第6話 魔王として

 転校なども特に何事もなく済んだ。覚醒者ってだけで俺は目立つが、同じクラスに他の覚醒者が3人いて、その人たちのおかげで俺は他生徒にもまれずに済んだ。クラスカーストのトップに守られる形である。ありがてぇ。


 ちなみに彼女たちとは友達になった。連絡先も交換したし、今度4人で遊びに行く予定もできた。


 すごく楽しみである。


 と、まぁ学校の話はこれぐらいにして。


 今日は久しぶりにダンジョンに来ている。と、いうのも配下からの連絡? というか思念があったのだ。


 魔法陣で帰ってくれば済む話だと思うのだが、なぜかお呼び出しである。


 ほぼ魔物が全滅したダンジョンを歩き、最深部までやってきた。


 今召喚している配下は全員このダンジョンにいるからほんとに魔物がいない。


 湧くたびに速攻倒してるんだろうなぁ。


 最深部では3体の配下を中心に俺の配下たちが左右の壁側に跪いて控えていた。あ、3体ってもはアインとツヴァイ、それにこないだ配下になったファングウルフ(?)だな。


 どうやら真ん中の3体の進化の儀? らしい。なんやそれとも思ったが俺は3体の進化を許可した。


 すると、今までにないくらいまばゆい光を放ち、3体の進化が始まった。


 まばゆい光が目に直撃し、うずくまっていると何やら声が聞こえてきた。


「うっしゃー! ついにここまでこれたぜ!」


「うるさいぞ貴様。どなたの御前と心得る」


「……魔王様。私たちの、主君」


 ……目の前に3人の全裸の人間がいるように見えるのだが。光のせいで目がおかしくなったか?


 いや、でもなんか一人だけ犬のような耳が生えてる。もしかして……。


「えーっと? 君たちは?」


 俺が声をかけると、3人が同時に膝をついて俺に礼をした。そして、何も言わなくなった。


「な、なんかしゃべってくれると嬉しいんだけど」


「は! 発言の許可、まことに光栄に思います。私はアイン、そしてこちらがツヴァイです」


 一番最初に話始めたのは赤い髪の全裸の男性。どうやらアインが進化した姿? っぽい。身長180cmぐらいの細身イケメンで普通にうらやましいけど全裸なのがな。というか最初熱血系みたいなしゃべりかたしてなかった? そんな感じの話方もできるんだね?


 そして紹介された黒髪ロングの女性がツヴァイらしい。スケルトンから唐突に進化しすぎじゃないか? 曰く、霊体を進化させた結果らしい。


 そして最後。ケモミミの女の子だ。この子はさっきから何も言ってない。少し声をかけてみようかな。


「君は? って名前ないよね。ドライっていう名前をあげる」


 名前ないとわかりにくいしね。すると彼女はすごい勢いで顔を上げて、またすごい勢いで頭を下げた。


「大変ありがとうございます! 魔王様に永遠の忠誠を!」


「「魔王様に永遠の忠誠を!」」


 彼女……ドライがそう口にすると、アインとツヴァイも声高に宣言した。


 ……魔王の自覚もってがんばろ。


 まぁそれはそれとしてこの子たちの服だよな。どうしたもんか。


「いったん魔法陣の中入ってもらってていいかな。君たちの服を買おうと思うんだ」


「「「は!」」」


 俺が声をかけると3人は魔法陣の中に消えていった。


「他のみんなはレベル上げに戻っていいよ! めったにないと思うけど人に会ったら逃げること! いいね?」


 この言葉で他の配下たちは一斉にボス部屋を出ていく。さて、俺も服を見に行こうかな。


◇◇◇


 帰ってから思ったんだが、そういえば俺には服を選ぶセンスがないんだった。


 時間をかけて選ばず、まずは適当な服を買って、そこからは沙代里に選んでもらおう。


 そういうわけで適当なシャツとズボンを3人分買って3人にはそれを着てもらおう。


「どう? きつかったりしない?」


「はい。まったく問題ないですね」


 アインとツヴァイは問題なさそうだったが、問題はドライである。ドライはしっぽがあって、うまくズボンが履けなかった。


 というわけでズボンに即席の穴をあけて着てもらった。


「お手を煩わせてしまい申し訳ありません……」


 ドライは本当に申し訳ないと思っているようで、耳としっぽがへたれていた。


「いや、気にしないで。これで大丈夫そうだし。後は妹が帰ってくるのを待とう」


「かしこまりました……」


 ドライが本当にへこんでいる。なんとかしてくれ妹よ。


 と、そんな願いが通じたのかちょうど妹が帰って来た。


「ただいま~って誰!?」


「沙代里、お帰り。スキルの力でできた私の配下たちです。はい、自己紹介して」


 まずは一番最初の配下、アインから。


「初めまして、沙代里様。私はアインと申します。私にとって貴方は魔王様の次に優先すべき存在です。なにかあればお申し付けください」


 最初に「うっしゃー!」とか言ってたの本当にこいつか? あまりに完璧な所作とあいさつである。


 そして次はツヴァイの挨拶だ。


「初めまして沙代里殿。拙者ツヴァイと申します。拙者もアインと同じく、沙代里殿の刀となりましょう」


 古風だな。でもまぁそんな感じはしてたし納得だな。


 最後、ドライだな。


「初めまして、沙代里様。私はドライと申します。このような外見をしているので街中まで警護に当たることはできませんが……私も沙代里様のことはお守りしたいと思っております。何かあれば、ぜひお申し付けください」


 アインに似てるけど、完璧な挨拶だな。一般教養とか学んでないはずなんだけど。あ、俺の記憶から知識引き出してるんだっけ?


「んーと? どういうこと?」


 沙代里はいまだに混乱している様子。


「まぁ私たちが王族になったとして付き人ができたみたいなそんな感じ?」


「あー……なるほど? ……服、新しいの買おうか」


 さすが我が妹。3人を見て俺が何をしてほしいのか察したらしい。助かるぜ。


 


 

 

 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

配信事務所、経営するは魔王軍。 ニア・アルミナート @rrksop

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