2-2

「白穂神――!」

 

 小さな神の体を受け止める。 

 屋代の魔法によって、支配から解放された白穂神が力なく手足を投げだした。重さをまるで感じない小柄な神を胸にかき抱き安堵したのも柄の間、すぐにその顔を焦燥に染めた。


「白穂神っ、大丈夫か? 意識はあるかっ?!」

「だい、丈夫ですぅ」


 焦点の合わない瞳が屋代に向けられる。一瞬前まで苦痛に歪んでいた顔には僅かな微笑みが見えるが、その表情に力はない。まるで末期の病人が他者を気遣うがごときその様子に、屋代の血の気が引いた。


「や、やっぱり何か変なところを消したんじゃ――」


 初めて使う魔法、しかも記憶を消してしまうという危険な魔法は、白穂神の大事な記憶まで消してしまったのではないか。刷り込まれた偽の認識だけを狙ったはずだが、もしや誤って白穂神本柱の部分まで影響を及ぼしてしまったのではないだろうか。もしそれが、屋代との思い出だとすれば―――。

 熱くなっていたはずの体が急激に冷めてしまうほどの悪寒に体を震わせた。


「心配ない。権能の使い過ぎで疲れているだけ」


 と、そんな屋代にかけられる声があった。白穂神を庇うようにきつく抱きしめた屋代が顔を上げると、周囲の状況を無視するのんびりした動きでファナディアが歩いてきた。


「ソーサーさん……」

「そんなに泣きそうな顔しなくても平気。神様の権能も魔力を消費して発動されてる。だから、使いすぎれば疲弊もする。神様はこれまで権能も分からなかったって言ってたから、魔力を消費する経験に慣れてないだけ」

「こ、このまま消えたりはしないのか……?」


 無意識に込た力で白穂神を圧迫する屋代。苦しそうに呻いた白穂神の声に慌てて腕を解く。


「問題ない。安静にしていれば次第に回復する………はず」

「そうなのですよぉ。屋代は心配性でぇすね」


 屋代の胸の中、白穂神が大丈夫だと伝えるように軽く動いた。緩ませた頬は笑っている風にも見えるが、しかしその口調はどこか安定を欠いていた。いつもよりもさらに間延びしているというか、どうにもフワフワしている。声色にも張りがないところも不安を冗長させた。


「………よく見る。それは大好きな飼い主に撫でられて喜ぶ猫のもの」

「だれが犬ですかぁ」


 ファナディアの呆れた眼差しを向けられた白穂神が抗議の声を上げる。が、言葉とは裏腹に屋代の胸に顔をこすりつける様は猫そのもの。説得力は皆無であった。魔力という、根幹をなす燃料を大量に消費したためだろう、自意識を取り戻したとはいえ疲労感はそのまま残っている。力が入り切っていないのはそのためだろう。

 ひとまず消えてしまう兆候が見られず、どころかご満悦な様子の白穂神に、屋代も止めていた息を吐いた。


「ソーサーさん、怪我は?」

「全くない。キミこそ体調に変化はない? 初めて魔力を消費した。体に不調が出てもおかしくない」


 問われた瞬間、景色が歪んだ。


「っ、あ」


 反射的にぐっ、と尻の穴に力を籠めた。後ろに倒れようとする半身を立て直したものの、盛大に顔を強張らせた。幸い一瞬だったため白穂神には気づかれなかったようだが、こちらを見つめていたファナディアには気づかれたようだ。顔中から汗を吹き出した屋代に眉を寄せている。


「これ、は」

「疲れているのはキミも同じ。むしろ、そこの神様よりも更に酷い。重症だった体の修復に加えて魔法も使った。もともと魔力が少ないから限界が早い。今すぐ体を休めるべき」


 これまで自覚していなかったが、ひどく疲弊していたらしい。ファナディアに指摘された屋代は、目眩を覚えた脳を叩き起こすため頭を振った。

 朝から眷族と戦い、死にかけ、そして神様を止めたのだ。間違いなくこれまでの人生で最も激動の一日だった。加えて、祈相術すら使えないほど魔力の少ない屋代が、命を繋げるためとはいえ、体を直し、魔法を使った。いつ意識が飛んでしまってもおかしくない程度には、肉体も精神も疲れ切っていた。

