2-4

 休憩と言っても、好き勝手にしていいわけではない。あくまで実習中、神職を目指す者として活動中なので、それなりの節度を持って休まなくてはならない。休憩時間だからと遊びに行くようなことはご法度であり、ましてやどこかの神が悪戯を仕掛けているような情勢に、むやみに外を出歩いて怪我でもすればなら目も当てられない。

 というわけなので、屋代たちはごく真面目に店の奥で昼食をとることになった。


「あ、顎痛い…」


 経費削減か、はたまた余計な部分にはお金をかけないのか。店の奥、巫女たちの休憩室として設えられた一室で、量産品のスチール椅子に座った屋代は顔を歪めた。無意識に気を張っていたのか、座った瞬間急に顎が痛みを上げだした。これまで味わったことのない窮状に、屋代は耳たぶ辺りを撫でさすった。


「どうしてサボってたアンタが痛がってんのよ。こういう場合は逆でしょうが」


 対面に腰かけた波嬢は不服の表情をありありと浮かべた。屋代と違い彼女は特に痛がる様子もない。幼い頃から祈相術のために何万、何十万回と多様な祝詞を唱えてきた彼女は、たかが数時間程度で根を上げる軟弱な顎ではないようだ。


「仕方がないさ。慣れないことを言い続けたんだ、体に不具合が生じてもおかしくない。僕も顔が引きつりそうだよ」


 そう苦笑を漏らした征徒は頬のあたりが気になるのか、手で揉み解している。

 屋代は取り出した昼食を机に置きながら、唇を波打たせた。


「はぁ、口開けるのも辛いぞ」


 こうして言葉を口にすることさえ痛みを覚える。波嬢ほどではないが、それでも祝詞を唱えた回数はそれなりにある屋代が疲労しているのは、やはり慣れていないからなのか。思わずこぼしてしまう愚痴でさえ痛みの原因だ。


「休憩は長めにとれる。ゆっくり食べて午後の英気を養おう」

「っていっても、やることは変わらないだろ……」


 嘆息しながら弁当の包みを開けた。白穂神様手製の2段重ねだ。定番の卵焼きや鶏肉のから揚げ、出汁の効いた根菜といったおかずをこれでもかと詰め込まれた、栄養バランスにも配慮された逸品である。


「相変わらず屋代の弁当は凄い……」


 横目でそう漏らした征徒の前にも、手作りだと見て取れる弁当が鎮座していた。こちらは屋代のものと比べ一段しかなかったが、それでも丁寧に作られていることは見て取れた。少量のおかずがまんべんなく配置され、煮崩れ一つとてない。作った者の律儀さゆえか、しっかりとおかずの仕切も施されている。


「それだけで足りるのか? なんならおすそ分けするぞ」


 さあ持っていけ、と弁当を差し出すが、征徒はやんわりと首を振った。


「しっかり夕食まで持つように考えて作ったから、これくらいの量で充分さ。それに屋代のお弁当は、その、少しばかり特別だからね。分けてもらうのはちょっと…」

「あーまあな。けど、白穂神様は気にしないと思うぞ?」


 そもそも神様が作った弁当というだけでも貴重品、いや珍品扱いされてもおかしくない。ご利益があるわけではないが、味は悪くないし、量も胃袋を満足させるほど多い。なにより白穂神が作ってくれたというだけで、屋代にとってはありがたい代物である。

 食材の命と作り手である白穂神に感謝を捧げておかずを一口。


「うん。美味しい」


 野菜に染みた出汁がいい味を出している。

 痛む顎を気遣っていつも以上に時間をかけて粗食すると余計に味わうことになり、結果として楽しみが増すという不思議な体験。

 頬を綻ばせる屋代の隣では、何やらメモを取りながら征徒が食事に勤しんでいた。


「次に作るときの調理法を考えてるんだ」

「そ、そうか……」


 食べてる時くらい考え事などしなくていいのでは。というか、やっぱりそれは自炊? 家の手伝いくらいはしている屋代だがコト食事に関しては一切関わっていないので、つい猫背になってしまう。


