第30話 弱かった自分にサヨナラ

金曜日ちょっと忙しくて書く時間取れませんでした(汗)

一日更新遅れてしまいましたがどうぞ!

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


「そんなことは言うもんじゃないよ。杏奈」


俺が言うと杏奈は驚いたように振り向いた。

まさか決別したとは言え前まで友達だったのにそんなことを言うとは思わなかった。

やっぱりここで話す機会を得られてよかったかもしれない。


「な、なんでアンタがここに……」


「うーん……昔の俺に決着をつけるためかな」


「はぁ?」


杏奈は心底わけがわからないといった様子で俺を睨んでくる。

俺はサラリと作り笑いで流しておいた。


「俺の初恋はな。お前なんだよ、杏奈」


今となれば何考えてたんだろうって話だよな。

多分俺も舞い上がっていたんだろう。

女子と少し話せたのが嬉しくて、ちょっと優しくされたくらいで相手のことを知ろうとする努力が足りなかった。


「は?何が言いたいわけ?」


「お前には言っておくよ。俺と朱里さんは別に付き合ってるわけじゃない」


「は……?はぁぁぁぁぁぁ!?!?!アンタ何言ってるわけ!?」


流石にこのカミングアウトには驚いたようだ。

まあ昔、杏奈の前で付き合ってる証拠を見せろって言われて朱里さん俺の頬にキスまでしてたもんな。

驚くのも無理はないか。


「俺達は偽装カップルを演じていたんだ。まあ朱里さんから告白はされたけども……」


「はぁ?なんでそんなことをしてたわけ?」


「変わるためだよ。朱里さんは馬鹿みたいに腐ってた俺に変わるきっかけをくれたんだ。勉強だって、髪型だって、全部全部朱里さんがいなかったらできなかったことだ」


「だからってあたしにそれを言ってどうしたいの?」


杏奈は顔に警戒の色をにじませ俺を見てくる。

確かにいきなり言ってるんだって話か。

そもそも俺達の関係がかなり特殊だし別れた恋人に何言ってるんだって。

まあでも杏奈的には元カップルって思われたくないらしいし俺も別にそれで構わないんだけど。


「ははん。わかったわ。アンタいきなりあたしに朱里と付き合ってない宣言してあたしに告白する気なんでしょ」


「は?」


杏奈はニヤニヤと笑いながら俺を見てくる。

俺はその突飛なワードと気持ち悪い笑みに怒りが湧くのではなくただただ呆れだった。

人間わけのわからないことを突然言われると呆れることしかできなくなるらしい。


「あたしも罪な女ね。まあ可愛く生まれちゃったわけだし仕方ないかな?」


は?こいつは本当に何を言ってるんだ?

自分で可愛く生まれたとか言ってるし……

正直人の顔に優劣をつけるなんてことはしたくないけど朱里さんのほうが何倍も可愛いと思うぞ。


「仕方ないから付き合ってあげるわ。ただ一つ条件よ。クラスのみんなの前で朱里をフリなさい。その偽装カップルとやらはまだ使えそうだしね」


こいつはなぜかずっと一人で話し続けてるんだが……

逆になぜあんな仕打ちをしておいてまだ自分が好かれていると思えるのだろうか。

相変わらず性格も終わってるレベルでクソだしもはや遠慮はいらないようだ。

最近元気無いという噂もあったし屋上でも少しやつれた顔をしていたからちょっとだけ心配したことを後悔してきた。

もうこいつは徹底的にやらないといけない。


「お前は一体何を言ってるんだ?」


「は、はぁ?だからアンタはあたしのことが好きなんでしょ?付き合ってあげるって言ってんの」


「俺は別にお前のことは好きじゃない。だけだ。勝手に自分の都合のいいように妄想すんな」


俺の好きな人、まぶたの裏には腰まで伸ばした艶やかな黒髪を揺らして楽しそうに笑う可愛らしい笑顔があった。

自然と勇気をくれる。


「俺は今日感謝をしにきたんだよ」


「か、感謝?」


「ああ」


今まで俺はずっと劣等感を抱き続けてきた。

今ではちょっとはマシになったかもしれないけどそれは変わらないかもしれない。

でも、変わろうとする意思を持てるくらいには変われたんだと思う。

だから……過去の弱かった自分にサヨナラだ。

俺は……大切な人を幸せにできるように、自分の幸せを掴めるように努力を続ける決意表明でもある。

もう体は震えない。

ある人に自信も勇気も貰ったから、それに応えたいんだ。


。おかげで俺は変われたんだ」


「っ!!」


朱里さんと付き合っているというステータスを外し、初恋だったことも正直に伝えた。

その上で……杏奈は俺と付き合ってもいいと思わせるくらいには変われたことの証明。

俺自身が成長した証だった。

だから感謝をもって俺の復讐とするんだ。

杏奈は俺の言葉に顔を歪ませる。


「俺には好きな人がいるんでな。俺を拾ってくれた大切な人だ」


「う……」


「じゃあな」


「ま、待ちなさいよ!」


杏奈がまだ何か喚いていたが俺は振り返ること無く屋上を後にした──

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る