 今すぐ布団で眠りにつきたい衝動が心の底から湧き上がってきたが、しかし、その欲望に身をゆだねるわけにもいかない。

 周囲を見渡せば、白穂神によって破壊された街が広がっている。


「………まだ、やることがある。人が巻き込まれてるかもしれないし、助けも呼ばないと、な」


 白穂様を助け出せた。それはもろ手を上げて喜ぶべきことであるが、ここで人死にを出そうものならばすべて台無しだ。ここに来るまでにも、倒れた神薙、巫女たちを大勢見た。彼らの救援も行わなくてはいけない。


「なにより……短剣のこともある」


 ファナディアが持つ、刀身の短い剣に視線を移した。細かな装飾が施されている柄は、間違いようもなくさっきまで白穂神に刺さっていたものと同じものだ。神を操るなど、神を奉る一人間としては嫌悪を覚えざる負えない。

 眉を広めて渋い顔つきになった屋代の前で、ファナディアも気になるのかまじまじと短剣を観察している。


「何か分からないか? ソーサーさん」


 一体だれが、何のために打った剣なのか。

 魔力を見通す眼鏡といい、屋代を魔法使いへと変貌させた種といい、聞いたこともない道具を持っていたファナディアであれば、実物から何か読み取れるのではないか。そう期待して水を向けるが、ファナディアは静かに首を横に振った。


「私はその道の専門家じゃない。けど、こういう物に詳しい人は何人か知っている。まずはその人たちに確認する」

「どういう扱いになるんだろうな、その剣」


 神様を操るなど、とても世間に公表できる代物ではない。下手な場所に持ち込んで調査しようものなら数分で姿を消してしまいそうだ。


「それにしても、不思議な短剣……」


 ふと呟かれたファナディアの台詞に、屋代は頬を震わせた。


「な、なにが不思議なんだ? まさかソーサーさんも暴走するとか止めてくれよ?」


 思わず声が引きつる。白穂神でさえ、操られた結果街が崩壊したのだ。持っていた権能に依るとはいえ、その白穂神を終始圧倒したファナディアが暴走したとなると、もはや手が付けられない。まともに動くことも出来ない屋代など、一瞬後には肉塊になっていそうだ。

 ごみのように丸められた己を想像して顔を青くする屋代に、ファナディアは、それはない、と手の中の短剣をもてあそぶ。


「温かい。まるで人肌みたいに、熱くもなく冷めてもいない。それに、これは――」


 表情を動かすことなく、僅かな困惑を滲ませたファナディアが、まるで何かを聞き取るよう短剣に耳を近づけようとして。

 ―――頭上から振り下ろされた刃にその場を飛び退った。


「ッ」

「ソーサーさん!?」


 ピッ、と鋭い刃にかすめられたファナディアの髪が数本、本体を離れた宙を舞った。半眼をわずかに見開いたファナディアが瓦礫をけりつけ後方に跳躍した時には、襲撃者が大地に降り立つところだった。


「誰?」


 誰何の声を上げたファナディアが、屋代のすぐ隣に着地する。偶然ではなく、動けない屋代たちを庇うためだろう。重心を落として警戒を現わすファナディアとは対照的に、襲撃者はどこか余裕を伺わせるようなゆっくりとした動作で態勢を整えた。その全身は黒い布で覆われ体格すら判別できない。鼻まで覆っているのは人相を隠すためだろう。ただ唯一、露出している顔の上半分、その鋭角な目じりから男だと判断できた。


「返してもらったぞ」


 一方の手に長剣を携えた襲撃者の言葉に、真っ先に反応したのはファナディアだった。眉を寄せた顔からは悔しさを滲ませている。何があったんだと、屋代の覚えた疑問が解消されたのは、襲撃者が奪った短剣を見せつけるようにかざした時だった。


