第4話 クエスト

「く~、いつも通りしけてんな~ここのダンジョンは」


 俺は今、一回たりとも探索者を見たことが無いような典型的な初級者ダンジョンへと足を運んでいた。

 先程、家でクエストを終了させたら『ダンジョン『挑戦者の洞窟』にて翼の生えた馬の魔物『ペガサス』を5体狩れ』というクエストが出たため、このダンジョンに足を運んだのである。

 どういう訳か俺の異能が指定するダンジョンはいつもここ、『挑戦者の洞窟』なのだ。さらに言うと、ペガサスなんて言う雑魚モンスターは他のダンジョンに潜ったことはないためあまり知らないが、聞いたことない事から考えてここにしか居ないのだろう。


「こっから最深層まで行くのが面倒くさいんだよな」


 ペガサスが生息するのはこのダンジョンの一番下だ。一丁前に百階層以上あるこのダンジョンを下っていくのは少々骨が折れる。

 そこで俺はこんな物を小袋の中から取り出す。


「じゃじゃーん、転移石。さっきのクエストの報酬で貰ったんだよな」


 クエストではこういった道具も報酬としてもらえるのだ。ちなみにさっき転移石を取り出した小袋も『アイテムボックス』というものであの中に倉庫一つ分くらいの道具が入っているのだが、実はあれも報酬で貰ったものだ。

 それも頭の中で取り出したい物を念じたら取り出せるようになるというかなり便利な代物だ。

 この『アイテムボックス』を買おうと思えば、ダンジョンからの出土品でしか手に入らない希少品のため、数百万円はするだろう。

 これに関しては運が良かった。


「早速試してみるか」


 確か説明ではダンジョン内であればどこからでも任意の階層の入り口に自由に転移できるみたいな感じだったな。

 これでいつもは面倒くさがりながら下る道のりもスムーズに進められる。


「転移」


 そう呟いて目を瞑る。その間、身体が何処か浮遊しているような感覚になり、次に目を開いた時には最深層特有の洞窟なのにどんだけ草生えてんねん!? エリアへと降り立っていた。


「いや~便利だな、こりゃ」


 転移石なんて聞いたこともない道具だったから不安ではあったが、こうも実用的となるとより一層俺の『攻略者』ライフが充実したものになる事だろう。

 うんうんと頷きながら歩いているとちょうど俺のクエスト対象となっているペガサスが上空を駆けまわっているのが見える。


「さ~て、早速あいつを試してみるか」


 そう言って俺がアイテムボックスの中から取り出したのは一丁のリボルバーだ。

 これは普通のリボルバーではなく、昨日のクエストの報酬で貰った特別なリボルバーだ。

 弾を消費するわけじゃなく、ステータスの数値に基づいて放つらしい。もちろん、ステータスが高ければ高い程威力も高くなるのだろう。


「とりま、撃ってみますか!」


 リボルバー後方に付いている撃鉄を後ろへくいっと引き、引き金に指をかける。

 次の瞬間、銃口から凄まじい出量のエネルギー弾が飛び出し、上空を飛んでいるペガサスの一体を消滅させる。


「す、すげー……」


 全然油断していた俺はリボルバーの一撃を放った衝撃で後方へと尻餅をついていた。

 まさか魔物を消滅させるくらい強いだなんて思いもしなかった。


 強くてカッコいい。流石に授業では使えないけど、これ良いな。

 飛んでる奴とか水の中で隠れてる奴に対して滅茶苦茶有効かもしれないな。


「よっしゃ、狩ってくぞ」


 それから俺は地面を蹴り上げるとペガサスの群れの中へと突入する。

 そして体をぐるんと回転させながら同時にリボルバーを撃つ。

 見事、全てのエネルギー弾がペガサスを撃ち落としたのを確認すると、俺はふうっと息を吐く。


「最初の方はビクビクしてたここも最早庭に近いな」


『クエスト達成。報酬を送ります』


 無機質な声が聞こえたと同時に俺の手に一つの古びた鍵が現れる。

 なんだこの鍵?


『ダンジョンを開くための鍵』


「いやどこのダンジョンだよ」


 説明文を読んで思わず突っ込みを入れてしまう。

 いやそうなんだよ。何かこの報酬の説明、結構適当なんだよな。俺と一緒で。

 まあでもハズレか?


「一応アイテムボックスの中に入れておくか」


 俺は小袋の中に鍵を仕舞い、次のクエストを確認する。


『ダンジョンの鍵を開く』


「いやだからどこか分かんねえって!?」

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