第37話 VSグロウィス

ここまでやって気づいたことがある。


「レイドボス戦、動きづらくない?」


そう、僕のもともとの戦い方はソロでやってきたこともあってタイマンの連続みたいな戦い方、ルーゴに教わったやつも周りのものを使いまくって立体的に一対多をこなすスタイルだ。味方がすぐ横にいてはフレンドリーファイア待ったなし。


「ねぇ、どうしたらいいと思う?」

「知らんよ。むずいのは当たり前だろ。しっかしな、デカいドラゴンあたりだったらお前も動けるだろ?どうなるかなんだよな~。」

「くじ引きかなんかなの?」

「そ。いつも通りならね。まあ相手が小さくても魔法隊の方で入ったら?そっちならフレンドリーファイア少ないでしょ。」

「空間魔法で?」

「ああ……なんかもう毒入れて後ろにいれば?」

「マジか……最悪それでいくよ。まあとりあえず模擬戦付き合ってくれる?」

「いいぞ。今は待ち時間だし。」


クランの館から庭に移動、僕らは武器を構える。


「よし、じゃあ行くぞ。」

「ばっちこーい。」


1秒……2秒……3秒……


「いや俺カウンターメインだから。突っ込む技ないって。」

「ええ?だからと言って僕に?まったく。」


「毒染め、衝牙!」


一気に駆け出す。ジーナのようにはいかないが、装備とジョブ補正で100を超えているAGIでそれなりに早く移動する。

対してグロウィスは盾を前に出し低く構える。シールドバッシュかなんかだろう。


「シールドバッシュ!」


当たり。ここまで読めている。

壁蹴りの応用で盾を蹴りつけグロウィスの頭を飛び越し後ろに回る。


「貫通突き。」

「うおっ!」


ゴロゴロと前に転がり躱すグロウィス。

盾は置いてっている。


「これ、あとで返すから。」


盾をインベントリにしまい、向き直る。

向こうは同じような盾をすぐに出していた。


「随分とアクロバティックだな!そんなん出来んなら早く言えよ!」

「いや、詰所でスキルゲットできたんだよね。それ、飛空斬!」

「これぐらいなら行けんだろ。っらぁ!」


斬撃を横から盾で殴りつけられ、飛空斬は消える。


「無茶苦茶だね。」

「だからいいんだろ。さあ来い!」


腕貫尾を腕に通し、衝牙が落ちないようにする。


「回転切り!」

「まだまだ!」

「兜割り!」

「ほらよ!」

「連続切り!」

「それ覚えてないだろ!エフェクト出てねえ、よっ!」

「連続切り!」

「ここで覚えようとしてんな!?」

「連続切り!」

「うざってぇ!」


次々に切りつける中で一つだけ大振りにする。


ガキンッッ


さすがに経験の差、食いついてはくれない。

作戦立てるのめんどくさくなってきた。


「ハードキック。」


ガキィンッッ


「おっも!いきなり来るな!」

「まだだよ!ハードキック!」

「まあ行けるか。フンっ!」


更にどっしりと構えたグロウィス、ハードキックは少し体を揺らすだけで受けられてしまう。

ステータスの差か。


「バインドチェーン!空間接続!」

「なめんな!」

「後ろはどうかな!」

「詠唱してるんだからバレバレだっつーの!」


バインドチェーンも弾かれてしまう。


「衝牙!」


左手には杖。右手には衝牙。ぶっちゃけ杖は持ってさえすればいいので逆手持ちだ。


「決めに行く!」

「待ってたぜ!来い!」


ただまっすぐ走る僕に足払いをしてきた。

ただ大盾は身の丈ほど。

当然隙間ができる。

そこに、


「ハイジャンプ!」


ハイジャンプで高く飛びつつ、盾の下あたりに足を引っかけ持ち上げる。

空中でインベントリから借り物の盾を出し、それを台にして方向転換。


「ぶった切る!」

「くそっ!ビーストスピリット!」


明らかに攻撃スキルだ!


「貰ったぜ!」


☆☆☆


「貰ったぜ!」


俺の使っているスキル、ビーストスピリットは最後に受けたダメージを3倍にして返すスキル。それに騎士のスキルで不屈というものがあり、効果はHPを一度だけ1残すこと。これによりコルクラニアの攻撃を受け切り、3倍返しでお届けって寸法。

多少無理な体勢だったが根性で振る!





ところが、俺の剣はコルクラニアの体をすり抜けた。





小さくぼそぼそとした声が聞こえた。

まずい!


「回転切り!」


☆☆☆


「回転切り!」


幻影でグロウィスの攻撃を避けつつ、空間接続で移動する。

賭けだったがグロウィスは横に攻撃した。

僕は上に移動している!

追加でスキルは使わず、無言で振り下ろす。


「上か!」


盾がギリギリ前に出てくる!

めんどくさいな!


「盾ごと潰す!」


ガコォォォォォォォォォォンッッッッッッッ


ビキビキビキビキビキッッッッ


地面がひび割れる。


「うぉぉぉぉっ!」

「え!?嘘でしょ!?」

「バウンドシールドぉぉぉ!」

「待っ、てえぇぇぇぇ!」


信じられない速さで館の方向にぶっ飛んでいく。


ドゴォォォォォォォンッッッッ


「あっやべっ!」


瓦礫と砂ぼこりしか目の前に入ってこない。


ガラガラガラガラガラ


「今回の新人はド派手だな!」

「ああ、大物だなぁ?え?」


ヤバい。

まだ数日しか経ってないのに。


2人揃って土下座することで難を逃れられた。

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