「もしかして波嬢のそれも自作……な、わけないよな?」

「どういう意味よそれ」


 顔を歪めながら応えた波嬢の弁当は、屋代と同じくらいの量があった。しかし、何より特徴的なのはその中身だろう。四季折々の産物、高級食材をふんだんに使った料理の数々は光り輝いているようにさえ見える。黒々とした小粒のキャビアを口に運び、笑顔一つ浮かべない波嬢に戦々恐々とする。


「すげぇ」

「うん、確かに」


 一体弁当一つにどれだけ金銭をかけているのか。波嬢の一食で屋代の食事の何日分かを賄えてしまえそうだ。羨ましいという感情よりも、そんな弁当を平然と平らげていく波嬢の度胸に感心する。


「……何よ。そんなに見ても上げないわよ。だいたい、こんなもの珍しくとも何ともないでしょう? いつも食べてるものだし」

「へぇ、これをいつも……」

 

 だからあまり嬉しそうではないのか? せっかくの食事だというのに、不満顔を隠そうともしない波嬢は贅沢者なのだろうか。

 ちらりと自分の昼食に目を落とし、そこに詰め込まれた料理を見る。変わった食材を使ったわけではないごく普通の、しかし神が作ってくれた特別な品だ。

 お弁当の価値は食材の値段にあらず。そう頷いて屋代はさらに米をかきこんだ。


「そういえば、この後の予定ってどうなってるんだ? いや、今日のじゃなくて明日以降の。まさかこのままずっと水を売り歩くわけじゃないよな?」


 もしそうであるならば、声を荒げることも辞さない。いや、これも神職の務めというのであれば涙を呑んで働くが、しかしずっと販売員の真似事をしていると自分が何者なのか分からなくなってしまいそうだ。もう少し、らしい仕事をしてみたい。

 一足先に食事を終えてのどを潤していた征徒は、思い出すように幾度か瞬きをした。


「今日は一日中販売員だけど、明日からは境内での作業が入っていたはずさ。別の班がやっている境内の掃除、設備の管理。さすがに祭事といった重要ごとには携われないけど、おそらく段取りくらいは教えてもらえると思う」

「おおっ」

「あとは……境内でのお守りなどの販売」

「またか!?」

 

 いや、それもまた仕事。災害などめったに起こらないにせよ、水に関わる禍から身を守るという意味でもお守りは重要だ。実際、ここの店舗でも取り扱っているものの一つだ。

 掃除、設備管理、そして祭事。どれも神職にとっては欠かせない業務であり、今から知れるというのは嬉しい限りだ。征徒から語られた予定に屋代は目を輝かせ、未来の神薙姿を想像する。


「よし、やる気出たぞ」


 顎はまだ痛むが、もはや気にならなかった。求める理想像のため、自らを奮い立たせた屋代は残りのご飯を食らいつくした勢いで立ち上がった。


「ちょっと、どこ行くのよ?」

 

 迷惑そうな顔で弁当を遠ざけていた波嬢が訊く。


「外。祈相術の練習してくる」

「これからかい? まだ時間に余裕はあるとはいえ午後からもずっと立ち仕事だ。足を休めていたほうが懸命だよ?」

「そんなことしてる余裕はないからな。大丈夫だ、そんなに遠くには行かない。時間になったらすぐ戻る」


 征徒の忠告を退けて、屋代ははやる気持ちのまま部屋を飛び出した。脳裏に地図を描き、舞を踊っても邪魔にならないような場所を探す。


「今回は上手くいく気がする」

 

