第3話:好き?それとも、好き?。

あ、それで女子高生の格好してたのか・・・準備のいいこった、うちの

お稲荷さんは・・・。

うちのって言っちゃったよ・・・でもうちのお稲荷さんだよな。

僕はこの子とお稲荷さんとこれから暮らすのか?


僕の家に居座ったお稲荷さん「宇迦之御魂姫うかのみたまのひめ」さん。

学校での担任の紹介では「稲荷 灯華いなり とうかって名乗ったから、

僕は彼女のことを「灯華とうかちゃん」って呼ぶことにした。

本名、呼びにくいし・・・。


で、学校から帰るときは、たまちゃんと公然と手を繋いで家に帰った。

僕が繋ごうって言ったわけじゃなく彼女が繋ぐって言ったからね・・・

嫌だなんて言ったら、大変だから・・・優しくしないとバチが当たる。


たぶん明日には学校中の噂になってるだろう。

転校性といち男子のラブストーリーってか。

まあ、お稲荷さんはそんなことお構いなしなんだろうけど・・・。


「あのさ・・・翔大しょうたくん・・・」


「え?なんで?僕の名前、教えてないのになんで知ってんの?」


「翔大くんちにお邪魔した時、表札の名前確かめたから」


「なるほど、何から何まで用意のいいこった」


「僕は君のこと「灯華とうかちゃん」って呼んでもいい?」


「うん・・・好きに呼んで」


「で、なんで、灯華とうかなの?」


「一般市民のみなさんが私のことそう呼んでるから・・・」


「あ〜なるほど、みんな本名呼ぶことがめんどくさいんだな」

「ところで、その学生服、どこから持ってきたの?」

「普段から学生服着てるわけじゃないでしょ?」


「学生服売ってるお店なら簡単に手に入るよ」

「そうだけど・・・まあいいや、それ以上詮索るのやめよう」

「おまわりに捕まりそうな答えが返ってきそうだから・・・」


「翔大くん・・・今晩なに食べたい?」


「なんでもいい」


「そう言う答えが一番ダメなんだよ」


「んじゃ〜・・・カレーかハンバーグで・・・」

「つうか、魂ちゃんが作るの?」


「こう見えても料理得意だし・・・」


「おお〜助かるわ・・・毎日じゃなくても自炊するのって面倒でさ」


「このまま、スーパーに寄って食材買って帰ろ」


「それって、なんか夫婦みたいだな」


「みたいなもんだね・・・私、翔大くんの彼女だし取り憑いてるから」


「取り憑いてるって・・・それって神社でお祓いとかしたら取れないの?」

「取れない・・・なに?お祓いしたいの?」


「いや、聞いてみただけ・・・」


「私が別れましょって言わない限り無理だからね」


「つうことは僕は今のままだと人間の女の子とは付き合えないってことかな?」


「なに言ってるの、他に彼女なんか作ったら不幸になるよ」

「その彼女ともどもね」


「なにげに僕って魂ちゃんに束縛されてる?」


「男と女って恋に落ちたらそう言うもんでしょ?」


「恋に落ちたらって・・・僕はなんの意思表示もしてないんだから一方的じゃん」


「なに?イヤなの?・・・私じゃ不満なの?」


「不満って言うか・・・」


「そうなんだ・・・それが翔大くんの本心なんだ」

「・・・・・ちょっと悲しい・・・」


「嫌だってはっきり言ってる訳じゃないだろ?・・・」


じゃ〜このさい、はっきりさせて!・・・私のことどう思ってる?」

「好き?それとも、好き?」


「なにそれ、そんな質問ないでしょ、それじゃ好きしか選べないじゃん」

「でもまあ、いいよ・・・それで」


「なに?その投げやりな答え」


「だから、好きだよ・・・」


「ほんとに?・・・無理してない?」


「じゃ〜なんて答えればいいんだよ・・・どうして欲しんだ?」

「好きって言ってるのにそれじゃ〜不満なのか?」

「いい加減にしないと僕だってキレるぞ」


「わ、分かったから・・・ごめん」

「絶品カレー作ってあげるから・・・機嫌直して、ね?」

「先は長いんだから仲良くやろうね」


優しくたって限度があるんだよ・・・いくらお稲荷さんだからって甘い顔、

見せたらつけあがるんだから・・・。


でも今夜のカレーはたしかに絶品だった。

男をつかむなら胃袋をつかめって言うけど・・・まじだな。

まあ、それに自炊しなくていいのがね。


次回に続く。





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