「お前!」


 立ちあがる。走りだす。取り戻す。

 その行動を思い描いた屋代だったが、体は反応してくれなかった。まるで壊れた玩具のように震える下半身は、どれだけ力を籠めても鈍い感触しか返ってこない。


「それを返せ!」


 事件の物的証拠。白穂神を苦しめた原因。奪われたものを取り返せと頭はがなり立てるが、吠えることしかできない屋代は歯をむき出しにする。代わりとばかりに目を白黒させる白穂神を抱きしめて、怒りの眼差しを送り付けるが、襲撃者は何の痛痒もないとばかり布の裾を揺らすだけだった。


「返すだと? 馬鹿を言うな。これはもともと俺のものだ。取り返して何が悪い?」

「何っ?」


 黒い襲撃者の言葉に目を見開くが、ふと屋代の脳裏に初代校長の言葉がよぎった。

 そういえば、誰かにもらったと言っていた。では、あの短剣は襲撃者のものだったというのか。


「……それなら余計に話を聞きたい。こんな場所じゃなくて、もっとゆっくりおしゃべりできる場所で」

「魅力的な誘いだが、あいにく予定が詰まっている。子供にかまっている時間はない」


 ファナディアの誘い文句を、襲撃者はきざな仕草で答え返した。やけに堂に入った動きだが、今気にする場合でもないかとファナディアに視線を送る。


「残念だけど、嫌でも構ってもらう――――大丈夫、殺しはしないから」


 あれ、もしかしてだがファナディア怒ってる? 抑揚のないその声色に、屋代は軽く驚いた。

 表情からはまるで分からなかったが、どうにも、襲撃者に短剣を奪われて頭にきているようだ。短剣が奪われたことではなく、短剣を奪われたことに対する苛立ちか。平坦な顔とは裏腹に、握りしめられた手が彼女の心情を伝えてくる

 それでも余裕が崩さない襲撃者に、屋代の脳が警戒を促してくる。神々を圧倒したファナディアを見ていなかったのか? それとも、見たうえで余裕を持っているのか。

 襲撃者がどこまで状況を見ていたか分からない。だが、もしもすべてを把握したうえでファナディアの前に立っているのなら、それはつまり、襲撃者はファナディア以上の実力を持っているということになる。

 それに思い至り、見上げてくる白穂神に言葉をかけることさえ忘れ、屋代は息をのんだ。そうして、反射的に見たファナディアの顔は―――何一つ動揺していなかった


「………やれやれ。俺は短剣を回収に来ただけなんだが」


 襲撃者が首を振って戦う気はないと主張する姿を、ファナディアはその場から観察している。襲撃者の言葉を信じたというより、襲撃されたという事実を重く見たからだろう。どういった手妻か知らないが、屋代はもとよりファナディアにも直前まで気づけないほどの隠密性。それを見破るまではむやみに自分から動かないと判断したのだろう。

 それは、けれど致命的な判断ミスだった。


「掛かってこないというのであれば俺は引かせてもらう」


 言うなり、短剣を腰に差した襲撃者が瓶を取り出した。細長いその透明な瓶が傾けられ、中の液体が地面に赤黒い染みを作った。


「っ」

 

 それを見たファナディアの反応は迅速だった。瞬きの間に距離を詰め、ほんの数歩で襲撃者の喉元にまで迫る。あと数センチ、おそらく一呼吸もあれば届く距離。。


「ではな」

 

 襲撃者は地面の中に姿を消した。ほんのわずかな差で触れることが敵わなかったファナディアが、飛び込んだ勢いを殺せず襲撃者のいた場所から離れてしまう。地面に土ぼこりをたてて止まった頃には、黒い布は影も形もなく、地面に広がった染みさえ残っていなかった。


