第35話 アクロバティック教官

場所は変わって王都。

スキルを買うために、まずはどのスキルを覚えるか考えなくちゃいけない。

魔法系、これは空間魔法一個で手いっぱいだ。

あくまでメインが剣、その補助に空間魔法という今のプレイスタイルじゃ他の魔法なんてこんがらがる気しかしない。

次に今持っている剣・格闘系、普通に行くならこれだろう。剣だけで事足りることが多いので、まずは剣から取ろう。

最後に剣以外の武器スキル。これはなしだ。スキル代以外にもお金かかるし。

僕は剣を伸ばすためグロウィスに教えてもらった兵士の詰め所に向かった。


☆☆☆


「こんにちは。本日はどういったご用件でしょうか。」

「スキルを教えていただけると聞いたんですが……」

「はい。どのスキルにいたしましょう。」

「剣スキルでお願いします。」

「その他使える武器スキルはありますでしょうか。」

「格闘スキルを持ってます。」

「承知いたしました。教官を連れてまいりますので少々お待ちください。」


受付らしき人に話しかけた。

どうやら当たりだったみたいだ。

ほどなくして、モブ中のモブみたいな兵士の格好をした男がやってきた。


「今回教官を務めるルーゴです!よろしく!」

「コルクラニアです。よろしくお願いします。」


中身は好青年っぽい。さわやかボイスだ。


「じゃあさっそく訓練場に行こう。」


連れられて来たのは400メートルトラックサイズの訓練場。

他のプレイヤーもそれなりにいる。


「じゃあさっそくやろうか。シュミレーションモンスター、起動。」


懐から出した円盤状の光るものにルーゴは話しかける。

すると、青白く光るモンスターたちが出てきた。

ゴブリン、コボルト?オーク?人型のモンスターだ。


「僕の戦い方は初めて見る人に驚かれるからね。普通の格闘剣複合の方がいい?」

「見るだけ見せてください。」

「わかった。それじゃいくよ?」


ショートソードを抜き放ち、独特な構えを取るルーゴ。

右肩を前に出し、剣を持っている左側をだらりとさげて、足を開きひざを曲げて低い姿勢になっている。

次の瞬間、視界から掻き消えたと思うほどの速度で群れに向かって飛び出した。

低い姿勢から一気に飛び上がり、脳天に突き刺し一体目。

突き刺さった状態のまま腕で前へ移動し、空中で蹴りつけ二体目。

蹴りの回転エネルギーで立ち位置を調整し、背中越しに刺して三体目。

近づいていたやつをケンカキックから逆手に持った剣で切り裂いて五体目。

切り裂いた腕のままエルボー、そしてボディで六体目。

バク宙で後ろからの敵に上空から突き刺し七体目。

そんな風にアクロバティックに動き続けるルーゴ。

いつの間にか敵は全部消えていた。


「普通のやり方でも同じだけど、基本的に格闘で動きを止めて剣をお見舞いするのがセオリーだよ。僕は育ちが育ちだからあれができるようになったけど君もどっちでもできると思うよ。僕が教官に選ばれたんだし。」

「本当ですか!じゃああの中使われていたスキルを教えてもらってもいいですか?」

「やだなぁ、疲れるしひとっつも使ってないよ。君には教えるから心配しないでいいよ。スキルあった方が強いしね。」


結構とんでもない人みたいだ。

他の教官を見れば地に足つけた戦い方をしている人のみだったので、おそらくルーゴだけだ。

アクロバットなんてやったことないから興味がわく。

出来たらカッコいいし、覚えたらグロウィスに試そう。

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