 そうした気の高ぶりを抑えないまま通路を速足で駆け抜けて店の中、水に関わる品物を揃えた陳列棚を抜けようとした屋代であったが、そこで呼び止められてしまった。


「おや、ちょうどいいところに。そこの人。ここの従業員の方ですね? 少し手伝ってもらいたいのですがよろしいかな?」

「っ、は、はい。今行きます!」


 慣性に従う体を無理やり立て直し、屋代は声のする方に顔を向けた。

 重そうに商品を抱えるお客を見やり、瞬間的に湧き出した感情を息とともに吐き出す。

 休憩中、これから練習に行くんだ。そんな言葉が頭をよぎり、意味はないと振り払う。今の屋代は実習として店に世話になっている身だ。下手な反論はできないし、出鼻を挫かれたからといって声を荒げるわけにもいかない。従業員として求められる以上、その仕事は勤め上げるべきだろう。


「荷物持ちますか?」

「ええ、お願いします。いやはや、これくらいなら持ち歩けると考えたのですが想像以上に重たくて…。年は取りたくないですなぁ」

 

 近づいてみると、その口調に似あう程度には年を重ねた老人だった。一抱えもある箱を地面におろして腰を撫でさすっている。


「その箱は仕方がないですよ。俺、じゃない、自分も持つのに苦労するほどですから」


 中身は水入りペットボトルが何本か。たかがと言えない重量は、成人であっても持ち歩くには一苦労する重さだ。


「ん?」「ふむ?」


 と、箱を持ち上げて老人をまじまじと見た屋代は既視感を抱いた。背を伸ばして立った老人の姿と、穏やかそうな瞳に見覚えがあったのだ。しかし、それがどこでだか思い出せない。少なくとも頻繁に接する相手ではないはずだ。もっと短い、1、2度くらいだろう。それもごく最近会っているような気がする。

 屋代が眉を寄せて考え込んでいると、同じ違和感を抱いていたらしい老人が先に口を開いた。


「もしや昨日、浄環ノ神の境内に来られていた学生さんではないかな?」

「ああっ、あの御所殿前にいた人! 確か冴木さん、でしたっけ?」

「ええその通りです。やはりあの時の学生さんでしたか。これは奇妙な縁もあったものですな」

 

 眉を垂れさせた柔和な顔で笑う老人、冴木に屋代は戸惑った。


「もしかして、自分の顔を覚えているんですか?

「ええもちろん。あの場にいた学生さんの顔は大体覚えていますよ」


 冴木の言葉に目を見開く。あの場にいたのは屋代だけではない。何十人という学生がいた。加えて冴木と直接話をしていたのは藤芽だけで、屋代は一言も話していない。老人からすれば多くいる学生の一人だったろうに、よく記憶に残っていたものだ。


「昔の癖でね。つい人の特徴を覚えようとしてしまう。特にキミのくせっ毛は印象的だった」

 

 指摘され、何とはなしに気恥ずかしくなった屋代は髪を撫でつけた。


「もしや今は実習中かな? だとすれば面倒ごとを頼んでしまっただろうか」

「大丈夫ですよ。会計ですよね?」


 冴木を先導するように前を歩きながら、店内に目を走らせる。休憩中の屋代たちと違って店番担当がいるはずなのだが、その姿はどこにも見当たらなかった。他の客への対応か、もしくは花摘みか。どうせ席を外すなら屋代たちに一声かけてほしかったところだ。


「えーっと。これを押して…と。それじゃあ、料金をお願いします」

「それではお札で」


 屋代の慣れない手つきと言葉遣いに冴木は何を言わず、穏やかな笑みを崩さなかった。


「よしっ、と。お待たせしました。清算は終わったので荷物運びますね」

「おお、ありがとう。それじゃあお言葉に甘えて車まで持っていってくれるかな? すぐ近くに止めてある」


 妙な達成感があった。まるでお使いを一人でやれた子供のような、そんな感覚。もうそんな年でもないが、他人のお金を扱うという行為は高揚をもたらした。足元がおぼつかなく成りそうな気持を抱えたまま、しっかりと箱を抱える。


