第36話 実習

早速動きの中心となるスキルを教えてもらった。

といっても回し蹴りなどは覚えていたので、ほぼ組み合わせ方、動き方だったが。


「そうそう!できたじゃん!」

「あ、ありがとうございます!」


今、僕は壁蹴りのスキルを習得したところだ。


壁蹴り

パッシブスキル

一定角度以上の壁を地面と同じように蹴ることができる。


感覚としては壁に足が引っかかる感じだ。現実のものとは違うと思う。


「このスキルの便利なところでね、壁以外にも使えるんだよ!例えばオークの体を壁に見立てて蹴るとか!」

「あとね、こうやって、こうすると真横に飛び出せるんだよ!これが速くて気持ちいいんだよ~?」


壁に手をついてほぼ地面と水平になって足を伸ばすと、確かに真横に行く。


「あれ?ぐへっ。」

「あちゃー。前転とかで着地までしないと。敵がいるならいいけどね?」


前転など受け身的なことを一番多くやった気がする。

勢いがなくなるのはもったいないらしい。すぐ切り返すことが大事なのだそう。


「まだまだ教えるところはあるけど今のところこれでいいかな。じゃ、見せてみて。モンスター出すよ~。」


教官が倒しまくった群れと同じ構成だ。

あくまで取り入れるだけ。

基本は崩さずに。


「懐かしのゴブリンナイフをキィィック!」


インベントリから取り出し、落下させたゴブリンの落としたナイフをボレーシュートの要領で蹴る。投げるよりこっちの方が多分カッコいい。

先頭のオークの眉間に寸分たがわず命中。

その隙に首、一匹目。


「飛空斬!」


首を切り落とす前に発動しておき、本体で斬り、斬撃を飛ばす。

後ろの二、三匹にも当たる。

途中のやつを切りつけつつ、群れの中心に来る。


「回転切り。」


近すぎる奴はこれで全部倒せた。

正面のオークを毒染めで動けなくし、新スキル。


「ハードキック。」


ハードキック

アクティブスキル

キックの威力、反動を上げることができるスキル。


ボウリングのようにオークの後ろの敵をなぎ倒し、オークはもちろんその後ろも倒せた。

ハードキックの反動で跳び、横方向に移動。


「飛び蹴り。」


薙ぎ払うようにして蹴り二、三体を一気に倒す。

着地と同時にバク宙、さらに後ろに回って切り捨てる。

群れで押しかけようとしているので、先頭に、


「スタンキック。」


スタンキック

アクティブスキル

キックの際、相手のスタン時間を上昇させるスキル。


スタン状態の時、実は外部からも動かしづらくなる。

それを利用して後ろの団体をひと固まりにし、全員切り捨てる。

後ろに倒れるように方向転換、そのまま走り抜けつつ切りつけていく。


「これで最後かな……?」

「うん!すごいねこんな短時間で動けるなんて。元々の戦い方もあるだろうから、これと併せてみたり使い分けたりしてみるといいよ、って、言うまでもないか。」


終わったみたいだ。

教えてもらったこと全部はさすがに無理だったか……


「じゃあ、今日はこれで終わりにしよう。僕でよかったら模擬戦の相手にもなるし、いつでも来てね。まだ教えてないこともあるし。」

「わかりました、ありがとうございました!」

「はーい。じゃあね。」


☆☆☆


「ルーゴさん、あの方はどんな感じですか?」

「僕と似たことはできるけどまるっきり僕と同じじゃない。見たところ魔法も使えるっぽいし、全部教えて僕の魔法戦士版といったところかな。剣に余裕があるんだよね。魔法があるから大丈夫!みたいな。」

「なるほど。”あれ”には誘わないんですか?」

「何のことやら。それに僕はもう部外者だ。」


プレイヤーではない者たちの会話は続く。


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