第30話 属性力と色の相関性。

 乙女もついに30話です。まだまだ序盤戦だけど。

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 でもそうか、アルミラージも魔法は使うのね、見たことはまだないけど、確か。


(あたしは水がつかえるらしいけど、あるみらで水はめずらしいから、ほかのしゅぞくのひとにおしえてもらわないといけないー)

 あれ、ミモザもレア属性なのね。ああでも確かにおばあちゃんもお兄ちゃんたちも土が多かったねえ。


(おれは光ってことになるのかな?)

 そうね、ジャッキーは光がちょっと強くて、あとは割と均等に……あら?均等に、全部ある?全属性ってないんじゃなかったの?闇だけは痕跡程度しかなくて使うどころか伸ばすのも絶対無理状態になってるけど。


《えっ全属性!?ほんとだ、ジャッキーさんこれじゃ光以外使えませんね。文献で見たことはありますけど、属性が全部相殺しあってしまうタイプの全属性持ちって実在するんですね……魔力量の割に属性が弱いと思ったらこんなことになっていたなんて》


 ああ、ジャッキーも異世界から来た子だから、もとの世界で全属性が普通にいたりするところだったのかもしれないわね。


 ってあら?魔力量の割に属性魔法の適性がない、って……

 イードさん、もしかして?


《……ないとは言い切れませんね。龍の方々はほぼ全員が複数属性を持っておられますし、この城塞にイードさん目当てにやってきている幻獣さんたちの属性には、びっくりするほど偏りがないんです。まあ闇属性の幻獣さんって殆どいないので、断言はしませんが……フェンリルさんが闇と水と氷の複合持ちなくらいでしょうか。とはいえフェンリル族は確か舞狐族同様、異世界から渡ってきた種族だそうなので、それで闇持ちなのかもしれません》


 野衾は基本的に風、ケットシーは水と風、個体によって光らしい。黒猫だからといって闇を持っているわけではないのよ。

 ちなみにあたしがここまで他の人の属性をはっきり感知できるのは、巫女候補としての能力の一つであるそうな。

 一般的な巫女候補はこの能力を知られて発見されることが多いんですって。

 あたしの場合は、今はシエラから借りている感じなので、当然シエラのほうが詳細に見ることができるんですけどね。頼りにしてまっす。


《属性を見られて怒る人は基本いませんから、積極的に見るようにして練習しましょうね。巫女としての修行にもなりますよ。まあ相手に伝えるまではしなくていいですけど》

 多分、境界神様の巫女候補だと知られると、怖れられるだろうから、とシエラが付け加えた。怖れ?


《サンファンの話にも御座いましたでしょう?境界神メリエンカーラ様は、神罰の神でもあるのです》

 ああ!成程。

 ……ひょっとして、御力と御業の割に知名度が低めで信者が少ないのも?


《そうですね。メリエン様自身が目立つことを嫌う性格なのもありますが、他国では神罰の面が強調され過ぎていて、信仰以前に畏怖されてしまいがちなのです。お会いすると気さくな方なんですけれどねえ》

 そうね、あたしもメリエン様はこういうと不敬かも知れないけど、あのお人柄は、好きよ。



 ジャッキーに光しか使えなさそうなことを教えたら、ちょっとがっかりしていた。王城で誰かがデモンストレーションで使ってた魔法を使ってみたかったんですって。


「大丈夫よ、光にも攻撃魔法はあるんだし、そもそも治癒を使えるのが凄いことなのよ?ジャッキーの治癒の魔法陣、とっても綺麗で、あたしは好きよ?」


 わざと声に出してそう言ってやったら、とっても照れていた。かわいいなあもう。


 ぴい。

 ずっとあたしの肩に乗ってうとうとしていたシルマック君が、一声鳴いて小さな風の魔法陣をくるり。流れる風のような文様がこれも美しい。

 効果はふわっと通り過ぎる風。

 自分たちの飛行時に揚力や速度が足りないとこんな魔法で補うんですって。魔力量は然程多くない生き物なので、攻撃魔法は覚えてもいないそうだ。


 そんな風にもふもふ達と戯れたり撫でてやったりしていたら夕飯の支度の時間になっていた。

 部屋に連れ込めるサイズの生き物が増えたから、皆のブラッシング用のブラシ、誂えてもらおうかなあ。褒賞のおかげでお金はあるのよね、今のあたし。



 夕飯は門前で焼肉でした。ええ今回も軍の皆さん作です。イードさんが作ろうとしたら、お前の料理だと肉が足りない、と。

 デスヨネー君たちの食欲だとそうなりますよねー。燻製肉倉庫が他よりでかい理由が良く判りました!