「いやあ本当に済まないね。何か急いでいたんじゃないのかな?」

「え? いや、そんな大事なことじゃないので。俺、自分個人の事というか」


 申し訳なさそうに眉を寄せた冴木に何と答えればよいかと逡巡する。


「ほんの少し、祈相術の練習がしたかっただけなんで。全然気にしないでください」


 結局、うまい言葉が見つからず真正直な台詞を口にした。ついでにさっきまで持っていた成功の想像は泡となって消えていた。


「ほぉ、祈相術の。随分練習熱心なのだね」

「こうでもしないと追いつけないんですよ」


 追いつくどころか開始地点にさえ立てていない状況だ。時間が許す限り一つでも多くの型を踊って己を磨くしかない、という切実な理由もあった。


「ちなみにどんな型を練習しているのかな。地転、それとも羽衣の型は踊れるかい? 神職専門学校の生徒なのだから、さぞ多くの型を知っているんじゃないかね?」

「……もしかして神職の関係者でした?」


 心なしか前のめりになった冴木の圧力に押されて、体がのけぞる。  

 冴木の上げた型は、どちらも祈相術の中で上級に分類されるものだ。おおよそ生涯をかけて研鑽した者や本物の天才くらいしか発動することができないと言われており、通常、学生の身分で扱えるような術ではない。征徒や流堂でさえ、中級の祈相術をいくつか発動できる程度なのだ。それとて世間から見れば十分すぎる力量だと称えられるものなので、推して知るべしだ。

 先ほどより明らかに目の色を変えた冴木は、自らを落ち着かせようと顎をしごいた。


「ははは、いや済まない。私はどうにも祈相術マニアなところがあってね。人が踊っている姿を見たり、術を発動している光景が大好きなのだよ」

「はあ、祈相術マニア……」

 

 初めて聞く単語に目を丸くするが、居てもおかしくないかと思い直す。

 祈相術を発動させるための舞や歌は、見る者聞く者を魅了する独特の求心力があり、発動した術は心を震わせるほど綺麗だ。それらに魅せられた人を祈相術マニアと称しているのだろう。


「それで、キミはどうかね。どんな型を踊れるのだ? いや、君自身でなくとも素晴らしい舞を踊る生徒の一人や二人いるのではないかな?」

「……踊るだけなら大抵の舞は踊れますが」

「ほぉっ、それは素晴らしい!」


 目を輝かせて歓声を上げる冴木から目をそっと逸らす。嘘は言ってない、ただ術として発動しないというだけで、屋代は学校で教わるおおよその型を舞うことができる。しかし通常、型を舞えるということは術を発動できるということの同義であり。


「では、よければ何か一つ見せてもらえないかな?」


 当然、このような台詞が出てくる。


「何も秘伝の型を見せてほしいなどとは言わんよ。一般的によく知られている型で構わない。ぜひとも学生さんの実力を見せてほしいのだ」


 背中に汗が流れる。

 今すぐ店に戻って征徒や波嬢を連れてくるべきだろうか。それとも言い訳をひねり出して誤魔化すか。祈相術が使えないことは事実であり避けようのない現実だが、だからと言ってそれを自分からさらけ出すには抵抗がある。いっそ、万が一の可能性に賭けて舞を披露するべきか。

 下手に踊れるなどと言はなければよかったと後悔する。しかし、それでは嘘をつくことになってしまうし、と屋代が煩悶している間にも時は経つ。

 詰め寄ろうとしてくる冴木を前に、数歩後ずさった。


「やはりいきなり舞を見せてくれなどとは不躾だったろうか?」

「え、あ、そうじゃないですけど……」


 だが、そもそもここで舞を披露する義理などないのだ。冴木は偶然会っただけの相手であり、わざわざ時間を割いてまで相手をする必要はない。荷物を車に運びこめばそこで終わりだ。おそらく二度と会うまい。

 と、そんな風に断ればよいのだが、屋代はそう言えなかった。踊らないのは自身の事情によるところが大きく、冴木に対する拒絶感など持ち合わせてはいなかったからだ。断る理由の大半が己の都合であるため、それを素直に口にできない。

