第20話 社会的死亡の危機!?

「もう結構いい時間になってきたね」


「そうだね。もうすぐ日付が変わっちゃうし明日も勉強しなきゃだからこれくらいにしておこうか。お疲れ様、翔吾くん」


朱里さんに終了を告げられ俺は問題集を閉じ始める。

ずっと同じ体勢でいたので体が固まっている。

首を回して伸びをするとかなりすっきりした気がした。


「出だしとしてはかなりいい感じだね。今日勉強した範囲の正答率、かなり上がってたよ」


「それは何よりだよ。本番では絶対に結果を出さなくちゃだからね」


「ストイックだね〜。はい、これどうぞ」


朱里さんがお茶を淹れて手渡してくれる。

俺は一つお礼を言い受け取ってお茶をすすった。

ついホッと息が出る。


「明日もこの調子で頑張らないとね」


「うんうん。今日はもう明日に備えて寝ようね。寝不足は敵だもん」


「そうだな……って俺どこで寝ればいいんだ?」


いつも朱里さんの家にお邪魔させてもらっていると言っても来るのはリビングくらいだ。

他の部屋がどうなってるかなんて聞いたことがない。

まあ最悪ソファーを借りれば済む話だけども。


「ふふ、ちゃんとお客さん用の布団があるよ。昨日のうちに洗濯しておいたんだ〜」


「それは助かる。リビングとかに引いて寝かせてもらうよ」


朱里さんから誘ってくれたくらいだしあるとは思ってたけどソファーは回避した。

俺がその事実に喜んでいると朱里さんが俺の服の裾をちょんと握ってくる。

そして風呂上がりに逃げ風呂から出てからは勉強に集中していたためあまり目に入ってこなかった朱里さんのパジャマ姿ががっつり目に入る。


少し暖かくなってきた季節に合わせ少し薄手のピンク色のパジャマはいつもより少し幼く見え可愛く見える。

一言で言うならとても似合っていた。

裾を掴む仕草も相まって心臓が爆発しそうになっている。


「ど、どうしたの……?」


「一緒の部屋で寝ようよ……」


その言葉の意味を理解するのに数秒ほど要し理解した瞬間、驚きのあまり俺は叫びそうになる。

近所迷惑の危機を回避した自分を褒めつつ、俺は首を横に振る。


「泊まりでもグレーゾーンなんだよ!?一緒の部屋はもう真っ黒になっちゃってるって!俺、世間に殺されちゃうよ!?」


「翔吾くんがおじさんだったら問題になるかもだけど高校生同士なら絶対に問題にならないよ」


「襲われるかもしれないんだよ!?」


「晩御飯に誘ったときも言ったけど翔吾くんを信頼してるし襲われたら責任取ってもらってくれるんでしょ?まあできちゃったら社会的死亡の可能性はあるけど」


それが怖いから断ってるんですけど!?

男子高校生の理性を甘く見ないほうがいい……

どんな約束や決意をしたっていざそういう衝動にかられたら紙切れみたいに飛んでいくに決まってる!


「や、やっぱり遠慮しておこうかな……あ、あはは……」


「お願い……翔吾くんがせっかく泊まりに来てくれたんだから最後まで一緒にいたいな……」


朱里さんは裾を離さず目をうるませてこちらを見てくる。

俺の決意に大ダメージ!

そ、そんな上目遣いしてめちゃくちゃ可愛くても俺は負けないんだからな!


◇◆◇


「それじゃあ電気消すね」


「う、うん……」


朱里さんが手元のリモコンをいじり電気が消える。

そして俺と朱里さんはそれぞれ自分の布団とベッドに入った。


(や、やってしまった〜!)


あの後結局、潤んだ瞳(効果抜群)+上目遣い(急所)×レアなパジャマ姿(会心の一撃)の裾つまみ(クリティカル)乗の超オーバーキルの火力に耐えきれなかった。

俺はあっという間に陥落しいつの間にか首を縦に振っていた。

……なんかいつも押し切られてる気がする。


俺はできるだけ見ないように朱里さんに背を向け布団を深く被る。

だけどドキドキしすぎてなかなか寝付けなかった。


「翔吾くん……起きてる……?」


俺が寝られずに悶えていると朱里さんに小さな声で話しかけられた。

無視する必要もないので俺も朱里さんに合わせ小さな声で「起きてるよ」と返す。


「来てくれてありがとね……翔吾くんと一緒にいられて……普段と違う姿が見れてちょっとドキドキしたけどすっごく楽しかった……」


「それは俺のセリフだよ……今日だけじゃない……朱里さんには返しきれないくらいいろんなものをもらったんだ……感謝するのは俺の方だよ……」


朱里さんはいろんなものを俺にくれた。

もしかしたら自分が好きでやってるからと笑いながら言うのかもしれないけどそれでも俺は感謝を伝えていつか恩返しをしなくちゃならない。

それが俺が朱里さんと協力関係偽装カップルをしていくうえで立てた誓いだった。


「私もね……翔吾くんから数え切れないくらいいろんなものをもらったの……今はまだわからないかもしれないけどいつかきっと伝えるから……」


俺が朱里さんに渡せたもの……?

なんだろうと考えているといつの間にか強烈な眠気に襲われる。

勉強を今までで一番長時間集中して取り組んでいたから疲れていたのかもしれない。

もう……だめだ……


「おやすみ……また明日、翔吾くん……」


俺の意識は完全に暗闇へと消えていった。


─────────────────────────

この作品が始まったのはいろんな作風を試すべく修行のために始まった……

はずなのになぜだろう?

いつの間にか甘々全開でざまぁが減ってきるような……

ざまぁ、向いてないのか……?

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