第32話 ロマン

「あ、いきなりなんですっ、ねぇ!」


本当にいきなり攻撃する人がいるかよ。

ここの人らはみんな血の気が多いな。


「言ってるそばから!」

「どうした、攻撃できないのか?」

「狭い!空間接続!」


僕の真後ろのわずかな空間を建物の外の空間と接続する。

チラ見程度で狙いをつけたので少し空中にいる時間が長い。

トリコロールさんは……壁をぶち破ってくる。


「空間圧縮。」


僕の足元の空間を縮めることによって急降下、突撃を躱す。

ちょうど僕の真上にトリコロールさんが来たあたりで、


「バインドチェーン!」


鎖は狙い通りに向かったが、ランスではじかれてしまう。

相手のジョブが何かわかっていないので執行場を使うのは危ない。聖騎士っぽいし。

インベントリから杖を取り出し、左手に持っておく。


「毒染め。衝牙。」


いつものように武器に毒と衝撃波を準備する。

鎧の下にも衝撃なら届く。

攻撃なら格闘スキルを多めにした方がいいな。

空中からも突撃してくるのに合わせてスウェイ。


「回し蹴り!」


ランスを足場にして軽やかに飛んだトリコロールさん。

バインドチェーンじゃだめだ。だけどソウルバインドじゃ飛ばすのには少し遅い。

目の前に突き出されたランスに衝撃波を利用して大きくパリィする。

体勢は大きく崩れる。


「飛び蹴り!」


さっき買ったネックレスの効果か前に跳ぶ動きが普通よりも速かった。

かなりの勢いで蹴ったので、当然トリコロールさんは後ろに仰け反る。

毒染めはまだ残ってる。


「衝牙!貫通突き!」


首に向け威力を上げた突きを行う。


ガキィィィン


「え!?」


鎧は凹みはしたが本体はほぼノーダメだ。

視界いっぱいに広がる白銀。

ここだ。


幻影。

「ソウルバインド!」


無詠唱で幻影を使い攻撃を躱したその瞬間にソウルバインドを当てることができた。


「兜に向けてアッパー!からの、斬首!」


ごくわずかな隙間に剣をねじ込み、僕が持っている中で最強のスキルを使う。

斬った!

いや、腕が動いている!


「空間圧縮!」


すぐさま後ろに下がる。


「投擲だよ、新人。」


右手に持った剣で無理やり弾き飛ばす。


カァァン


「杖が!やられた!」


トリコロールさんが石を投げてきて、それが杖に当たって弾かれてしまった。

もう構えを取っているトリコロールさん。

ランスが来る!

ギリギリで横にステップをするが、ランスが僕の前の地面に突き刺さったかと思えば、それを軸に僕はトリコロールさんに蹴られた。

20mぐらいは吹き飛び、尻もちをついてしまう。

まずい、スタンだ。

腰だめに置いたランス、何かを唱えている様子のトリコロールさん。

治れ治れ治れ治れ!

あれに真正面からぶつかってみたい!


「……光の楔。」


詠唱が終わり、ランスが七色の光を纏う。

僕は前に向かって走り出す。


「飛び蹴り!」


さっきよりも高く、速く、強く!


ちょうど僕らがぶつかり合うとき、見えたのは眩い光だけだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る