 屋代は考えた末、黙っている理由もないかと受け入れた。


「あー実は俺、踊れはしますが術として発動しないんです。なので、申し訳ないですけど舞は見せられません」

「……まったく? どんな祈相術もかね? 私ですら使えるものを、学校に通うキミが使えないと?」

「…………はい」


 そう言われると苦しいものがある。

 まあ、神職になろうと専門学校に通う生徒が、祈相術を使えないなどとは誰も思うまい。冴木が驚くのも無理はなかった。


「いや、そういえばそんな話をどこかで……そうか、キミがあの神の養子になった子か!」

「……………」


 冴木の言葉に屋代は唇を曲げて沈黙した。屋代が白穂神の養子になったことは、実のところかなり知られた事実である。もともと放浪していた白穂神は人の間でも有名であり、そんな神が子供を養うようになったとなれば、いくら神を神聖視する社会と言えど情報が広がることを避けられなかった。十年近く経った今では沈静化したものと思っていたが、どうにも屋代が祈相術を使えないことでまた話が再燃してきているようだ。

 事実だけに否定しようもないことが、屋代のもどかしさに拍車をかける。


「そうかキミが……。キミの立場で祈相術を使えないとなればさぞ辛いだろう」

「はあ、まあそうですね……」


 同情の眼差しに、屋代は居心地悪げに体を揺さぶった。

 原因も分からず、祈相術を使えないという現実だけが重なる日々。周りからは神への信仰心が足りない、神様を疑っているから、まともな人間でないからだとも言われた。それでも見捨てず育ててくれた白穂神には本当に感謝しているし、それによって神職を目指すという決意も固まった。

 なので。


「俺の気持ちとか割とどうでもいいんです。大切なのは神職になることで、白穂神に少しでも恩を返すこと。俺にくれたものを今度は白穂神に捧げたい」 


 それが偽らざる屋代の本音だ。祈相術を使えないからと馬鹿にされることに腹が立つこともあるし、それで見下されることも多々あるが、そんなもの二の次でしかない。神職に就くことこそが唯一にして大事なことなのだ。


「―――――なるほど。君は神様に与えられたのだねぇ」

「っ?」


 違和感、次いで全身の産毛が警戒を促すように震える。それがいったいなぜなのか、屋代はとっさに判断できず戸惑った。

 冴木は先とは何ら変わらない笑みを浮かべている。


「羨ましい話だ。それほど身近に神がおられるというのは……しかし、神と共に生活を送るというのもあまり楽しいものでもあるまい? 私なら心痛で常に緊張しっぱなしだよ」

「え、ええ、そうですね。気はあんまり緩められないですね……」


 ましてや相手は自分を救ってくれた大恩人、甘え続けることは出来ない。

 と、そんな話をしていると、いつの間にか冴木の車に到着していた。わずかな道のりだったが、同じ体勢で箱を持っていたから腕が痛い。


「よし、ここに積んでくれ―――うん、そこで構わないよ。わざわざ運んでくれて本当にありがとう。これはせめてものお礼だ。持って行くといい」

「? ありがとうございます」


 そう言って、冴木が差し出したのはつい今しがた屋代が運んできた箱の中身、神が直接浄化した水の入ったペットボトルだった。反射的に受け取ってしまう。


「キミもいろいろ大変な立場だろうが、祈相術が使えるよう頑張ってくれたまえ」


 そう言い残し、冴木は車を走らせた。

 低音を響かせて去っていく車のお尻をしばし見送り、屋代は手に入れた神水をそっと揺らした。そこにある水は景色の向こう側が透けて見える透明度を誇っているが、しかし水そのものが含む物質は見えてこない。冴木の穏やかな笑みが、笑顔であるという情報しか残さず内側が見えなかったように、屋代にはその中を見通すことはできなかった。

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