第55話 大規模作戦の決行
「いよいよ、作戦の時です」
天院さんの掛け声とともに俺達はあのダンジョンの大扉を開く。ダンジョン攻略の主体となる先行部隊に配属されたのは特級探索者の中でも特に強力な人達だ。
西園寺さん、龍牙さん、そして西園寺さんと仲の良いランキング10位の斬月さん、白崎、そしてジョーカーである俺の五人だ。
そして殲滅部隊は残りの特級探索者たち、そしてランキング5位の天院なぎささで構成されている。
先行部隊に協会関係者がいたほうが良いのではないかという意見もあったが、中継地点を製造する協会関係者を守らなければならないという事もあり、殲滅部隊の指揮を執ることになったらしい。
「おい、ジョーカー。配信するのか?」
「ええ」
俺が配信を始めるためにドローンカメラをいじっていると、西園寺さんからそんな言葉がかけられる。
「協会的に良いのかよ、配信すんのは」
「問題ないですよ。むしろ配信していただいた方が進捗具合もこちらから確認できますので連携が取りやすいかと」
「ほう」
何も配信準備をしているのは俺だけではない。白崎ことシロリンや龍牙さんことシルクハットさんも配信の準備を始めている。
「ダンジョン内部でどうやって電波を繋げてやがんだ」
「ケッ、相変わらず古い男だな、お前さんは」
「風情が足りんのだよ、風情が。それにお前もそんなに俺と変わらねえだろうが、当真」
「お前さんと違って少なくとも考え方は若い世代に合わせてんよ、道玄」
なんだかんだ、先行部隊は同じ世代同士で話せるからバランスが取れてるんだな。ていうか俺はどのポジションで話せばいいんだ?
一応、若い世代になるはなると思うけど。
流石にこれから長い間、ダンジョン攻略を共にする中でずっと演じ続けるのはしんどいぞ。
「まずはイグナイトがボスを倒した五階層まで向かいます。そこで第一拠点を作りたいと考えております」
天院さんから淡々と今回の作戦についての説明が施されていく。どうやら一階層には拠点を作らないらしい。
五階層から大体五階層ごとに拠点を作っていくのだとか。その際、殲滅部隊とはまた別に上級探索者の中から選出し、常駐するメンバーを決めるらしい。
殲滅と言っても安全地帯を確保する程度であるから、本当に魔物を一匹残らず倒すという訳じゃない。
たまに攻め入ってくる魔物を相手できる人材は必要だろう。
「じゃあ今日は基本、俺達とそっちは一緒って訳か」
「そうなりますね。できれば今日中に五階層での仮の拠点を作り終えたいと考えてます」
今日中に仮の拠点を作り終えたい? 結構大きく出たな。俺自身は転移石で二階層まで飛べると言えど、こんなに大人数を転移させることは不可能だ。
つまり一階層からまた攻略をしていくこととなる。まあ、ボスが居ない分、楽に攻略は出来るだろうが、それでもステータス数値1000万以上の魔物は多いだろう。
それこそシルクハットさんですら手に負えなかった番人レベルの魔物と遭遇することになる訳だし、かなり困難な道のりになる。
「全員、俺の領域の中に入っとけ。そしたらどの距離からでも守れる」
そういうと西園寺さんは大きな半透明のドームを展開する。
「ランキング3位に守られるとか心強過ぎる」
「こんなデカい力を維持できるなんてステータス数値どんだけ高いんだよ」
西園寺さんの異能を見て、殲滅部隊の探索者たちが口々に賞賛を述べる。まあ本人はあんまり気にしてなさそうだけど。
「指揮は一番の経験者のジョーカーさんに任せます」
「承知しました。それでは行きましょうか」
指揮官が俺だと聞いて西園寺さんが目くじらを立てることはない。あの一戦で認めてくれたのだろうか?
「ふん、癪だが付いていってやる」
……どうなんだろう? 一抹の不安を残しながら俺達はダンジョンの第一歩目を踏みしめていくのであった。
♢
「……ど、どうなってんだこの人たち」
「同じ人間とは思えねえ」
襲い来る数々の魔物達。普通のダンジョンでは見たことが無いようなドラゴンなどの凶悪な魔物たちを相手に、圧倒している先行部隊の実力を探索者たちは息をのんで見守っていた。
シロリンの美しき氷操術、龍牙のステータスドレインを駆使したカウンター、更には往年のコンビである斬月と西園寺の連携によって魔物達は次から次へと打ち倒されていく。
そして何よりも探索者たちの目を惹いたのは先頭を突っ走るジョーカーの存在だ。
彼はこのダンジョンに足を踏み入れてから一度たりとも足を止めていない。一人で魔物の群れに飛び込んではそれらすべてを壊滅させながら道を開けていくのである。
その様はまるで奇跡を引き起こす聖人のよう。しかしてその顔に着けている仮面は不気味なものがある。
『すげー、総力戦って感じだな』
『相変わらずジョーカーの力は健在だなww』
探索者協会始まって以来の大規模作戦に配信のコメント欄も盛り上がっている。ジョーカーの同時接続者数は長期休暇という事もあり、驚異の50万人を突破している。
そして登録者数も600万人から700万人、800万人と劇的な増加を見せていた。
「取り敢えず五階層に到着しましたね」
そう言うとようやくジョーカーが足を止める。ボスが居ないこともあり、半日も経たない間に一行は五階層にまで到着するのであった。
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