第16話 勝ち筋と朱里さんがほしい物

「本当に勝負なんて大丈夫だったの……?」


宣戦布告事件から数時間経った今、俺たちは朱里さんの家で夕ご飯を食べていた。

ご飯は美味しいけど心の多くは不安が占めている。

音取に勝ちたかったけど朱里さんをこのような形で巻き込むつもりはなかったのだ。


「翔吾くんなら勝てると思ってるよ。でも、うぅ……ごめんね。翔吾くんを馬鹿にされてついカッとなっちゃって……」


朱里さんも勢い余って言ってしまったらしくシュンとしている。

どちらかと言うと勝負を挑んだことより俺に負担をかけてしまうことを申し訳なく思っている感じだ。


「まあ過ぎてしまったことはしょうがない……朱里さんはどうして僕なら音取に勝てると思ったの?」


「翔吾くんは一年生のときテスト落としたことあったでしょ?あれを職員室に届けたの私だったんだけど……」


そう言われて去年のことを思い出す。

確かに折れは去年不用心にもテストの答案を落とした。

大していい成績でもなかったしめちゃくちゃ焦って探したのを覚えている。

結局先生から渡されたんだけど拾ってくれたのがまさか朱里さんだったなんて……


「申し訳ないんだけど名前を確認するときに答案の中身がちょっと見えちゃったんだよね」


「ああ、うん。落としたのは俺なんだし名前を見るときに見えちゃうのは仕方ない無いと思う」


「ありがと。それでね。翔吾くんはすごく基礎はしっかり出来てるの!それに授業で当てられてもほとんど正解してる」


そんなこと気にしたこともなかったな。

俺は大して真面目な生徒じゃないからテストの見直しとか面倒くさくてしてこなかったし先生に当てられて間違えたらめちゃくちゃ恥ずかしいから授業だけは聞いていたということなんだけども……


「だからね。翔吾くんは点数の取り方を知らないんじゃないかなって思ったの」


「点数の取り方?」


「うん!」


朱里さんは大きく頷いく。

点数の取り方なんて正解するくらいしかないんじゃないのか?

まさかカンニングしろとでも?


「翔吾くんって普段どうやってテスト勉強してる?」


「え?普通に教科書使って勉強してるけど」


「課題の冊子は?」


「ぱぱっと終わらせて終了」


課題はテスト週間に入ったらすぐに終わらせるようにしている。

それで教科書を見返したりして勉強をしている。


「やっぱりそっかぁ……うん、わかったよ」


「え?今ので何がわかったの?」


「じゃあまずは1つ目のアドバイス!テスト期間中に家で勉強する時に暗記科目以外は教科書開かなくていいよ」


「なんで!?」


教科書を使って授業をしているのだから教科書を使ってテスト勉強するのが当たり前じゃないのか!?


「もちろん教科書にしか載ってない情報がテストに出ることもあるよ。でもそれってすっごく少ないんだ〜!必要なのは対応力、いろんな問題を解いて初見の問題でも問題なく対応できるようにしないといけない。教科書は授業で一回解いてるんだから初見にはならないでしょ?」


「確かに……」


「この家に問題集たくさんあるからたくさん解いちゃお!教科書から出そうなところは私がまとめておくから!」


確かに俺は初見問題を意識して勉強したことはあまりないかもしれない。

ただ教科書を見直してどんなものがあったか確認するだけだった。

学年一位の朱里さんに言われるとめちゃくちゃすごい勉強法に思える。

実際効果はあるんだろうけど。


「わかった。俺の方でも本屋で問題集を探してみるよ」


「うん!そうしてみて!」


そうして俺達は食事を終えていつもならお茶を飲んでまったりするのだが今日は違う。

今から試験勉強のスケジュールを立てるのだ。


「電車で英単語をやるとして……翔吾くんの得意な教科は?」


「論理国語はいけると思う。一年のときは一桁必ず入ってたし。逆に数学が大の苦手」


「なるほど……じゃあ数学多めでいこうね。暗記系はどうかな?」


「勉強すればある程度取れるって感じかな」


国語だけは得意だったけど数学がとことんダメだった。

他には特筆するところもなく普通って感じ。

前回のテストの点数を伝え俺のそれぞれの教科に対する苦手意識を朱里さんに伝えていく。

全部が終わった時朱里さんは大きく頷いていた。


「これなら大丈夫そうだよ。国語が学年順位一桁っていうのがすごくありがたいね!」


「俺数学できるようになるの?本当に苦手なんだけど……」


「大丈夫!この朱里先生に任せて!」


なんか自信あるみたいだし信じるとしよう。

俺はできることをひたすらやっていくしかないのだから。


「あっ!そうだ」


「どうしたの?」


「音取と勝負するんだったらさ、私達にも勝ったらご褒美がないとおかしいよね?」


「まあそれはそうだね」


「だったらさ〜!───をもらうのはどうかな!?」


「えっ!?そんなのあいつが持ってるの?それとも払わせるってこと?」


朱里さんが提案してきたのは学生には中々痛い出費のものだった。

でももらえるなら絶対にほしい。


「絶対に持ってるよ!今日友達に見せびらかしてるところ見たもん!明日すぐに言えばまだ絶対に持ってるはず!」


「な、なるほど……」


朱里さんも例に漏れずほしいらしく少し興奮気味だった。

絶対に……勝たないといけないな。



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この賭けは暗殺教室みたいなイメージ。

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