第11話 俺が強くなったんじゃないか? (ざまぁ回)

「何で当たらねえんだよ!?」

 

「ダンジョンにいるモンスターに比べて、お前は遅いんだよ」

 

 俺がそういった瞬間、涼介は容赦なく俺の顔面に向かって拳をぶつけてくる。

 

 だが俺はそれを受け流すように躱し、逆に俺の拳で佐々木の顔面に打ちつけた。

 

 すると佐々木は簡単に吹っ飛び、床を転がる。

 

「ど、どうなってやがる!?」

 

「さあな、俺が強くなったんじゃないか?」

 

「ふざけんじゃねえ!」

 

 そんな俺の言葉に佐々木はキレたのか、俺の身体を思いっきり蹴ってきた。

 

 だが俺はそれを受け止め、防御する。

 

 すると俺が防御をしたことにブチ切れたのか、今度は俺の髪の毛を掴んできた。

 

「くそがあ!」

 

「あなた達何してるの!」

 

 すると一人の女性が歩いて来る。

 

 それは俺の幼馴染である香月心梨だった。

 

 彼女は長い黒髪を後ろで縛っており、美人な顔立ちで背も高い。

 

 そんな姿をした香月が俺と佐々木の方へ歩いてくる。

 

 そして香月は俺を庇う様にして佐々木の前に立ちはだかる。

 

「佐々木君、一体どういうつもり? 何でこんなに傷だらけの翔がいるのか理由を教えてくれないかしら」

 

「そ、それは……」

 

 佐々木は香月の顔をみて焦った表情を浮かべている。


 やはり学校で人気の高い香月には口答えが出来ないみたいだ。

 

「佐々木君は学生よね、あなたの行動一つで人生が狂う事を理解してるの?」

 

 いつも明るく優しい口調の香月が珍しく強めの口調で佐々木に注意する。

 

 すると佐々木は香月に萎縮するようにして黙り込んだ。

 

 流石に学校で人気の香月が相手では分が悪いと思ったのだろう。

 

 すると佐々木は逃げる様にその場から立ち去ってしまった。

 

「全く、あの男香月は学校であんな事して何を考えてるのかしら。もしかして翔に嫉妬でもしたのかしら? だとしたら子供ね……」

 

 そんな佐々木を呆れた様子で見る香月。

 

 そして俺の手を引っ張り、保健室へと連れて行くのだった。

 

「大丈夫? どこか痛むところはない?」

 

 そう言って香月は俺の手を優しく握ってくる。

 

 香月からは少しだけ温もりを感じ、それとともに安心する匂いが漂ってきた。

 

 幼馴染である香月は、もはや俺にとっては姉のような存在で、時には彼女として意識する事もある。


 だがやはり気心が知れた仲という事もあり、ドキドキというよりかは落ち着くような気持ちだ。

 

「全然大丈夫、香月のおかげで痛みもほとんど引いたからな、ありがと」

 

「もー、あなたって本当に危なっかしいんだから。傷もまだ完全には癒えてないし、今日はゆっくり休むのよ」

 

「そうしたいんだけどさ、俺今日ダンジョン攻略があるんだ」

 

 俺はスマホを取りだし、これからの予定を香月に見せる。

 

 すると香月はため息を吐いた。

 

「あんたねえ、まだそんな危険な事してるの? ダンジョンは遊びじゃないって何度も言ったでしょ?」

 

「それはわかってるけどさ、ダンジョン攻略は俺の夢だったからなー」

 

 香月はまたため息を吐き、少しだけ悩む素振りを見せる。

 

「とりあえず、今日は家に帰らなきゃダメよ? 」

 

「分かった、そうするよ」

 

「絶対だからね。後、困ったら私に頼ること、わかった?」

 

「はい」

 

 俺は渋々うなずきながら返事をする。

 

 すると香月は安心したのか、笑みを浮かべた。

 

 そして俺らは学校を出て、それぞれの帰路につくのだった。




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