第25話 戦闘開始っ!

先生のはじめの合図と共にテストを裏返し解答用紙に忘れずに名前を記入する。

そして問題を見始めた。


(1問目から順番に解いていく……!)


俺は一番上から問題に目を通し解いていく。

入試ならば得意分野から解くべきだが学校の定期テストは最初から難しい問題を出してくるのはほとんどないし時間が無くなる可能性も薄い。

詰まったら1回飛ばすくらいの気持ちで解けばいいと朱里さんが教えてくれた。


今は英語コミュニケーションⅡのテスト。

最初の単語地帯を抜ければしばらくは教科書の本文と英文は変わらない。

流石に問題文は変わっているものの英文が変わっていないならば大体の内容を暗記している俺には解くのは大して難しくない。


(絶対に負けない……!)


◇◆◇


「んっ、はぁ〜……1日目が終わったね……」


まだ日も高くいつもより早い帰路についた俺たちは朱里さんは横で伸びをする。

今日は2時間だけで早く帰ることができるのはありがたい。


「どうだったかな?翔吾くん」


「正直すごすぎると思った。朱里さんは天才なの?」


俺は当然テスト範囲の全ての部分はある程度頭に入ってる。

だが朱里さんが重点的にやったほうがいいといった部分がめちゃくちゃ出た。

的中率は一言で言うなら作った人ですか?と聞きたいくらい。

初見問題は流石に予想は不可能だけど出そうな単語とかあそこまでわかるものなのだろうか。


「あはは、まあテストで問題出せるところなんて限られてるからね。先生の傾向もあるけどそれでもやっぱり出せる範囲に限界はあるから」


はい、やっぱり天才でした。

そんなのがわかればみんな大して苦労なんてしない。

ある程度はできるんだろうけどこんな馬鹿げた的中率を見せられるのはおそらく朱里さんだけだ。


「あ、そうだ。翔吾くんお昼ご飯一緒に食べる?」


「それなんだけどたまには外で食べない?食費は折半だけど人件費は払ってないからここは俺に奢らせてほしいんだけど」


明らかに俺のほうがリターンが大きいのだ。

たまには俺に払わせてほしい。

人件費を払おうとしても頑なに受け取ってくれないしこれくらいはしないと申し訳ないのだ。


「行こう行こう!でも自分の分は私も出すよ?」


「ダメ。ここは素直に俺に奢られてください」


「うーん……じゃあお願いしちゃおっかな」


朱里さんはニコッと笑う。

断りすぎるのもよくないと思ってくれたのだろう。

朱里さんは本当に人間関係が上手い。

……まあたまにポンコツになる気もしなくもなけど。


「どこに行こうか?」


「翔吾くんの行きたいところでいいよ?」


「いや、普段のお礼も兼ねてるしここは朱里さんの行きたいところに行こう」


「でも翔吾くんのお金で食べるんだし翔吾くんが食べたいもののほうが……」


結局そこからしばらくは押し問答になった。

そして話し合って決めた結果は──


「ちょっとお昼より早い時間の平日だから結構空いてるね〜」


「うん、ここに来て正解だったかも」


来ていたのはショッピングモールのフードコート。

ここならば各々好きなものが食べられるのでお互い異論はなかった。

俺はカツ丼を、朱里さんはカレーを注文している。


「ん〜!お店のご飯ってやっぱり美味しいね〜」


「まあそれで生活してるわけだしね。家じゃ出せない味も多いよね」


朱里さんは美味しそうに目を細めて頬に手を添えて言う。

俺もそれに同調し自分のカツ丼を食べる。


「むむ……美味しいのはいいけど……やっぱりちょっと悔しい」


朱里さんは店のカレーに対抗意識を燃やしている。

なんども言うが向こうはカレーで生活しているのだ。

朱里さんがそれで勝ってしまったら店を開けてしまう。

……朱里さんなら勝ちかねないと思ってる自分がいるけど。


「あ、そうだ。そのカツ丼一口ちょうだい?」


「え?これ?でも俺の食べかけだよ?」


「いいのいいの!せっかく外に食べに来たんだからいろんな料理を楽しみたいでしょ?」


朱里さんが別に良いなら俺は反対する気はなかったのでカツ丼のどんぶりを朱里さんの方に押し出す。

すると朱里さんはちょっとムッとした顔をした。


「翔吾くん、乙女心がわかってないよ」


「え?食べたいんじゃないの?」


「そうだけど……食べさせてほしいな?」


そう言って朱里さんは小さく形の良い口を開く。

た、食べさせるのはちょっとハードルが高いんじゃ……

でも今日は朱里さんのお礼も兼ねてるんだ。

ええい!覚悟を決めろ俺!

俺は食べやすいよう箸で小さめのカツと卵を選んで掴んだ。


「は、はい。あーん」


「あーん」


朱里さんの口の中にカツが収まった。

朱里さんはもぐもぐと咀嚼してごくりと飲み込む。


「お、美味しいね!私もカツ丼にすればよかったかも……」


気丈に振る舞おうとしているがその顔は疑うまでもなく真っ赤だ。

見事なまでの自爆だった。


「恥ずかしいならやめとけばいいのに」


「は、恥ずかしくなんてないもん!」


その後結局俺まであーんされることになった。

する側もなかなかのハードルだったがされる側はもっとやばい。

俺が照れていると朱里さんがここぞとばかりにニヤニヤしてからかってきた。


くそう……朱里さんだって照れてたくせに……!


─────────────────────────

テストの朝友達とお互い問題を出しあって終わったらお互いの出来を聞くまでがテンプレート。

テスト週間はよく友達と一緒に御飯を食べに行くのもあるあるです笑


ちなみに砂乃がよく行くのはラーメン!(誰も聞いとらん)

お気に入りはねぎラーメンです笑

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