第57話 作戦会議
「ではここから先は先行部隊の皆様と我ら殲滅部隊及び常駐部隊に分かれて行動いたします。行動の指針はジョーカー様に託しますね」
「承知いたしました。それではまず私からご説明の前に少しお話があります」
そう言うと俺は一つの石を取り出す。他人からすれば妙に光っている綺麗な石といったところだろう。
皆が一様にキョトンとした顔をしている。いや、白崎と龍牙さんには見せたことがあるし分かっているか。
「そいつがどうした?」
「これは『転移石』と呼ばれるものです。私の異能で手に入れた物なのですが、こいつを使えばダンジョン内の攻略した階層であれば自由に転移することが出来るといったスグレモノです」
俺がそう話した直後、全員の間にどよめきが走る。
「そんな力なんてアリかよ」
「んな石があるなんて聞いたことないな」
「いや待てよ? 確かジョーカーの配信で聞いたことあるような」
「なるほど、ジョーカーの目まぐるしい成果はその力も関係していたって事か……」
思いの外、みんな俺の事を信用してくれているみたいだ。結構突拍子もない事を言ったつもりだったからてっきり嘘つけとか言われると思っていたんだがな。
「おいおい、冗談もステータス数値だけにしやがれ。んなお伽噺みてえな話、誰が信じるってんだ?」
と思ったら思っていた返事が思っていた通りの場所から発せられてきた。
「ふふ、本来はそのような返答を期待していたのですよ西園寺さん。ありがとうございます。それでは少しお見せしますね?」
俺はそう言うと白崎に目配せをした後、転移石を使用し、現在の階層から1階層へと転移する。そしてドローンカメラをアイテムボックスの中から取り出し、配信を付ける。
無論、このまま配信を回し続けるわけではないため、白崎が開けるように限定公開である。よしよし、視聴者数一人ついたな。
「ほら、ここがどこかこの大扉を見れば分かるでしょう?」
そして配信画面に印象的な大扉を見せるとすぐに俺は五階層へと転移し、皆の下へと戻る。残念ながら入り口にしか転移できないため、格好よく皆の前に出てくることはできない。
「理解していただけましたか?」
「……マジかよ」
白崎が配信を見せてくれていたのだろう。俺が戻ったころにはあの頑固な西園寺さんも驚きに目を見開いているくらいには納得していた。
「格好付かないわね」
「申し訳ありませんね。この石は入り口にしか転移できませんので」
そう言うと俺は再度、皆の前に戻り、説明を続ける。
「このようにダンジョンの階層の入り口であればどこからでも転移できるという有用なアイテムでございます。ただ、こちらのアイテムは一つしかありませんので、現状我々先行部隊が使用することになると思います」
「なるほど。それはかなり有用ですね。一つしかないのは残念ですが」
「一つしかない、というのはあくまで
厳密に言えば転移石なのかどうかは確定してはいないのだが、明らかに見た目が似通っていることとこんな整った石がダンジョン内から出土したのだとすれば可能性は高い。
だからこそ俺は転移石と確定させて言った。
「こちらの転移石は天院さんに預けます。こちらの解析を殲滅部隊の方々に進めていただきたいのです。そうすれば物資を運ぶ際にも運搬部隊が必要なくなると思うのです」
「そんな貴重な石を預けていただけるのですか。承知いたしました。ありがたく受け取らせていただきます」
そう言うと天院さんが俺の手元から転移石を受け取る。尤も、力のある方をあげれば良いじゃないかという意見もあると思う。
しかし、あくまで一番危険なのは俺達先行部隊だ。前みたいな龍が現れないとも限らない現状、一番の逃避手段を無くす訳にはいかない。
「ではこれから先行部隊の作戦をお教えいたします。基本的にダンジョン探索、それもこのような広大なダンジョンを探索する際には分かれて探索した方が効率が良いと考えております」
「ほう。この人数であれば二手に分かれるってことかい?」
「仰る通りでございます、西園寺さん。ただ、1つ注意点がございまして」
そう言うと俺の下に皆の視線が一挙に集まる。ここはジョーカーらしくスッと一本指を立てると俺はこう告げる。
「
この提案には驚いたのか、皆の間にどよめきが走る。本来なら2グループに分かれるのであれば2人と3人なのが相場であろう。
しかしそれでは戦闘力が足りないと判断してのこの分け方であった。
「おいおい、嘗められたもんだなぁ」
「まあ待てよ道玄。ジョーカー殿も何か考えがあっての事だろ?」
「はい。単純にこのダンジョンにおいて2人3人と分けてしまうと一方が戦闘力が十分ではない可能性が高いという判断で決めました」
前西園寺さんと戦ったときに思った。この程度じゃ門番みたいな強い魔物を倒すことが出来てもボスと出会った際に倒せるどころか最早逃げられるほどではないなと。
彼が俺を除けば一番強いという事を考えると、こう分けるのは自然だ。
「ジョーカーさん。一つ質問が」
「どうぞ龍牙さん」
「二手に分かれるのでしたら連絡手段はどうすれば良いのでしょう? 緊急の際にジョーカーさんが持っている転移石を使いたいと思っていたのですが」
「それに関してはイヤホン型の無線機を皆さんに配布しますのでそれを通じて連絡を取れればと考えております。あと、転移石を持つのは私ではなく白崎さんですのでご心配なく」
「え?」
俺の言葉に白崎が聞いていないといった顔でこちらを見てくる。そんな事はどうでもいいと言わんばかりに俺は白崎の手に転移石を握らせる。
「まあ、詳しい内容は互いの配信で見れますので連絡手段が必要かはわかりませんが、念のためですね。あ、あともう一つ注意点がございます。今までで最も大事な注意点です」
そこまで言うと俺は声を低くしてこう告げる。
「ボスと遭遇したらすぐに私に連絡して逃げてください。あなた方では
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