第25話 影響力
「よし、これでこの階層は攻略完了ですね」
俺はリボルバーを抜き取り、襲い来る魔物を打ち倒すとそう零す。その先に次の階層に向かう建造物のような物が見えたからである。
「まさか本当に今日だけで攻略しちゃうだなんて思わなかったよ」
『えぐ』
『この難易度でこの広さのダンジョンの1階層目を1日でクリアするとか異次元過ぎww』
『私あんまりダンジョン探索しないから分からんけど1日で1階層ってそんなに凄い? 別に普通に皆してるイメージだけど』
『難易度が違う。雑魚みたいに道中でうじゃうじゃ出てきた魔物なんて本来中級者向けくらいのダンジョンの主的な奴と全く同じ奴だぜ?』
『ジョーカー強すぎなんよ』
いや~、何かコメント欄で褒められてんぜ、おい。こんなに褒められちゃったら生来目立ちたがりであるが故に俺の心がどんどん尊大に育っていきそうだぜ。
そんな時であった。俺の目の前にクエストの画面が表示される。
『クエスト達成。報酬を送ります』
そう。実はこのダンジョンの1階層目を攻略することが今回のクエストだったんだ。
これは事前にシロリンにも言っていた。配信中にクエストを達成すれば、配信内で俺の異能を見せることもできるだろう、って。
しかし、報酬は思っていた物とは全く違うものであった。
『報酬はステータス数値2倍です。おめでとうございます』
うおおおおおい! 全然、配信に映せねえじゃねえかっ!?
「どうしたの?」
「いえ、皆様にお見せしたかったものが先程
「あー、なんとなく理解したわ」
主神の槍みたいな分かりやすくそれでいてカッコいい報酬だったならばどれほど良かった事でしょう。
まあ、ステータスの数値が2倍になるってのも結構破格な報酬だし嬉しいのは嬉しいんだけどね。こう、ステータスってやっぱりよく分かんないからさ。
こいつの数値が高かったら確かに身体能力は高くなるんだろうけど、それがどこまでの効力があるのか分からないし。
「取り敢えず目標は達成したし、そろそろ配信終わりますか」
「了解です。あ、シロリンさん。私は自分の配信を閉じてきます」
「オッケー、私も閉めてくるね」
そういうと二人はそれぞれのカメラに向かう。
『お疲れ~』
『二人ともお疲れ!』
『次はいつ配信するの?』
「次は未定ですね。ですがそんなに期間は空かないかと思います」
ジョーカーとして演じるのはやっぱりちょっと疲れるからな。
多分クエストで提示される限り、ダンジョン攻略は続けるが、それを配信で映すかどうかはまた別だな。
「おっ、同時視聴者数が10万人ですか。ありがたいですね。ですが、ここで一旦楽しいショーはお終いです。またのご観覧をお待ちしております。それでは、またお会いしましょう。Good luck!」
そういうと配信終了ボタンを押す。そしてシロリンの方を向いて俺は大変なことに気が付く。
俺の配信にはエンドロールが無い!!!!
シロリンの配信は画面が隠れた後、少しの間エンドロールが流れ配信の余韻を浸る時間がある。
しかし俺の配信にはその余韻に浸る時間などクソ食らえとでも言っているかのようにぶつ切りなのである。
ただ、そのエンドロールを俺に作る技術が無い。
「……本格的にSNSを始めないといけなくなってきたな」
そうして俺はドローンカメラを手に取るとシロリンの下へと歩いていく。
「お疲れ~。そっちはもう終わった?」
「うん。無事に終われたさ」
俺は仮面を取るといつもの俺の姿へと戻る。そして羽織っていたロングコートを脱ぎ、仮面と一緒にアイテムボックスの中へ入れる。
「あのさ、聞きたいことがあるんだけどさ」
「うん、なに?」
「SNSのアカウントってどうやって作るんだ?」
♢
その日、ネット界隈が湧き上がっていた。謎のダンジョン配信者ジョーカーと人気ダンジョン配信者のシロリンがコラボ。
それだけでなく、まさかの超難関ダンジョンの1階層目を攻略達成。
さらにさらにジョーカーが初めてSNS用のアカウントを作ったというのである。
反響が反響を呼び、ジョーカーの配信チャンネル登録者数は200万人を突破、更に作ってまだ半日しか経過していないというのに彼のSNS用アカウントは既に100万人を達成していた。
「すごい影響力ね。私の登録者数も20万人くらい増えたよ」
携帯を眺めながらシロリンこと白崎はそう呟く。モデル仕事の合間にジョーカーのコラボによって既に300万人を突破した配信チャンネルを見ていたのである。
そしてSNS用アカウントを開くと大量のお祝いメッセージやお祝いDMが届いていた。
それらを微笑ましく眺めていると、一つだけ特に異質なメッセージが届いていることに気が付く。
「探索者協会から……何だろ」
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