、実感が逆にないや……」
カナデ君はあたし同様もと病人だから、元の自分の食事量が参考にならないやつ、判るわかる。
「君らも何らかの手段で魔力減少時の現象を身体で覚えておく必要はあるだろうが……まあ時期尚早だな……君らはもう少し育つんだろう?」
ランディさんは成長期にするべき無理ではない、と判定したようで、三人組にはそういう負荷はまだ早いと結論付けたようだ。
《まあ去年くらいから身長も伸びなくなっていましたし、成長期っぽいものは大体終わってるのは確かですね……もう少し、こう、メリハリが欲しい気は、するんですが……》
シエラさんがなんだか無茶振りをしてきた気がするんですが……貴方のいうメリハリって意図して作れるもんなんです……?
思わず俯いて自分のお胸の辺りを見てしまったけど、個人的にはこのくらいが好みと言えば好みなんですよね……大きすぎず、小さくもなくで。なお、今の所春から比べて減った様子はありません。増えてもいないけど。
「……あー、女性魔法使いってそこから減るっていうよね……あいた!」
あたしの視線の向きに気が付いたケンタロウ氏がそう言ったところで、なんかおもむろにメリエン様の神力、多分お仕置きが飛んでいた。メリエン様、結構な遠隔地だけど、随分気安くお仕置きぶん投げてるわね?
《人間時代に接触があって、何やら世話をしたということで、以前より交流はあるのだそうですよ?》
成程、自称勇者様時代のあれこれか。伝記とかでメリエン様らしき存在の話は特になかったし、堕神討滅絡みの頃の話かしらね?
「えっ、減るの……」
ワカバちゃんがショックを受けたような顔をしている。なお、彼女も見た感じは、大きすぎず小さすぎず勢だ。
「統計上は減るという傾向が確かに記録にあるね。ただ、余程の激務じゃないとそこまではいかないともあるよ。まあ治癒師だと、少し忙しいだろうけど、君らの基礎魔力だと、それこそ半減以上使う事自体がそうそうないだろうから、あまり心配しなくていいよ」
ケンタロウ氏がそう言うところを見ると、実際減るけど、そう簡単な話でもない、といったところか。
実際一回体重減るとこまでいったけど、お胸は減ってはいないし!
……でも回数重ねるとまずい気はするから、自重しようね……
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