第19話 ご褒美

風呂から出たあと俺達は勉強会を再開した。

途中で朱里さんが夜食を作ってくれた。

朱里さんが作ってくれたサンドイッチ……美味しかったなぁ……


「結構勉強したね……」


「うん!翔吾くんがすっごく頑張ったから計画よりも進んだね」


「はは、朱里さんが横でつきっきりで教えてくれてるんだから効率よく進んだだけだよ。ありがとう」


俺が朱里さんに感謝を伝えると朱里さんはふるふると横に首を振った。

そしてニコッと優しく微笑む。


「ううん。そんなことない。私が教えたことをどんどん吸収していくから最後の方は一人でほとんど解けてたよ。だから翔吾くんの頑張りのおかげ」


「そ、そうかな……」


「うん!だから自信を持ってね!」


前に朱里さんにテストに大切なのは自信だと言われたことがある。

何回も問題を解きまくって自信を付けていく。

これが朱里さんの勉強法の側面だよな。


「それじゃあ頑張った翔吾くんになにかご褒美をあげる!なにかしてほしいこととかある?」


「そうは言われてもなぁ……」


俺は普段から朱里さんにいろんなものをもらいすぎている。

それこそ今日だって泊めてもらって勉強も教えてもらってるわけだし夜食も頂いてしまった。

これ以上望むものはないしもし望むとすればバチが当たりそうだ。


「いや、俺は今でも十分満足してるから」


「むぅ……そこは素直に応じるところでしょ。遠慮なんてしなくていいから」


「でも……」


朱里さんは小さく頬をふくらませるが無いものは無いのだ。

わざわざひねり出してまでやってもらうことはないし。


「じゃあ勝手に私がご褒美あげるね」


「わっ!」


朱里さんは俺の首に手を回し自分の胸元に抱き寄せた。

柔らかい感触が顔に伝わってくる。

俺は何が起こったのか一瞬わからなかったが押し当てられているものの正体に気づき慌てる。


「あ、朱里さん!」


「大丈夫。ちょっと恥ずかしいけど……翔吾くんなら嫌じゃないから……」


「でも……」


「男の子ってこういうの好きじゃないの……?」


「……………好きだけど」


好きか嫌いかで聞かれたら好きに決まってる。

でも朱里さんに無理をさせてまでやってほしいとは思わない。

そう思って聞いたのだが朱里さんに慌てた様子はなく落ち着いた優しい声色で話しかけてくれる。

俺がされるがままになっていると朱里さんは俺の頭を撫で始める。


「翔吾くんはすごいよ〜……真面目に勉強して本当にえらいね〜……」


「……なんか子供あつかいしてない?」


「ふふ、だって翔吾くんって可愛いんだもん」


学年一可愛い朱里さんに言われたくない。

というか男子に可愛いは褒め言葉なのだろうか。

気分を害するとかそういうわけじゃないけど褒められている気はしない。


「可愛いって……俺は男だよ?」


「ふふっ、それでも可愛いものは可愛いの。そんな翔吾くんから可愛い成分を摂取したいな〜って」


「俺に可愛い成分は皆無だ。摂取するなら別の人にしてくれ」


「え〜別の人のところに行っちゃっていいの?それは悲しいなぁ〜……」


朱里さんは悲しそうな声を出す。

そして俺は可愛い後輩男の子に抱きついて頬ずりしている朱里さんを想像してみた。

すると無性にムカムカしてきた。


「やっぱりやだ……他の人で可愛い成分摂取しないでほしい……」


俺が顔を上げるとさっきまで悲しそうな声を出していたのが嘘みたいにニヤニヤしながら俺を見下ろしている。

その瞬間俺は朱里さんにはめられたと気がついた。


「へぇ〜……翔吾くんは私に離れてほしくないんだ〜……」


「う……ま、まだ告白の返事ができてないから!だからまだ考える時間がほしいってこと!」


「ふふ、そういうことにしておいてあげるね」


俺は顔が熱くてしょうがなかった。

朱里さんの策略によって恥ずかしいことまで言わされてしまったのだから。

でもやられっぱなしは悔しいよな……

俺は朱里さんの胸元から顔を上げ逆に俺が朱里さんの首に手を回し抱きしめた。


「し、翔吾くん……?抱きしめてくれるのは嬉しいけどいきなりはドキドキしちゃうよ……」


「朱里さんが悪いんだよ……?俺に意地悪なことを言ってきたんだから……」


「そ、それは……翔吾くんが可愛すぎるのが悪いんだもん」


「じゃあ俺はかっこよくはなれなかったってこと……?頑張ったけどやっぱり俺には無理だったんだ……」


俺は少し悲しい声で言ってみる。

今は演技しているけどこれで『翔吾くんは可愛いからいいの』とか言われたらガチで泣く自信がある。

俺だって男だしかっこいいと思われたいのだ。


「し、翔吾くんはかっこいいよ!」


「本当……?」


「ほ、本当!頼りがいがあって優しくて……いつも私ばっかりドキドキさせられてる……」


朱里さんは顔を赤くしながら少し恥ずかしそうにモジモジして言う。

その仕草も言葉も全部可愛くて俺の顔が熱を帯びる。

や、やり返そうとしたのに引き分けに持ち込まれた……



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もうすぐテスト一週間前に入ります。

なので更新、コメントの返信が遅れる可能性がありますがご承知おきください。

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