「消えた……? いや、地面に潜ったのか……?」


 目を凝らして観察するが、穴のような跡などなく、ただ、散乱していた瓦礫の破片がそこだけ綺麗になくなっているのが見えた。痕跡と呼べるのはその程度、実際に対峙していなければ襲撃者がいたことさえ疑う奇妙な沈黙が横たわった。


「やしろぉ?」

「あ、ああ。ごめん、白穂神様。大丈夫だったか?」


 ですぅ、と熱に浮かされたような白穂神の返事を聞き流しながら、屋代はキツネにつままれたような面持ちを浮かべた。


「何だったんだよ……」


 ほんの少し前まで覚えていた達成感はすでに無くなっていた。するりと手柄が抜け落ちたような、あるいは、勝利をかっさらわれた敗北者のごとき虚無感に最後の気力を持っていかれた屋代は、大きなため息をついた。


 ◇


「あの襲撃者が何者だったのか。何を目的にしていたのか。神様を操った短剣の出所はどこか。結局何一つ分からなかった」


 短剣を奪われるという己の失態を思い出してか、不満そうな口ぶりでファナディアが述懐する。


「私がキミの訓練に付き合うのはそういう理由。キミたちと一緒に居れば、またあれが襲ってくるかもしれない」


 その可能性は低いけど、とも付け加えるファナディア。

 白穂神を狙ったのは初代校長の意思だろう。当人もそう自白していたし、なにより、襲撃者と白穂神との接点がなさすぎる。もしも執着しているのであれば、短剣を奪った際に何かしら反応を示していてもおかしくなかった。記憶を失っている白穂神のこと、可能性といえば確かに関りがある可能性もあったが、白穂神が以前の記憶を失ってから百年以上がたっている。通常の人間ではまず死んでいるだろう。つまり、仮に関りがあったとしても、当人同士であることはないはずだ。ファナディアのいう通りこれ以後、白穂神が狙われることはほぼ皆無だろう。


「それでも手がかりがない現状、唯一の接点がキミたちだから。悪いけど、私に付き合って」


 襲い掛かって来るなら好都合。のこのこと現れた黒衣男を今度こそ捕まえてやると、ファナディアが気合を入れる。


「俺は構わないが……もうちょっと手加減してくれないか?」


 ぼんやりと、上下さかさまになった世界で見るそんなファナディアに一言。

 背中を地面に、尻を上に。

 まるでどこぞの漫画じみた格好を強制された屋代は、押しつぶされた声色でモノ申した。


「え、っと、ごめんなさい?」

「……………いや、俺にとっても貴重な経験だからいいけどな」


 泣き言は言いたくないのだが。しかし、こう何度も投げられ倒されていると心が折られそうだ。

 体を横たわらせて惨めな格好から脱出を果たした屋代は、盛大に息を吐いて立ち上った。


「これで何敗目だっけ……あ、全敗だったか」


 めくれ上がった地面、飛び散った土埃。始める前より荒れた庭を見渡した屋代が肩を落とした。全戦全敗。それが今日まで屋代とファナディアの訓練結果だ。ファナディアの提案から始まった二人の訓練は、今日まで屋代に無様な格好をさせる会へと低落している。このまま続けると本当にサンドバック屋代と名前が付きそうだ。


「キミは魔法使いになって日が浅い。もっと魔法に慣れれば結果も違ってくる」


 首を振って、だから落ち込むことはないと励ましてくるファナディアを見やる。

 服のあちこちを汚し、体中に打撲の跡を刻まれた屋代と違って、ファナディアの服には汚れ一つとてない。ほんの少し汗こそかいているが、平常の呼吸は彼女が取り立てて疲労していないことの証左だろう。


「魔法も使ってない人に言われてもな……」


 自らとの差をまざまざと見せつけられた屋代は遠い目にならざる負えなかった。訓練内容は至って単純、屋代が攻撃し、ファナディアがそれを受け流すというもの。そもそも身体能力の劣る屋代は魔法を使ってようやく、といったところなのに、それを平然と受け止め、あるいは投げ飛ばすファナディアが異常なのだ。


