「新手の嫌がらせ」が黒歴史

逢坂 純(おうさかあつし)

S〇NYのライン作業で黒歴史

「新手の嫌がらせ」って言われたことありますか?そもそも「新手の嫌がらせ」ってどんなことを指すのか、謎ですよね。今日は、僕がS〇NYの工場で働いていたころのことをお話しします。

あれは僕が引きこもりになる前の最後ぐらいの仕事だったでしょうか。認知機能障害で仕事がうまくできず、15社以上もアルバイトを転々としていた頃のことです。ベルトコンベアーのラインでビデオカメラの部品を造る仕事をやっていたときの話です。

ラインの工場は、立ちっぱなしトイレ自由に行けないずっと同じ作業の繰り返し、と結構大変なお仕事でした。でしたと言ったのは、この仕事もまた「認知機能障害」が発動して、僅か3ヶ月で辞職したから、過去形なのです。

ライン作業も、ただ流れてくる部品を何も考えずに流していればいいっていうものじゃないようです。その日「今日はこれだけの量を」「一時間でこれだけの量を」ということが決められていたように思います。それを管理するのが、A班B班と分かれたライン作業のグループのチーフなのでした。僕はそんなこととはつゆ知らず、自分のペースで、ラインに製品を流し続けていました。次の人は、その僕のペースに合わせて、僕のペースで流した製品を造っていくのです。

チーフは当時、恐らく30代半ばで、ストレスを溜めては一人でブツクサと呟いているのが常のようでした。

「新手の嫌がらせか……」

そうチーフが一人で呟いているのを聞きました。

僕は自分のことにすぐに結び付けて考えてしまうので、「もしかしたら僕のことを言っているのではないか」と考えていました。実際にはそんなことはある筈もないのですけれどね、とも考えていました、それが僕のことを言っていると判明したのは、仕事を始めてから3カ月後のことでした。僕は上司に呼ばれ「優先的に他の部署を紹介するから、他の部署に異動してくれないか」と言われました。

僕は今までのアルバイトを転々としていた経験から「またか」と思い、その仕事も辞めてしまいました。

本当に僕がチーフに「新手の嫌がらせ」をしていたのかは、今となっては謎なのですが、あの時のチーフの言葉は今になっても、記憶にしっかりと刻まれています。

ライン工場での「新手の嫌がらせ」は僕の黒歴史です。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

「新手の嫌がらせ」が黒歴史 逢坂 純(おうさかあつし) @ousaka0808

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