第46話 会議の内容
「攻略するにあたり、まず皆様のご都合などを聞きたいと思います。最高難度のダンジョン攻略をするとなると、まとまった期間が欲しいところですので」
まとまった期間? もしかしてダンジョン内で寝泊まりするつもりなのだろうか?
「少し良いですか?」
「はい、聞きたいことなら遠慮せず何でもおっしゃってくだされ」
「ありがとうございます。まとまった期間が欲しいと仰っておられたと思うのですが、もしやあのダンジョン内で寝泊まりをするという事なのでしょうか?」
「もちろん、そうなります。基本的には五人グループをローテーションして見張り担当を回しながらになると思います」
「お答えいただきありがとうございます。あともう一つ質問があるのですが」
そうか。俺は転移石を持ってるからそもそもダンジョン内部で寝泊まりするという概念は無かったが、普通なら寝泊まりしながら徐々にダンジョン攻略を進めていくのだろう。
だとしてあのダンジョンがもしも100階層とかあったら、一回目の攻略が50階層目までだったとして帰る際には50階層目から1階層目まで下ることになる。
そして二回目の攻略では1階層目からまた攻略していくことになる。確かに初見の時とは違い、次の階層へ行く道なんかを覚えていたり慣れたりすることで攻略速度は上がるわけか……。
「一回目の攻略ではどれくらいの階層を目標にするのでしょう?」
「どれくらいだぁ? 一回で全階層攻略するに決まってんだろ」
俺の質問に隣に座っているランキング3位のおっさん、西園寺さんがそう返答してくる。
「ほう、あのダンジョンを一回の探索だけで攻略してしまうのですか。だとすれば何か月かかるのでしょう?」
「何か月? 何日、の間違いだろう。どういう要素を見ればそんな規模の数字になる?」
だいぶ自身家なおっさんだな。これまでの人生でよほど失敗をしてこなかったのだろうか?
「西園寺殿。ジョーカー殿はこの中でも数少ない今回のダンジョンの経験者です。配信でも攻略の様子があがっていますが、出てくるどの魔物も他のダンジョンとは一線を画するほどだとわかります。ジョーカー殿の疑問は尤もであると思います」
そこで天院さんがフォローしてくれる。でもそんなこと言ったらめっちゃ噛みついてきそう~。
「ふむ。そうなのか。それは悪かったな」
いやそこは素直に謝るんかい!? あまりにも驚きすぎてついキャラを崩しかけてしまいそうになる。
「いえ。私がその情報を開示しなかったことにも問題はありますので」
「いや、そこは俺が勉強してくるべきだった」
そしてそこは譲らないらしい。どうにもやりにくいおっさんだな。せめて憎らしいままでいてくれよ。
「ジョーカー殿のご意見はまったくその通りだと思っております。そこで今回、我々はこのような計画を用意いたしました」
柳生さんがそう言うと会議室の真ん中で天井からつるされているモニターに資料が映し出される。
「もちろん私どもも今回だけで攻略達成できるとは思っておりません。5階層ごとを目安に先行部隊へ送る物資供給等のための安全な中継地点を作っていき、それを駆使しながら長期的に攻略していきたいと考えております」
モニターの画面には塀で覆われた町のような姿が映し出される。
要は簡易的な建造物群を塀で多い、5階層ごとに安全地帯を作り出すという事なのだろう。
「……それだと年単位の計画になりませんか?」
「一応建造に適した異能を持つ者がウチに居まして、数日で一つ建物を作ることはできますので、中継地点を作るだけですとそんなにはかかりません」
「そうなのですね。それは凄い」
そんな短期間で建物を作れるのか……羨ましいな。キャンプやる時めっちゃ便利じゃん。
「この探索の途中でその中継地点を作るための殲滅部隊、そしてダンジョン攻略の先行部隊の2チームに分けたいと思っているのです」
あれだけの広い空間の魔物を狩りきるなんてよっぽど多くの人員が居なければならない。しかし、あのダンジョンの魔物を倒すことができるとなると相当限られてくる。
それこそランキング内に入っていなければ論外だろう。
「そんなこと可能なのでしょうか?」
「もちろん、我が探索者協会だけではありません。あのダンジョンは世界中に同じ名前の物が存在していると聞いたことがあるのではないでしょうか? もしもあのダンジョン、名前が一緒なだけではなく本当に同一のダンジョンだとして、世界中で繋がっているなら……可能であると考えております」
世界中で同一のダンジョンが繋がっている……確かにありうる話だ。
ダンジョン配信上でのあのダンジョンの探索記録は俺とイグナイトしかない。
配信時間が異なっていたため遭遇することはなかったが、ふと疑問に思ったことがある。
それはイグナイトの配信では俺が倒した湖の龍や巨人の魔物が出てこなかったこと。単純に運なのかとも思ったが、俺が倒した後だからという可能性もある。
「へえ、楽しい話になってきたじゃねえか」
「でしょう?」
西園寺さんと柳生さんが互いを見てにやりと笑みを浮かべる。
こうして会議はところどころ質問が飛びながらも順調に進んでいくのであった。
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