「……」


 無意識にファナディアの腕をまじまじと見てしまう。疑問符を浮かべたファナディアから目を逸らして、己の体を見下ろした。

 どう判断しても、屋代の方が力強く見える。さほど筋肉がついているわけではないが、それでも少女の二の腕に比べれば太い方だ。だというのに、平均よりも小柄なファナディアはあっさりと屋代を投げ飛ばし、地面に転がす力を持つ。それでも手加減している結果なので、体を循環する魔力がどれだけ人体に影響を与えるのか、この身で教えられた気分である。


「なんていうか、戦えば戦うだけ自信が無くなっていくんだが。ちゃんと訓練の成果は出てるのか?」


 例えばこれが祈相術の練習であれば、その成果を実感できる。昨日まで知らなかった型、手や足の形など覚えていることを自覚できるし、腕や腰の稼働も滑らかになっていく。しかし、ただ地面に投げられ続けるこの訓練に成功体験は皆無だ。攻撃を当てられる気さえしない。


「キミの場合動きが直線的すぎる。相手と戦うなら、相手を騙すことも覚える必要がある」

「いや、そもそも対人戦なんて想定したことなかったし」


 屋代が目指していたのは神職だ。断じて格闘家ではない。


「でも魔法の発動は素早くできるようになってる。訓練の成果は出てる」

「まぁ、慣れて来たな。けど、効果が見えない……というか、当たってないから本当に効果が出るのか分からないだろ」


 屋代の魔法は記憶を操る。相手の記憶を消すことはもちろん、別の記憶を植え付けることも可能ではあるが、そもそも攻撃が当たらないので実際に効果があるのか不透明だ。せめて目に見えれば実感しやすいだろうに、と、己が魔法に文句を呟く。


「それは仕方がない。キミの魔法は使い方を誤れば容易に人を壊す。たとえその人に攻撃出来なくても、周りの関係そのものも混乱させてしまえる。傷つけるだけの攻撃よりよっぽど脅威。だからこうして訓練してる」

「……………」


 人を危険生物か何かのように言ってくれる。

 口をへの字に曲げた屋代は、だがファナディアの言っていることは事実であった。ありえないことだが、もしも屋代がそこらじゅうの人に魔法を使った場合、それこそ屋代を生涯の友だとでも思いこませたならば、それだけで屋代は今後暮らしに困らない生活を手にするだろう。誰からも愛され、受け入れられる存在と化してしまう。屋代以外の、それまで大切に思っていた親兄弟さえ邪魔者扱いとなり、その人の生活は狂い、いつかその人生さえも屋代のために使うようになる。そういう危険性を孕んでいるのが屋代の魔法なのだ。


「使うな、とは言わない。その魔法はキミそのものであり、キミという存在を象徴するもの。だから、必要だと感じた時はためらわず使えばいい。けど、その力に驕って他の人たちを虐げるようなら、私も、私のやり方で責任を取る」


 その台詞が意味するところは、屋代が調子に乗って魔法を乱用するなら顔の形が変わるまで殴ってあげる。泣いて謝っても許さないぞ? というファナディアなりに脅迫である。


「やらないって。天狗になれるほど己惚れられるわけもない」


 ファナディアにいいように扱われている現状で、どうして鼻を伸ばせるだろう。魔法が使えるようになった当初こそ興奮しすぎて終始浮かれた気分だったが、何もできずに倒される日々のせいでそんな気はとっくに失せた。今はただ、ファナディアにもてあそばれないよう一刻も早く体の使い方を覚えるだけだ……ついでに、これ以上庭を崩されたくない。


「2人とも―ッ、ご飯の時間なのですよぉっ!」


 これからのことを考え、憂鬱な思いにとらわれた屋代だったが、家の中から白穂神が呼びかけてきた。ふと空を見上げると、太陽はすでに顔を出し切り、周囲を明るく照らしている。話に夢中になりすぎたせいで、いつの間にか完全な朝となっていた。

 ファナディアと顔を見合わせ、どちらともなく腹を鳴らした。

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