 今回も隅っこでイードさんやガトランドさんと普通の分量で食べましたさ。まあガトランドさんは治したけど怪我してたりで、あたしたちよりはしっかり食べてたけどね。


 村の方で被害に遭った家畜の、村で処理しきれそうにない分の買い取りもしてきたそうで、食べられる部分が豪快に供されております。流石に丸焼きは無理だったそうだけど。

 幻獣と違って、家畜の死体にはまず黒いシミはついていないんだそう。ただ食い荒らされたように千切れていたり、そもそも血抜きがちゃんとできてなかったりで、食べられる部分は案外と少なくなってしまう。くず肉部分を集めてミンチにする作業あたりは手伝ったよ!

 塩と小麦粉振って捏ねて丸めて肉団子にしたところでサクシュカさんが凍らせてた。明日の晩御飯に回すんだって。


 血抜きのできなかった部分は狼さんずをはじめとする、肉食の獣勢に渡されました。野生動物の狩りの食事は血抜きしませんものね。


 家畜の味ー。暫く人里に近寄るの禁止ー


 味が恋しくなって襲いにいっちゃいけません、と、理性的に狼さんたちが判断している。

 多分もうちょっと頑張れば幻獣枠に届くような狼さんなんだろうなあこれ。城塞の猫や、遠くで様子を伺っている他所の群れの狼より、言葉がはっきり判るのよね、今目の前にいるこの毛艶のいい群れ。


《そうですね、何らかの事情で魔力を獲得できれば、幻獣と呼ばれるようになる感じですね》

 なるほど、そういえばこの子達は属性感じないな。魔力も見えない。うん、相変わらず見えるんだけど感知がいまいちです。なんでだろうね。


《その件は最早個性だと思うことにした方がいいのでは、とメリエン様も頭を抱えておられる様子でしたわ》

 多分保有魔力が多すぎる弊害ではなかろうか、という話だそうだ。成程、自分のに紛れて判らん、のか……

 だとしたら名づけの時だけ流れが何となく判るというのも納得だな?そういえば、自分の魔力、使ったときに減るのだけは感覚で判るんだよね。

 名づけの時には魔力が自分のほうから相手に流れて減るから、それを感じてるんだと思う。


《ああ!魔力の減少は知覚できないと枯渇に気が付かなくて過負荷で倒れるとかしかねないですものね。良かった、ちゃんと最低限の保護機能は働いてるんですね》

 言い方ァ……魔力扱いの雑さ加減自体は否定できないけど……


「仲いいな君ら?今日も隅っこか?んん?もっと肉食わねえと早く老けるぞー?」

 カルセスト王子が今日も絡みに来る。この人の属性は水と風と光。光は攻撃というかブレスだけ光属性。


「何度も言わせるな、おぬしらの量に合わせていては腹がはちきれるわ」

 食事を邪魔されたと感じているらしきイードさんが渋い顔。イードさんて感情というか、なんか考えてそうな事が判りやすいんだよなぁ。そして、やっぱり思った通り、イードさん、全属性ほぼ均等に持ってました。


「ご兄弟の中でも一番見た目が王子様然としてるのに中身がコレなの、割とガチで詐欺とか言われかねないよなー」

 ガトランドさんが苦笑している。ここの王族の皆さん基本不敬とか言わないから、近くで接してる人はこういうことも平気で言う。


「なにガット、俺に王子様らしくして欲しいの?不敬であるぞ!とか?」

 相変わらずの笑ってない眼のまま、矛先をガトランドさんに変えてふざけるカルセスト王子。

 そういやあたしも、何となくこの人の名前にだけ王子ってつける癖が付いちゃってるの、確かに見た目に引き摺られてるのかもしれない。

 というか、人間基準だと、やっぱこういうタイプが王子様らしい見た目、なのか。


《他国の半数くらいが金髪銀髪家系の王族なので、全体のイメージとしては確かにそうかもしれませんねえ》

 その他は色がばらばらなハルマナート国以外は、黒髪とか緑とか青とか紫固定とか。緑に青に紫?世間は広いな。


《属性力が極度に強いと、髪や眼の色が染まることがありまして。緑は風や複合の植物、青や水色は水、紫は水と風の複合だったり雷が稀に出たりですね。龍の皆さまの龍の体色や髪色が様々に違うのと同じことが、普通の人族でも時折起こるのです》


 ああそういうことか。つまり龍の人たちは属性力も強い方が多いのね。

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