第27話 探索者協会
「俺も一緒に探索者協会か~。もしかしてバレちったか?」
「まだ確認段階でしょうけど疑っているのは疑っているのかも。一応、あの場から病院送りになっていないのが私と押出君だけだから」
俺は白崎と並んで町を歩いていく。今日は白崎に呼ばれて探索者協会へ行くことになった。
一応、確認の連絡を貰ったから普段から暇な俺は即刻了承の返事を送ったのである。
だってあの探索者協会にいけるんだぜ? まあ、俺そもそも存在を知らなかったから未だにどういうところかよく分かってないんだけどな。
「正体は隠しといた方が良いんだよな?」
「そうね。あなたが仕事を増やしたいなら話は別だけど」
「それは嫌だな。今で十分だ」
日々忙しくしている白崎を見ているだけに俺の意思は固かった。前まではクエストで手に入れた報酬を売れば結構な額のお金が手に入っていたし、最近ではジョーカーの配信による収益が入ってきているしいよいよ仕事は要らなくなってきた。
「にしても探索者協会は何でジョーカーの正体を知りたがるんだ?」
「ダンジョン攻略の糸口になるような情報が欲しいからでしょうね。後は他の組織に引き抜かれてしまう事を危惧しているからとか」
他国と協力関係を構築するとは言っても結局最優先は自国なのよ、と白崎は続ける。
「さてと、着いたわよ。探索者協会」
「え、でか」
白崎と話している間に到着した探索者協会。目の前にあったのは想像していたよりもはるかに大きな建造物であった。
周囲はその広い敷地をすべて囲い込む柵があり、その中央にはどでかい門がある。
俺と白崎はその門にて警備員へとここに呼ばれた旨を伝えると、少々お待ちくださいと言われてその門の前で待つこととなる。
そして少しして、黒い長髪の女性が門の向こう側から出てくる。
うへ~、白崎とはまた違った美人さんだな。美人な上に探索者協会に勤めてるってことは出来も良いって事なんだろうな。
「お待たせいたしました。白崎様、押出様。探索者協会副会長の天院なぎさと申します。ご案内させていただきますのでどうぞこちらへ」
そう言って天院さんの後ろに付いていく。それにしても天院なぎさって何処かで聞いたことがあるような……。
そんなことを考えている内に俺は都内に聳え立つ巨大建造物の中へと足を踏み入れていた。
探索者協会の中には中央の天井にシャンデリアが吊らされており、床には道の様に赤い絨毯が敷かれている。
まるで高級ホテルの中みたいな探索者協会の二階へと上がり、更に奥の方へと連れられていく。
そして奥にある一室にて天院さんが立ち止まるとコンコンコンッとノックする。
「天院です。会長、お客様をお連れしました」
「どうぞ」
中から渋い男性の声が聞こえる。扉を開くとその先に座っていたのはザ・ダンディみたいな老爺が社長椅子に座っていた。
その前に置かれているソファへと案内されて、俺と白崎は天院さんとその爺さんと向かい合わせに座る。
「初めまして白崎瑠衣です」
「押出迅です」
「初めまして。今日はわざわざ来ていただきありがとうございます。私はこの探索者協会会長の柳生誠二です。こちらは副会長の天院なぎさです。天院はランキング入りしている有名人ですから二人も知っているかもしれないですな」
そう言われてようやく思い出す。そうだ。天院なぎさってランキング5位のナンバーズじゃないか。
あの第二の神の声事件があってからニュースで頻繁に見せられるランキングでいっつも聞く名前だ。
日本人の中じゃ2位の実力者だったよな……探索者協会を知らなかった俺ですら知ってるくらいの有名人である。
「私はもう衰えてしまっておりますのでランキングには入っていませんが、これでも元ナンバーズなのですよ?」
「知ってますとも。かつて鬼神と呼ばれていた生ける伝説、柳生誠二。日本人で初めてランキング2位を記録した最強の存在ですもの」
「ほっほっほ、知っていただいておりましたか。それはありがたい事です」
何と隣の爺さんもどうやら凄い人だったらしい。日本の探索者の頂点が探索者を取り仕切っているというのは当然と言えば当然か。
「私も長い間、探索者協会の会長を務めておりましたがいやはや最近の情勢は激しく移り変わります。これからを背負う才能あふれる若者達も沢山出ていらして最早私の過去の栄光すら薄れる程ですとも。白崎殿もそのうちの一人でございますな」
「いえいえ、とんでもございません」
「ご謙遜なさらず。私は本当にそう思っているのです――さて、今回お話しさせていただきたいのは移り変わる情勢の中で特に激しくうねる劇的に世界へと衝撃を与えた存在、ダンジョン配信者ジョーカーについてです」
そう言うと柳生さんは俺と白崎を交互に見てこう尋ねてくる。
「ジョーカーについて何か知っていることはありますかな?」
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