混線ワンダーランド。
「ぶへっぼほぉびゅびゅかぁーーーーーーっ!!!!
……え? はあ……? どゆこと?」
飲み物を口に含んでいないのに、吹き出すリアクションを取ってしまった。もしも牛乳を口に含んでいたのなら、今頃向かいの席に座っている雪柳の顔を真っ白に染めていたことだろう。おっ……それはそれで興奮──じゃなくて!!
「いやいやいや! お前、急に変なこと言うなよ!? 変なことを言うんだったら『これは私の飼っている新種のサルです。サーカス団を始めます』とか、失敗したGoogle翻訳くらい変なこと言えっての!!」
「ちょっ…………ひ、ひどい……。冗談じゃないのにっ……! 本気なんだから、失敗したGoogle翻訳なんかと一緒にしないでよっ!」
「なんだよ! じゃあ、フェブラリーフールか?
「米吉くんのほうが変なこと言ってるじゃんっ!」
……ああ、テンパって変なことを言っている自覚はある。
だって、あの、雪柳愛に告白されちゃっているんだぞ!?
ずっと思いを馳せてきた幼馴染みのクラスメイトと晴れてカップルになっちゃうんだぞ!?
そんなの、変なテンションになるに決まってる!
「ああ、変なことを言ってるよ! 自覚はあるさ! もっと変なことを言ってやろうか? これはこの前見た夢の話なんだけど──ティッシュ箱の中に小さくなった香取慎吾さんがいてさ。俺に話しかけてくるわけ。『味噌汁って味薄くね?』って。いや、それは家庭によるだろ!」
「もうっ! 私の本気の告白をシュールな夢の話で片付けないでよっ!!」
「だったら、ファミレスで告白するんじゃねえよ!! なんでポテから食ってから告白するんだよ! 普通はポテから食ってから告白なんてしないんだよ!! 二つも食いやがって!!」
「わ、わかんないもんっ……。告白とかしたことなかったし……」
「可愛いなちくしょー!! てか、袖にマスタード付いてんぞ!!」
「あわわ……最悪ぅ……」
言い忘れていたが、雪柳 愛という女の子はすごくドジなのである。
彼女はおっちょこちょいで、好奇心旺盛で、そしてよく失敗する。
そこが可愛かったりもするのだけど。
「そもそもお前はユズル先輩一筋だったんじゃねえのかよ? 確かにライバルが多いから諦めるのは無理もないけどよ、それで俺のほうに告白するなんて都合が良すぎねえか? 一年近く好きだったから、こうやってスマホのホーム画面にも、先輩の写真を──」
「あ、ちょっ……まっ」
「……あれ?」
テーブルに置かれていた雪柳 愛のスマホを裏返すと、そこに設定されていたのは“
中学一年の時の体育祭。
親友である出井宗介と肩を抱き合っている写真。
無駄に足が早かったから、このとき学年対抗リレーで陸上部に勝って、奇跡的に優勝したんだっけ……。
「え、え、え、俺……?」
「か、勝手に見ないでよっ! 乙女のプライバシーの侵害っ!! 今度みたら訴えるからね!」
顔を赤らめてそう言われる。
いつ変更したんだろうか。
「じゃなくて……その、ガチで俺のことが好きだったわけ……?」
「だからそう言ってるじゃん」
「いつから……?」
「初めて会ったときからだけど。悪いか!」
「悪くないというか、むしろ光栄だけど……。てか、お前、ユズル先輩は? あの人のメインヒロインになるって息巻いてなかったか? ほら、約束したじゃねえか! 二人で、ラブコメディをぶっ壊そうって!!」
俺が確信に踏み込むと、彼女は眉をひそめた。
「──え、
まるで、本当に俺が変なことを言ったみたいに。
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