変動エキセントリック。
「ーーへっ?」
朝。目を覚ましたとき、一言目に動揺が出た。
自分が一体なにに驚いているのか、この胸の内に残る『違和感』はなんなのか、原因も答えもまるで掴むことが出来なくて、俺はベッドに起き上がりながら、しばらく「んんっ?」と頭をひねらせていた。
なんて言うんだろう。
変な夢を見てたはずなのに、その夢の内容を全く思い出せず、そもそも夢なんて最初から見ていなかったようなーーそんな摩訶不思議な状態である。
自分でも意味不明だが、
確かにそう感じた。
※ ※ ※
放課後、俺は行きつけのファミリーレストランに向かった。
いつも通り、8番席には彼女が座っていた。
「よっ」
「うい」
赤いリボン柄のヘアグリップをした雪柳愛が、スマホを裏返して、手をあげた。
暖房の効いた部屋。ダウンを脱いで、メニューに手を伸ばそうとしたら、阻止される。
「……なんだよ」
「米吉くんが来るの遅かったらお腹いっぱいになっちゃった。頼むなら自分のぶんだけにしてっ」
確かにテーブルの上には空っぽになったお皿たちが並べられている。
レシートを見ると、既にドリンクバーと「ポテから」を二つ注文してあった。
ソースはマヨネーズタイプの「からしマスタード」。
雪柳はいつもこればかり注文している。
「……別にいいけど。てかお前、ホントこれ好きだよなあ。太ってもしらないぞ」
「余計なお世話っ! 米吉くんには関係ないんだけどっ」
「まあ、俺の身体じゃないから関係はないんだけどさ──」
ん?、と声が出そうになった。
近くにあったレシートに手を伸ばす。
「それでだよ、米吉くん。今日は君に折り入ってお願いがあるのだよ」
「お願い?」
俺はレシートを見つめながら、適当に相槌する。
ファミリーレストラン『ガスト』。
お店の名前が下のほうにしっかりと記載してある。
「あのさ……米吉 徹平くん」
顔を真っ赤にさせ、左手を差し出してくる。
「──私と、お付き合いしてくれませんかっ!」
えっ??
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